『The MANZAI 5』 あさのあつこ
2009年、52冊目。あさのあつこ『The MANZAI ⑤』
今回は特に盛り上がりもなく、なんとなく中休み的なお話。
受験を控えるなかではあるものの、(蓮田の受験問題はあったものの)あんまり受験話が盛り上がるわけでもなく、もう高校に入学してからの話の序章という感じになっています。
すなわち、今回は高校へ入学してからの歩と貴史の目標が提示されます。
『漫才甲子園』の第一回優勝がそれです。いつものように渋る歩ですが、やはり流れのままに流されていきます。
除夜の鐘の聞こえる新年の夜。瀬田歩のもとを訪ねてきたのは、いつものように秋本貴史。
●●(伏字)で邪険に迎える歩だったが、貴史は約束を失念している歩を初詣に迎えに来たのだった。
マンション前の広場で待っていたのは元文芸部部長森口京美、森口の親友篠原友美、学年トップの秀才高原有一。
「チーム・ロミジュリ」は二人が不参加だ。
萩本恵菜は栗きんとん製作に悪戦苦闘のため不参加。
蓮田伸彦も不参加だった。蓮田の実家の「蓮田運送」が経営不振のため、高校への進学が危ぶまれるなか、ふさぎ込んでいたのだ。高校サッカーでの活躍を夢見てきた蓮田にとってショックは大きかったのかもしれない。
神社では樽酒が振舞われていた。
樽酒を振舞うおばちゃんに絡む若者、という構図に、貴史は腕力に訴えることなく歩とともに漫才でその場を収めてしまう。しかし、その後もなつく貴史を避けた拍子に躓いた歩は樽酒を全身に浴びてしまう。
酔っ払ってしまった歩は突如駆け出し、石段から転げ落ちてしまう。(ついでに、歩を追いかけた貴史も足を滑らせて、歩の上に落っこちた。)
救急車で市民病院に運ばれた歩のもとへ、初詣には不参加だった萩本恵菜(メグ)も蓮田もかけつける。歩に特に怪我はないようだったが、萩本先生の言葉もあり、大事をとって一晩、歩は入院することとなった。
心配してくれる面々に謝りどうしの歩を貴史は励ます。自己評価の低い歩を諭し、そして感謝する貴史だった。
歩が入院したのは6人部屋の301号室。
目が覚めて知った同室の患者は栗原さん、スゲさん、モリエさん、イケウチさんという老女4人。歩の姿をみて思い出したのか肉親に会えない寂しさを訴えて泣く彼女らの姿に困惑する歩だった。
そんなところへ着替えを持って現れた貴史はいつものように歩にぼけて漫才が始まる。
「もう朝からテンション、高いわ。さすが『ロミジュリ』やね」
そんな二人を茶化すように、声援をおくるのは看護師の同級生多々良覚の母だった。
その言葉を聞いて、”漫才にうるさい”という栗原は二人に「お題」を出した。
歩らの漫才はスゲさんら三人には受けたものの、最後にクシャミをしてしまった歩に栗原の採点は辛い。
「明日も練習に来なさい」という栗原だったが、受験生にはとても無理だ。しかし、なぜか、多々良の母や貴史に流されるまま、歩は週一回、毎週土曜日午後が練習の日と決まってしまう。
間もなく卒業というなか、貴史の策略もあり、歩は否応なく漫才甲子園(漫才全国高等学校選手権大会)に向かうレールの上にあった。
いつものノリなので、軽くは楽しめるものの、特にクライマックスもない分だけ、それだけという感じですね。
時折、歩の心情が表出し、それを貴史が理解するという、ちょっと「一種気持ち悪い」ようなシーンがないではないですが、これがこの作品の深みを増しているというわけでもありません。なかなか、漫才の部分とウェットな部分がどうもそぐわないような感じ。即ち、歩が二重人格であるかのように見える不思議さがなんとなく漂います。
その意味で個人的にはもうちょっと表面的な漫才的な掛け合い中心であるお話のほうが好みですね。
さて、次巻ではどこまでいくんでしょうか。まだ、卒業式くらいなのか、一足飛びに高校の話、漫才甲子園予選あたりまでいくんでしょうか。
「漫才甲子園」、どんなライバルが現れるのか楽しみです。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★★☆☆
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