『樹の上の忠臣蔵』 石黒耀
『死都日本』『震災列島』『昼は雲の柱』と地震、火山を題材にした作品を手がけてきた石黒耀の新機軸『樹の上の忠臣蔵』
一言で言うと、悪くはないんだけど、別に石黒耀でなくってもいいんじゃないかな、という作品でした。なんとなく、題材は鯨統一郎の得意分野という感じでしょうか。
ストーリーは、相続した高槻市内の山林にツリーハウスを造ったところから始まる。二人の子供が始めたコックリさんは、一人の幽霊(幽体)を呼び出してしまいます。
幽体は荘右衛門と名乗り、主人大野九郎兵衛(忠臣蔵の悪役の一人)の倒幕計画を語る。
前半は、忠臣蔵の実相を新解釈するという話、後半は荘右衛門死後、子孫の白石正一郎が携わった明治維新の実相を語るという展開で、主人公はあくまで聞き役にすぎない。
確かに、歴史の新解釈として、傍証もついており、知的好奇心を満足させるのは間違いないのだけれど、他の作品のように引き込まれ、感情移入できるような感じはなく、人によって好き好きが分かれるんだろうと思う。
忠臣蔵は、三国志演義と同様に、一つの価値観を通して、物語として作られているので、背景の歴史的事実を検証するための、トリビアとして憶えておくには、いい情報が詰まった作品とは言えるかもしれない。
ただし、そういった目的をもつものとして、小説である必要があるのかといえばどうか。強いていえば、主人公たちと荘右衛門が掛け合いをすることで、世間で認識されている情報とのギャップを明快にするという効果はあるのかもしれない。
また、主人公の怪しげな言葉も、ちょっと引っかかった。
関西弁なのだろうか、「・・・でっか。」「・・・でんな。」というような言葉を連発しているが、小学5年生、小学2年生の子供がいるような世代で、まだそんな言葉を使っている世帯があるのだろうか。丁稚や幇間の言葉のようだ。少し興ざめとなった一因。
次作(?)『夜は火の柱』に期待しましょう。
お奨め度:★★☆☆☆
再読推奨:★★★☆☆
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