『クロスカウンター』 井上尚登
何だか、どこかで読んだような話。
どうも主人公の職業自体が嘘くさいし、敵役も安っぽい。
ちょっと入り込みにくい作品かもしれません。
第1章 砂の上のダンス
元アナリストの金融探偵、七森恵子は上得意の真壁杏子の求めに応じ、ナノテクノロジーの会社SEIUN社の調査を進めていた。
しかし、会社の沿革の怪しさのほか、奇妙な中国人からの電話があったり、開発担当の副社長北村健一と社長河野隆三との懸隔など・・・。
同じくフリーの金融調査を行う如月浩二郎とともに調べを進めると、丹波圭三という怪しい男が会社に出入りし、会社は経済産業相鹿沼武雄とも関係があることがわかってくる。
そんななか、突然北村が研究所所長という名ばかりのポストに更迭される。
第2章 偽りの扉
真壁杏子から中国の出版ビジネスの調査を依頼された七森恵子は北京でキーマンと言われる華想集団総経理劉文にビデオジャーナリスト李小佳を介してインタビューする。
劉は亡くなった党の実力者馬永春の隠し子と噂され、その噂が彼の信用の裏づけとなっていた。
小佳が恵子に見せたビデオには、華想集団のパーティが映っていたが、そこには恵子がアナリストを辞めるきっかけをつくった、忘れることのできない男平川慶史郎が映っていた。
怪しさが増すなかで劉文の生まれ故郷を訪ねた恵子は劉の生家で劉の母栄美が馬永春と写った写真を発見する。
しかし、劉文が生家を出て行く結果となった一冊の雑誌を読んだ恵子は一つの事実に気付いた。
第3章 危険な水
真壁杏子の目的がよくわからなくなっていた恵子は杏子の依頼は断る決心をしていたものの、平川慶史郎絡みともなれば手がけるしかなかった。
アルカリプラズマ活性水”奇跡の水”を作る浄水器の会社、バイオライフ社が行う代理店説明会の会場に赴いた恵子は「東京での代理店を一手に引き受けたい」と申し出、会長っである平川への面談を求めた。
平川との面談のためにバイオライフ社へ向かった恵子だったが、そこで待っていたのは丹波圭三だった。
丹波に監禁された恵子は、バイオライフ社へ潜入取材していたというフリージャーナリスト坂巻良の助けを借り、逃げ出した。
真壁杏子にバイオライフ社の一件を報告したあと、恵子は如月浩二郎に杏子について調べさせる。果たして、真壁の邸宅は貸しスタジオだった。
第4章 懐かしい顔
坂巻からの情報で丹波圭三が三池商事にいることを知った恵子は清掃業者として三池商事に潜入する。
一方、如月浩二郎は平川慶史郎について調べていた。調べてみると、インターネットの掲示板には平川が手がけてきた数々の詐欺事件が列挙されている。
そんなとき、恵子を真壁杏子に紹介した元同僚木村敏夫が交通事故で死んだ。その捜査にあたったのは警視庁捜査二課の三田村。背後に平川の影を見た三田村は、木村の死の捜査の過程で恵子にも事情聴取を行う。
恵子は三池商事での丹波らの手口がSEIUNらで行われたものとは異なり、かなり荒っぽいものであることに気づき、違和感を感じていた。
「よお、久しぶりだな、姉さん」
清掃の求めに応じて赴いた部屋には丹波圭三が待っていた。
閉じ込められた恵子は杏子の協力者神林の手引きにより辛くも逃げ出すことに成功した。
再び恵子の前に姿を現わした真壁杏子は本名を名乗った。かつて平川に会社を食い物にされ人間不信のすえ自殺したベンチャー企業社長松岡靖之の母松岡千賀子が真壁杏子だった。
恵子を迎えたのは千賀子だけではなかった。迎えた面々は亡くなった木村の妻和江をはじめ、全て平川の詐欺の犠牲者たちだった。
第5章 女神の声が聞こえる
男が目を覚ますと病院のベッドの上。
医師は男を有川哲生と呼ぶが、自分の名前ではない。医師は、男が記憶するときから、時間も1年が経過しているのだという。
男は病室から出て行こうとするが、医師は許可しない。ドアにも鍵がかかっていた。
夢うつつの病室での生活では、「終わりにしましょう」と誰かの声が囁き、男を死へ誘う。男が目を覚ますと、壁一面に黒く、「終わりにしたい」「終わりにしよう」「死ねば悪夢から逃れられる」「死、死、死」「Death,Death,Death」とびっしりと文字が・・・。
男が絶叫すると、かけつけた医師が注射し、男の意識は途切れた。
夢と現実が渾沌とするなかで、男は少しずつ追い詰めらていく。
ベッドから飛び起きて病室を出た男は勢いよく非常口から飛び出す。バランスを崩し、非常口から落下しようとしていたのを止めたのは磯田看護師だった。
「ここであんたが落ちて死んでしまえば、もう終わりなんだけど、ひとが死ぬのは嫌なんだ」
磯田はポケットから注射器を出して、男の腕に刺した。
男には、非常口から落ちようとする際に、下から見上げていた女に見覚えがあった。
七森恵子、金融調査員だ。男が関った事件に何度も首をつっこんできた女だ。
疑惑を感じた男は食後の薬を飲んだふりに留めて様子をうかがうと、夜中の12時過ぎに異変が起こった。環境音楽のような物憂い音楽とともに、死を誘う言葉が繰り返されたのだ。
七森恵子による芝居であることを確信した男は磯田に真相を求める。
磯田が示したのは2007年1月16日の新聞だった。
『連続詐欺事件の容疑者が逮捕される』とその新聞記事にはあった。
主犯は平川慶史郎と丹波圭三という男だったが、平川は主犯は他にいると嘯いており、警視庁は坂巻良という20代の男を指名手配していた。
磯田は男、坂巻を自殺に追い込もうとした筋書きを語った。
どうも各話とも薄っぺらい。
登場人物も表面的で、主人公である七森恵子ですら、正体不明に近い。
平川に騙された元アナリストという、それだけのキャラクターでしかなく、主観面は非常に乏しい。だからこそ、思いいれを持ちにくいのでしょう。
あまり目新しい話もないため、知的好奇心がくすぐられることもなく、どうも退屈。
まぁ、軽く読み飛ばす程度の作品と言えるでしょうか。
そのわりには、最後の坂巻良をはめる話は勧善懲悪の痛快な話というよりも、陰湿で非常に暗い雰囲気で、ラストを締めるにはあんまり、といった印象を受けます。
何だか後味が悪いです。
お奨め度:★★☆☆☆
再読推奨:★☆☆☆☆
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