『スノーフレーク』 大崎梢
2009年、49冊目。大崎梢『スノーフレーク』
行方不明の幼なじみを探すという軽いミステリ仕立ての話ですね。
悪くはないんですが、でも・・・今ひとつという感じでしょうか。
どうも共感がわきにくいというか、一人称である真乃が抱えている重要な情報が最後まで開示されないので、どうもミスリードされていたような、不快感がラストに残ってしまいます。
最後はきれいに終わっているように見えますが、ミステリの部分でそういった気持ち悪さが残るために、どうも純粋に楽しむことは出来なかったといえるでしょうか。
函館の高校を卒業し、間もなく東京の大学へ進学する桜井真乃は掲示板に「昔のことは忘れる」と書き記す。
真乃は小学6年のときに死んだ幼なじみの遠藤速人が忘れられずに、これまで引きずってきたのだ。
小学校6年のとき一家心中で家族とともに車で函館湾の岸壁から海に沈んだ速人だったが、遺体は上がっていなかった。真乃の友人シーコ(清水優子)が中3のときに速人を目撃したとの話もあり、真乃はずっと速人が死んだことを受け入れられず、速人を忘れられずにいた。
忘れると決心した真乃を友人の山本琴美は祝福し、もう一人の幼なじみ田村亨は真乃をデートに誘った。
しかし、そのデートの途中、真乃は速人らしき人物を目撃する。
「しっかりしろ、あいつは死んだんだ」
立ち尽くし、嗚咽をもらす真乃を支える亨だったが、真乃にはやはり忘れることができないようだった。
翌日、函館山の中腹にある墓地を訪ねた真乃はそこで速人にそっくりの男に出会う。
男は速人の従兄遠藤勇麻と名乗った。
勇麻は、身の回りで速人の存在を匂わせる事件が連続することから、かつての速人の知人たちに話を聞くために函館へやってきたのだという。
勇麻を見たシーコは勇麻こそ(事件で死ななかった)速人ではないかと疑う。
真乃はその言葉を信じるわけではなかったが、勇麻に出会い、函館を巣立つのを機に、あらためて6年前の事故を調べてみることを決意した。
勇麻、そして遠藤家の近所に住む及川夫人や、その知人である曾根崎俊彦らから話を聞くうちに、あらたに色々なことが判明する。
車に同乗していた速人の祖母の死亡推定時刻は前日の昼間だったこと。
遠藤家の供養がなされていないこと。
遠藤家の保険金を受け取った兄(勇麻の父)は仕事の負債を保険金で返し、その金を元に今は成功していること。
事件からしばらくたってから、中野町の奥にある古いガラス工場跡で速人を見つけたという少年がいたこと。
速人の妹苑子の友人香月すみれが3年前に速人と出会い、会話(「初恋の女の子に会いに来たんだ」)をしていたこと。
そんなとき、学校の温室の前に、かつて真乃と速人が行っていた交換日記と同じノートが置かれているのが見つかる。ノートにはスノードロップの鉛筆画だけが書かれていた。
交換ノートを見た真乃はかつて速人と日記を隠していた場所である、中野町のガラス工場跡へ向かった。
廃工場を調べるうち、3階床に開いた穴から落ちそうになった真乃を間一髪助けたのは勇麻だった。
「ずっと昔から好きだった。ぼくは君に嘘をついている。ほんとうのことを言ってない。でも信じてほしい。心から大事に思っていると。真乃ちゃん、ぼくは・・・・・・そうだよ、君の小さい頃のことをよく知っている」
当時、事件の現場にいたという琴美の叔父関根恭平は事件の直後、石ちゃんと呼ばれるホームレスが「弟を助けた」と話すのを聞いていた。
事故で弟を失くしていた石ちゃんは「やっと弟を助けたと。ずぶ濡れの弟を引きあげ、お医者さんにみせ、今度は助けたと」話していたのだ。
しかし、事件から2週間後、石ちゃんは肺炎をこじらせてなくなっていた。
石ちゃんが通っていたと思われるコミュニティはガラス工場跡の地下にあった。
琴美やシーコとともに地下に降り立った真乃を迎えたのは大鳥というコミュニティの責任者。大鳥は真乃に事件当時のことを語った。
しかし、大鳥もすべてを知っているわけではなかった。
”弟”の件は石ちゃんと医師”イシャメン”が二人で秘かに行っていたことだったのだ。
石ちゃんが死んだ後、亨がガラス工場跡を訪ねてきた。
「速人がいる」「みつけた」「海の中じゃない。あいつはここにいる」と泣き喚く亨を前に、困惑するコミュニティの面々だったが、そんな中イシャメンは書き置きを残して去っていった。
そんなイシャメンから3年前に大鳥のもとへ届いた手紙には真乃へ宛てた小箱が同封されていた。
大鳥から渡された小箱から出てきたのは、速人のミサンガと、速人と真乃の愛した花スノーフレークの球根だった。
更に、曾根崎から手渡された速人との交換日記(事件の前日に速人が落としたのを曾根崎が偶々拾っていたのだ。)には、次のように綴られていた。
「交換ノートをやめようかと思う。真乃ちゃんにないしょにしていたことがあるんだ。ごめんね。今度会ったときに話す。ほんとうにごめん。あのひみつのかくし場所もやめなきゃならない。でも、真乃ちゃんがゆるしてくれるなら、ノートはまだつづけたいな。それが本心。
もうひとつ、話したいことがある。でもむりかも。むりだったら、ごめん。ああ、ごめんばかりだね。ぼくの好きな人は、真乃ちゃんが好きなんだ。」
全てを悟った真乃は、ガラス工場跡に勇麻を呼び出した。
どうも登場人物がそれぞれ嘘くさいというか、実体を伴わない印象しか与えません。
主人公の真乃にしてから、速人の事件をあらためて調べるまで、殆ど事件の実像をつかんでおらず、それでいて速人を6年間ずっと(それも多感な中学、高校時代)引きずっているというのは、どうも納得感に乏しい。
勿論、心情面の部分なんで、人それぞれなんでしょうが、勇麻と出会って、漸く事件を調べようと動き出す真乃の心情は奈辺にあるのでしょうか。最終的に明かされる真乃と速人の関係性から見ても、特に勇麻を男性として意識しているようには思えませんし・・・。廃工場での一件(勇麻の告白)にしても、読者に速人と真乃の関係を誤解させるような効果はありますが、一方で真乃に何か思うところがあったともあまり思えません。
勇麻も勇麻で、妙に一途ですよね。でも、ちょっとストーカーじみて怖いかもしれません。
犯罪者のようって、まぁ爆発物送ったりしてるんで、犯罪者には違いないんですが。
田村亨が一番まともそうで、青春小説の登場人物としては適役のようなんですが、殆ど登場しませんでしたね。話自体が妙なミステリ仕立てに傾斜している分、青春小説の色を示すようになる真乃と亨の部分は減らされてしまっているのかもしれません。
全般を通してみると、登場人物に魅力が乏しいことに加え、ストーリーがどうも中途半端で、あまり後味のよい作品ではなかったかもしれません。
大崎梢の作品としてはちょっと残念な作品です。
お奨め度:★★☆☆☆
再読推奨:★☆☆☆☆
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