『「神田川」見立て殺人 間暮警部の事件簿』 鯨統一郎
2008年、89冊目。鯨統一郎の『「神田川」見立て殺人 間暮警部の事件簿』
これはミステリではありません。何と言ったらいいのでしょう。まず、歌ありきで、歌にあわせて殺人事件をこじつけているというのが実体です。
桜川東子のシリーズで厄年トリオが管を巻いて話している70年代のネタから歌のジャンルだけを抽出したような話です。
間暮警部も谷田貝美琴刑事も性格設定等、結局何も全くわからないままに「こじつけ」が行われ、人でなく単なる舞台装置の一部といっても過言ではないかもしれません。「見立て殺人」って、こんなものじゃないと思うんですが・・・。
9つの短編から構成されていますが、殺人事件の背景がちょっと変わるだけで、基本となる構成は変わりません。
元神奈川県警の警視正大川圭吾(60歳)が設立した探偵事務所に勤務する助手中瀬ひかる(24歳)と主人公小林次晴(24歳)。この探偵事務所に持ち込まれた依頼に基づき、関係者に事情聴取をすると、なぜか警視庁の間暮警部と谷田貝美琴刑事が現れる。現れるや否や、その美声で一曲歌い上げ、「この殺人は、見立て殺人です。犯人はこの部屋の中にいます。」と告げ、大川探偵事務所の調査の方向性を指し示す。
常軌を逸したマグレの行動についていけない小林だが、マグレに心酔するひかるの言葉に従い、調査を進めるうちに隠された事実が判明し、事件は解決する。
この骨格で9つの歌が取り上げられるという寸法です。
第一話 「神田川」見立て殺人
依頼者:被害者の両親
被害者:永里杏奈(24歳)、レストラン「ブルーリップ」のウェイトレス
現場・状況:自宅で全裸で刺殺。畳の上に大量の竹が敷き詰められており、刃物で腹をめった刺しにされた杏奈の血だらけの内臓の上には数匹の蛾が蠢いていた。
第二話 「手紙」見立て殺人
依頼者:川口理留(被害者の愛人)
被害者:坂上隆一、画家
現場・状況:自宅でロープによる絞殺。
第三話 「別れても好きな人」見立て殺人
依頼者:奈良本夕美子(被害者の義母、㈱ナラモト社長)
被害者:奈良本好夫(26歳、㈱ナラモト部長、「ビューティ・ユウ」副店長)
現場・状況:自宅玄関で絞殺。室内に物色の跡があり、現金300万円が盗まれる。
第四話 「四つのお願い」見立て殺人
依頼者:堤則一(38歳、被害者の長男)
被害者:堤正隆(資産家)
現場・状況:盗難にあった正隆の車に轢き逃げされ死亡。
第五話 「空に太陽があるかぎり」見立て殺人
依頼者:一木野顕(被害者の父)
被害者:一木野愛(28歳)
現場・状況:荒川で絞殺死体として発見。
第六話 「勝手にしやがれ」見立て殺人
依頼者:浜田由美(被害者の恋人)
被害者:沢野井研(25歳、フリーター)
現場・状況:自宅マンションでレコードをかけっぱなしにして、喉をかき切って自殺した模様。
第七話 「ざんげの値打ちもない」見立て殺人
依頼者:原田一生(23歳、ボランティア組織「スプリング・ウィンド」幹部)
被害者:トーマス加賀美(51歳、神父)
現場・状況:事務所でナイフによる刺殺。発見時ナイフを手にして座り込んだ北いつきを発見。
第八話 「UFO」見立て殺人
依頼者:増山恵子(29歳、被害者?の妻)
被害者?:増山太(26歳、サラリーマン)
現場・状況:飛行機内で失踪。
第九話 「さよならをするために」見立て殺人
依頼者:杉田守(37歳、俳優、被害者の夫)
被害者:日野香奈子(36歳)
現場・状況:失踪。
とにかくあきれるだけ。疲れはしませんが、印象にも残らない作品です。
間暮警部に個性・魅力がないため、なんだかよくわからない作品になってしまっています。「面白ければいいんだろう」というコンセプトなのか、作者の好きな60年代~70年代の歌謡曲を懐かしむというコンセプトなのかよくわかりませんが、歌は知っていますが、決して懐かしい思いになることも、面白くもありませんでした。
この手の話はもっと大きな話のアクセントとして使うべきであって、これをメインに据えると飽きてしまうんじゃないでしょうか。
お奨め度:★★☆☆☆
再読推奨:★☆☆☆☆
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