著者別(か)片川優子

『動物学科空手道部1年 高田トモ!』 片川優子

Doubutsugakka 2008年、190冊目。片川優子『動物学科空手道部1年 高田トモ!』

タイトルからして男子大学生の苦闘の話かと思えば、主人公は女性。ちょっと面食らいました。女性と空手って、なかなか結びつかないですからね。

さて、全体の印象を一言でいえば、(作中の台詞ではありませんが)”惜しい”ということかもしれません。タイトルからして、いろいろ盛りだくさんの内容を期待させますし、女性ということもあって恋愛話もあるんですが、どうも、それぞれの題材が曖昧になってしまっています。

 

小さい頃から女の子らしい姉に憧れ、その背中を追いかけた高田友恵トモ)だったが、高校3年に上がる春休みに転機を迎えた。

交際を申し込んできた同級生テラダコウジと何となく付き合い始めたトモだったが、実はテラダコウジには思惑があった。トモの姉と付き合うための繋ぎとしてトモを利用したのだ。テラダコウジと平然と付き合う姉にも我慢ならず、トモは姉のなすことが何もかも嫌になってしまう。

反発するトモだったが、小さい頃から姉を目標にしてきたトモには自分だけの基準は何もなかった。唯一、姉と違うのは動物が好きなこと。

姉への意地、そして姉から独立した自我を形成するために、トモは進学先に神奈川県にある大学の動物学科を選び、一人暮らしを始めた。(実家は千葉県)

大学では、姉への反発から「女らしさを排除する」ことを目的に、迷わずトモは空手道部に入部した。

入学して、トモには部内にも部外にも友だちができた。

部外の友人たち

ミヤビ:埼玉生まれ、埼玉育ちの実家通い。馬好き。人の言うことを聞かない。バレーボールサークルに所属。年下の彼がいる。

愛ちゃん:かわいい系。恋愛話に目がない恋多き女。酔うと絡む。(酔い方はかわいくない。)バトミントンサークルに所属。

マル:普段はぼんやりとした遅刻魔。でも、”やるときはやる女”らしい。呑んでも酔わない(ザル)。バトミントンサークルに所属。

部内の同級生

麻地真知子(♀):親の離婚、再婚のせいで不幸にも名前が「マチマチ子」に。

岡本(♀):岐阜県出身。動物学科。晴れるとテンションが上がる。

増野(♀):体調を崩すことが多く、練習も休みがち。実家通い。

小出浩介(♂):ノリが軽く、責任感のないへらへらした男。一言で表すなら”惜しい”。

(♂):静岡出身。色黒で背が高い。嫌味っぽい。獣医学科。

柏木(♂):色白。金持ちでプライドが高い。空気が読めない。獣医学科。

 

テラダコウジの一件以来、恋はめんどうくさいと思ってしまうトモ愛ちゃんミヤビの話にものっていけなかった。

そして、学科の親睦を深めるために催された”学科呑み”。

隣の席に座ったのは背の高い築山楓。穏やかな笑顔が心地良い。

次の週から始まった「牛の当番」でも築山楓と同じ班になったトモは少しずつを意識するようになっていった。しかし、同級生の滝川カナが釘を刺す。

私、築山くん狙っちゃおうかなー。トモちゃん、協力してくれるよね

”牛の当番”の打ち上げを企画したカナは飲み会でも媚をうるような話し方。これに疲れて席を外したトモが追いかけ、公園へ誘う。

もっと知りたい。高田さんのこと。俺と付き合ってみない

しかし、カナの宣言もあって、何も言えないトモは、その場はお茶を濁して立ち上がる。

翌日、に告白して玉砕したカナトモを呼び出して詫びる。

こうして再度アプローチしてきたトモは付き合うようになった。

 

だからといってトモの生活が激変するわけではない。相変わらず、トモの生活は部活が中心だった。

6月末、横浜で行われた県大会。そんなトモもデビュー戦を迎えた。形も組み手も必死だったが、何が何だかわからないうちに終わってしまった試合だった。

7月、定期試験を終えると3泊4日の合宿。蒸し風呂のような体育館の中、トモは頭を真っ白にしてひたすら練習を繰り返す。合宿の最終日に実施された昇級審査ではが5級、トモ柏木真知子が6級、浩介岡本増野が7級となった。

しかし、この昇級試験でアクシデントがあった。最後の自由組手で増野の拳がトモの右目にあたったのだ。右目は大きく腫れ、全治2週間。

後期に入って、増野が退部すると宣言する。トモは引きとめようとするが、他のメンバーは必ずしもそうではない。増野を一人呼び出したトモは理由を尋ねるが、部以外の活動にも重点を置く増野を翻意させることはできなかった。

11月の学園祭で空手道部は例年のとおりお好み焼き屋を出店する。学園祭の最終日、11月4日はの誕生日だったが、トモは(強制参加ではあったが)打ち上げの飲み会を優先してしまう。

何事にも部活を優先し、身体に傷をつけることも厭わない、そんなトモの我がままを笑って許す。優しさが嬉しい反面、何をやっても許容する、そんなの本当の心がトモにはわからなかった。不安に苛まれるトモは心穏やかではなくなっていく。

そして、トモに別れを切り出した。は最後まで優しかった。

 

評価すべきは、競技としての空手を紹介しているところでしょうか。

空手というと、K1ではないですが、フルコンタクト系の格闘技としてのイメージがつきまといますが、競技としての空手の在り様が紹介され、非常に勉強になりました。しかし、描写がちょっと不鮮明なのが残念。知っている人からすれば想像がつく内容なのかもしれませんが、読者が私のように無知だと、描写される内容も、くもりガラスの向こうのように、薄ぼんやりしたイメージになってしまいます。

やはりスポーツの描写はその臨場感に醍醐味があるので、そこが物足りないところが残念です。

デビュー戦が主人公の主観で「何が何だかわけがわからない」のは当然として、空手に馴染みのない読者の視点で考えれば、客観の視点もあってよかったんじゃないかと思います。なんだか、この作品、全般に描写で損している気がしてなりません。

主人公の生活の中心が部活動で、練習、試合、昇級審査、合宿と空手を描写するシーンが多いので、ぼんやりとしたイメージに終始する気持ち悪さが、どうしても作品全体について回ります。

また、キャラクター面では、主人公トモの男っぽい、気風のよさは気持ちが良いのですが、その一方でとのことがちょっと女々しくもあります。未だ、うまく人格が統合していないような、危うくアンバランスな感じを受けないではありません。

脇役として登場する友人たち。を別にすると、まだ重要度が分岐していないのか、表面的な描写が多く、トモへの係わり方の強弱がついていません。その意味では同質のキャラクターの人数が多く、鬱陶しい部分が見られます。岡本は途中まで男か女か分かりませんでした。

続編もあるようですので、今後は空手描写の精緻化(臨場感)と、キャラクターの書き分けによる物語の深化を期待したいと思います。

お奨め度:★★☆☆☆

再読推奨:★★☆☆☆

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