著者別(あ)有川浩

『植物図鑑』 有川浩

Syokubutsuzukan 2009年、89冊目。有川浩『植物図鑑』

有川浩らしい、軽いラブストーリー。

というよりも、タイトルのとおり「植物(雑草)図鑑」か。

 

1.ヘクソカズラ

冬終わりかけの休日前夜。河野さやかはマンションのポーチの植込みに転がる男を発見する。

無一文で腹を空かせた男は「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」そう言った。

(いつき)と名乗る男は一宿一飯の礼に翌朝の朝食を作るが、それを見てさやかは大胆にも家事をすることを条件にイツキを家に置くことにした。

 

2.フキノトウ/フキ そしてツクシ

イツキが同居人になって1カ月ほどの3月中旬。

イツキに誘われて散歩に出たさやかは、イツキとともに河原のフキノトウ、フキ、ツクシを摘む。

 

3.ノビル/セイヨウカラシナ

3月の終わり。前回の狩りで味をしめたさやかイツキとともに河原へ繰り出した。

河原へ降りず、土手で採取したのはセイヨウカラシナ。土手の途中で掘り出した小さなタマネギ状の球根はノビル。

 

4.春の野花-タンポポ、イヌガラシ、スカシタゴボウ

散歩の途上、さやかは秘かに購入した植物図鑑のにわか勉強の知識を得々とイツキに語る。

今回は花を楽しむことに決めたイツキさやかに花冠の作り方を教える。

 

5.ワラビ/イタドリ

自転車を購入したさやかイツキとともに山菜採りに繰り出した。

山を越える途中でワラビとイタドリを採取する。

 

6.ユキノシタ/クレソン

川を遡り、川岸で見つけたのはユキノシタとクレソン。

川に落ちたさやかを拭ったブランドもののハンカチはイツキがバイト先でもらったものだった。

ただでさえ素性を語らないイツキのバイト先での行動が気になったさやかはこっそりと覗きにいくのだが・・・。

 

7.ノイチゴ

喧嘩の翌日、気まずく家に帰りにくいさやかは久しぶりに呑み会に参加するが、さやかを想う営業部の竹沢さやかを家まで送ろうとする。

追い返そうとするさやかだったが強引に、さやかの最寄駅までついてくるが、そこに待ち構えていたのはイツキ

これをきっかけに互いの気持ちを確認した二人。

週末、ノイチゴを摘みに出かける。

 

8.イヌビユ/スベリヒユ そしてアップルミント

梅雨のさなかなかなか外出できない二人だったが、小雨の中、傘をさして家を出る。

家を出てすぐの街路樹の根元で見つけたのはイヌビユ。その後、近くで見つけ、摘んだ雑草はスベリヒユ、アップルミント。

アップルミントはマンションの庭に移植した。

 

9.アカザ・シロザ/ヨモギ そしてハナミズキ

梅雨が明け、もうそろそろ狩りの季節も終わり。

川を遡る途中で見かけるビニールハウスそばに生えるヨモギを摘む。

8月15日のさやかの誕生日を経て、季節は秋へ。

誕生日が近づいたら教えるというイツキの約束は果たされなかった。

会社から帰ったさやかは、『ごめん。またいつか。』という一筆箋が一枚入った封筒を発見する。

 

10.巡る季節

イツキがいなくなった後も、イツキとの暮らしで得た生活、味覚をなくしたくないさやかイツキがいたころと変わらない暮らしのペースを続けた。

季節は巡り、さやか竹沢から交際を申し込まれるが、これを断り、イツキを待つ。

春が来て、夏が来て、ある日、書留が届いた。

ごめん。待たなくていいです。

それでも待ち続けるさやかに、秋が来て、冬が来る。

冬終わりかけの週末、さやかに届いた書籍封筒には差出人に日下部樹の名。中に入っていたのはイツキが写真を提供した『日本の野草・春編』。

これを手掛かりにイツキを探し出すと意気込むさやかの前にイツキは姿を現わす。

もう新しい犬、拾っちゃった?

 

カーテンコール ゴゴサンジ

さやかイツキが間違えて教えた花の名前を思い出した。

イツキに教えられた梅仁丹状の草。

イツキはハゼランの正式名称とともに、「午後三時ごろに咲くからゴゴサンジ」と教えるが・・・。

 

カーテンコール 午後三時

杏奈は柴犬のサクラとともに散歩するうちに一人のお兄さんに出会う。

植物にちなんだサクラ杏奈の名を褒め、雑草の名にも造詣の深いお兄さんに杏奈は魅了されていく。

その青年は地元の名士日下部家の長男だった。

幼稚園からの幼なじみ阿部太一とよそよそしくなっているサクラをみて、お兄さんは呟く。

もったいないことするね。せっかく会えるのに

声にわずか、ほんのわずか、責めるような-妬むような色が混じった。

 

植物の移り変わりで、四季、季節の流れを感じさせる作品。

軽いラブストーリーという主筋はあるものの、むしろ道端に生える雑草(?)の紹介作品といったイメージ、印象が強く残る。

道を歩いて、この草がコレか、とか、食べられるのかな、とか、そういった好奇心をくすぐるタイプの作品かもしれません。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『三匹のおっさん』 有川浩

Sanbiki 2009年、51冊目。有川浩『三匹のおっさん』

愉快、痛快な老人達の活劇。

どこにでもいるような、それでいて実際にはありえないような子どもの心を残した還暦の老人ならぬ”おっさん”たちの夜回り。

カツアゲの取締り、ちかん退治、詐欺師退治、催眠商法への潜入、と町内の悪を懲らす活躍に胸躍るストーリー展開。

 

第一話

会社員清田清一は父の跡をついで敷地内の剣道教室を続けてきたが、最早通う生徒もいなくなった3月、会社も60歳で定年退職を迎えた。

家族は妻芳江のほか、二世帯住宅になっている自宅の二階には息子健児、嫁貴子、孫祐希が同居する。

清一は定年後、会社(地元ゼネコン)の系列会社であるアミューズメントパークに経理責任者に就くことになっていた。

そんな清一は赤提灯「酔いどれ鯨」の前店主立花重雄から私設自警団を作ることを持ちかけられた。

子どもの頃、清一重雄、そして有村則夫の三人は町内で「三匹の悪ガキ」の悪名をはせていたのだ。

還暦を迎えたとはいえ、まだまだ老人とは言えない三人は自分たちにできるボランティアを考えた。頭脳派の則夫、柔道歴の長い重雄、剣道三倍段の清一で、「三匹のジジイ」ならぬ「三匹のおっさん」で夜回りを始めようというのだ。

アミューズメントパークへ『エレクトリック・ゾーン』の出勤初日、清一はあまりの杜撰な経理に驚く。また、その店には偶然アルバイトとして祐希も入っていた。

アミューズメントパークの経理を整理するうちにゲームセンターの売上げが合わないことに気付いた清一は店長の須田良二に問い質した。

筐体から事務所に金を運ぶ際にカツアゲされることが多いのだという須田の言葉に半信半疑の清一だったが、実際にカツアゲの現場に出くわすや、思わず声をかけた。偶然目撃した祐希は店長に助けを求める電話をするが、須田はなかなか現れない。咄嗟に、祐希は警察に通報するフリでその場を収めるのだった。

カツアゲを主導していた男は須田の先輩。正道に戻った須田を脅迫し続けていたのだ。

清一に制止されたことを根に持った男は清一の弱点を須田に問い質す。

脅迫の挙句、祐希のことを知った男は祐希をターゲットにすることとした。

しかし、男と須田が話すテーブルの横では則夫がしっかりとレコーダーを回していた。

祐希を攫おうとする当日、現場に「三匹のおっさん」が現れた。

 

第二話

「ちかん出没、注意!」の立て看板。

町内で強姦事件、強姦未遂事件が頻発しているという。

それも「三匹」が夜回りをする深夜ではなく、20~22時という相対的に早い時間にだ。

有村則夫はこれを非常に憂慮していた。則夫には溺愛する高二の娘早苗がいた。

母親を亡くし、則夫が帰るまでは一人になってしまう早苗のことが則夫は心配だった。

「ちかん」に備えるべく、夜回りの時間を早めた「三匹」は別々に見回りを行うが、早速重雄が「ちかん」に遭遇した。

「ちかん」から女性を助けた重雄だったが、女性が重雄を見て気絶したために警官からは痴漢に間違われてしまう。

結局、重雄は「ちかん」を目撃はしたものの、取り逃がしてしまっていた。

その後、『エレクトリック・ゾーン』の駐車場で痴漢が捕まるが、三匹の面通しでは別人だった。

学校からの帰りが遅くなった早苗は公園前で突然自転車を引き倒される。

公園の植え込みに引きずり込まれ、危機一髪の早苗

そんなとき、アルバイトの帰りだった祐希は公園前に自転車が倒れているのを発見して早速清一に電話した。

もしもしジーサン?みどり公園の前で自転車が倒れてる。荷物が散乱してるのに持ち主がいなくて、荷物の中には栄女子高のナイロンバッグがある

 

第三話

重雄の妻登美子に声をかけたのは、仕立てのいい背広を着た年配の紳士。

男は小学校時代の同級生広田作治と名乗った。

登美子には記憶がなかったが、広田登美子のことを「僕の初恋」だという。

会社を経営してきた広田だったが、息子に会社の経営を譲って一人暮らしを始めるため、手頃な家を探していた。

友人としてつきあって欲しいという広田の名刺を登美子は戸惑いながらも受け取ってしまう。

家に帰っても女としては見てもらえず、「おばあちゃん」でしかない登美子の心の隙間に広田はうまく入り込んでしまったのだ。

そんな広田登美子の逢瀬を発見したのは祐希早苗

祐希は早速、清一に報告した。

 

第四話

清田家の前をうろうろしている中学生を清一の前に連れてきたのは祐希

中学生は3月で道場を辞めた工藤昴清一に相談があって、やってきたのだ。

相談とは中学で起こっている動物虐待事件についてだった。

学校で世話をしているマガモが片羽を切られたり、片足を切られたりという事件が連続しているという。事態を憂慮した学校はマガモを動物園に引き取ってもらおうとしていたが、ともう一人の飼育係新垣美和はこれに納得できず、犯人を捕まえてほしかった。

話を聞いた「三匹」は祐希早苗とともに動物虐待対策会議に乗り込むと、動物虐待が生徒たちに向かう危険性を校長らに訴えた。

そして則夫は校長を室外に連れ出して説得した。

会議室には盗聴器がしかけられていた。これを探知機で発見した則夫は犯人が学校関係者であることを仄めかし、校長の不安感を煽ったのだ。会議室に戻った校長は「見回り強化」の方針に転換し、「三匹」に協力を求めるのだった。

「三匹」は会議室の盗聴器はそのままにして犯人を誘導すると、飼育小屋の鍵を換えて待ち構えた。

 

第五話

学校近くのスーパーで偶然出くわした祐希早苗

そこに現れたのは早苗の学校の友人、富永潤子。デリカシーのない会話に閉口する祐希だったが、心優しい早苗は邪険にもできない。

そんな潤子は翌日の学校で、早苗祐希を紹介して欲しいと言い出す。

祐希との関係を自身の中でも整理できていない早苗は、またしてもイヤだとは言えずに、なし崩しに祐希を紹介することになってしまう。

一方、この話を聞いた祐希早苗の心が自分にはないことを悟り、自暴自棄のまま、早苗の友人として潤子につきあうこととする。

紹介してあらためて自身の心に気付いた早苗は打ち沈んでいく。そんな早苗の姿を心配し、早苗を苦しめる祐希に立腹する則夫だった。

 

第六話

バカヤロ---------ッ!

貴子が70万円もする空気清浄機を買ったことを知り、健児が吠えた。

健康食品ショップで詐欺にあったのだ。

クーリング・オフの申し出にもまともに取り合おうとしない業者に戸惑う健児らに代わって、業者を追い返した清一だったが、そんな業者にすら応対できない甘い健児ら夫婦に呆れ返る。

数日後、清一芳江から頼みごとを持ちかけられる。

芳江の友人靖代が悪徳業者に次々とはまっているようなのだ。商店街の貸し店舗に入居した業者の催眠商法の手口に次々とつかまっているらしい。

靖代の息子らに頼まれて説得しようとした芳江だったが、靖代からは絶交されてしまう。

説得するためにも通う理由を調べて欲しいという芳江だったが、靖代と面識もない清一は気乗り薄。

あなたたちの活動にはこういうことは入ってないのかしら

あなたたちのお遊びに今まで気づかないあたしだとでも思ってたんですか

芳江にばれたのでは仕方がない。

重雄則夫芳江にばれていたことを知るや固まってしまう。

則夫が下調べをした『パレット・ライフ』に一週間ごとに通いつめることを決めた「三匹」だった。

しかし、(「三匹」が貰ったり、買ったりして)則夫の工場に隠されていた商品を発見した早苗則夫が悪徳業者に騙されているものと心配し、祐希に相談する。

 

三匹が三匹とも根底では似たような性格なので、意見の相違もなく、話がとにかくスピーディです。一方で、ディテールがかなり違うので、その活躍の現れ方が違っていて、そのバリエーションがまた楽しい。

一人、重雄だけが、祐希早苗の世代の子、孫を持たないため、ちょっと脇役の佇まいはありますが、なかなかアクが強いこともあって物語のなかでも埋没することはありません。「三匹」の発案者ではあるものの、「三匹」が始まると、話の持ち込み元が清一祐希となることが多く、そのリーダー的なイメージも定着せずに終わってしまいました。

ところで、第二話で清一が語る、重雄が負かしたという”県警署長”って何でしょう?所轄の署長ではないんですか?何だか妙な役職名ですね。

あとは、祐希とともに妙に気の若い清一やアナーキーな則夫がいい味を出していますね。やることなすこと、枯れた感じというよりも、子どものいたずらに近い感じですね。特に、則夫の隠し武器が妙に笑えます。

まだまだ、別の話が読みたいキャラクターたちです。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★★

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『ラブコメ今昔』 有川浩

Lovecomedy 2008年、158冊目。有川浩『ラブコメ今昔』

いや、とにかく恥ずかしい話満載です。電車の中で読んでいて、覗き込まれたら・・・。考えるだけで赤面もの。

お得意の自衛隊を舞台にした”ラブコメ”です。男性が主役となる作品もありますが、なんとなく全般的に女性視点でのお話になっています。特徴的なのは、なんだかんだいって、「女は強し」というような印象を与えるようなエネルギッシュな登場人物が多いことでしょうか。

6つの短編からなり、最初の「ラブコメ今昔」に出てくる登場人物のサイドストーリー(前日譚)が最後の「ダンディ・ライオン」になっています。

 

ラブコメ今昔

第一空挺団(習志野空挺部隊)の大隊長今村和久(二等陸佐)は来客を迎えた。

東部方面隊の隊内紙『あづま』の取材である。顔馴染みの吉敷一馬一曹と広報部新任の矢部千尋二等陸尉である。千尋は『あづま』に新設するコラムの第一回に今村の登場を依頼しにきたのだ。

テーマは『自衛隊の恋愛と結婚について』。

冗談じゃない!」反射的に席を立つ今村だったが、千尋はしつこく食い下がる。根競べとなったが、今村の妻邦恵(旧姓瀬戸山)も籠絡されたうえは仕方なく、今村は協力することとなる。

  

軍事とオタクと彼

桜木歌穂は新幹線で席を譲ってもらったことをきっかけに、森下光隆三等海曹にアプローチする。

女っけのない光隆とのつきあいは順調に始まったはずだったが、光隆が自分との約束よりも優先させる隠し事にむかっ腹を立てた歌穂は秘密を探ろうと決意する。

光隆をつけた歌穂が辿り着いたのはポートアイランドで開催中の「ワンダーホビーフェスタ」。光隆はオタクだったのだ。

  

広報官、走る!

防衛省海上幕僚部監理部広報室。

「女ったらし」であることを稲崎一佐に見込まれ、引っこ抜かれた政屋征夫一等海尉が担当しているのは、某出版社の記念事業であるドラマ撮影への協力である。

とにかく時間にルーズで勝手なドラマスタッフと協力する隊員たちの間を取り持つのが仕事。

テレビ側で自衛隊との連絡役に配されたのは鹿野汐里ADである。マスコミ関係者としてはやや地味な美人度が政屋的にはジャストタイプだった。

ディレクター安藤政屋に文句をいうのは勿論、ことあるごとに汐里に嫌味をいう。

初めての顔合わせのときはラッキーと思ったが、こうもいたたまれない姿を再々見せられると単にラッキーともいっていられない。

  

青い衝撃

夫がモテて困るんです。

相田公恵の夫、相田紘司は松島基地所属、第四航空団第十一飛行隊、通称「ブルーインパルス」のパイロットである。

基地祭でファンに囲まれている紘司を見ていた公恵は、自分をみている美人に気がついた。建物の屋上から地上を見下ろしていた公恵とはっきり目を合わせ、その瞳が勝利の笑みを浮かべた。

鏡の中に、肌の荒れた所帯じみた顔をみつけたとき、公恵は少し不安になる。

紘司のユニフォームを洗濯しようとしたとき、公恵は襟の折り返しの中に、自分宛のメモを見つける。

あなたにだったら、勝てそう

それ以降、全国の基地を回る紘司のユニフォームの襟からは次々とメモがみつかる。

  

秘め事

明野駐屯地(中部方面隊第十師団)第十飛行隊に所属する手島岳彦二尉はUH60JAのパイロット。

2年前、上官である水田章介三佐から娘有季の友人朱美を紹介された手島だったが、自衛隊マニアの朱美にはついていけず、朱美手島には関心を示さなかった。

朱美に関心のある後輩と朱美との中継ぎを有季としているうちに、手島は「もし、ご迷惑でなければ・・・」と告白し、つきあいが始まった。

しかし、有季の父水田三佐には秘密だった。こうして話す機会を逸しているうちに2年がたった。

そんなとき、手島有季のことを応援してくれていた同期の宮崎が事故で亡くなった。

  

ダンディ・ライオン ~またはラブコメ今昔イマドキ編

朝霞駐屯地で通信群に配属されていた矢部千尋は、所用で訪れた広報センターの写真展で印象的な写真をみかける。

「陸上自衛隊広報:吉敷一馬ニ曹」

何とはなしに覚えた名前を自宅で再度目にする。写真好きの父のカメラ雑誌のコンテストのグランプリ作品が吉敷一馬の作品だったのだ。タイトルは『ダンディ・ライオン』。

有り余る行動力で本人探しをしたのは勿論のこと。一馬を探しあてた千尋は開口一番「『ダンディ・ライオン』拝見しました

唐突に自身の写真投稿を持ち出され、あろうことか、写真にこめた思いを言い当てられた一馬は狼狽し、言わずもがなの言葉を口走ってしまう。

そんなことは俺の勝手だ。あんたの思いを俺が聞く義務もない

  

  

今の地元の自衛隊(駐屯地)が一つ、故郷の自衛隊(駐屯地)が一つ舞台として登場し、何とはなし嬉しくなります。

といいながら、近くなんだけれど行ったことはないんですよね。夏祭りでは開放していたりするんですけど・・・。

そういえば、作品に「官舎」が出てきましたが、これも歩いて5分程のところにありますね。そういえば、子どもの同級生も官舎に住んでいるっていってましたから、そういえば親は自衛官なんですねぇ。あんまり考えたことはなかったですが。

  

とにかく恥ずかしさ爆発といった作品群で、男性が主人公のもの(「ラブコメ今昔」、「広報官、走る!」「秘め事」)は何とか読むことができますが、女性が主人公のものはちょっと堪りません。なんなんだ、これは?といった感じで、深く読むことが憚られるような気恥ずかしさを感じます。

読み終わった後は、とにかくグッタリと疲れてしまいました。

悪い作品だとは思わないのですが、その一方で、「もっと大きなストーリーのある話にしようよ」、と思わずにはいられませんでした。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:☆☆☆☆

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『別冊図書館戦争Ⅱ』 有川浩

Bestutosyo2 2008年、148冊目。有川浩『別冊図書館戦争Ⅱ』

これで本当に最後でしょうか。「図書館戦争」シリーズのスピンオフ本の2巻目。前作堂上篤笠原郁の話でしたから、今回は当然のように予想されるのは、手塚光柴崎麻子の話。

勿論、手塚柴崎の話もありますが、弱い(弱くなっていく)柴崎の話でもあるので、ちょっとこれまでとは印象が違っています。”人に頼る”っていう展開は必然ではあるので、まぁアリなんでしょうが、個人的にはちょっと・・・という感じでしょうか。どちらかといえば、お奨めは副隊長緒方明也の話(「もしもタイムマシンがあったら」)が切なくて、それでいて希望があって非常に好印象です。



一、「もしもタイムマシンがあったら」

堂上班の休憩中の雑談。

いつものように、堂上が笑い者になったあと、話を振られたのは緒方副隊長

「もしもタイムマシンがあったら」戻りたいのは大学の頃。

緒方は後悔することとなる大学時代から卒業後2年を振り返る。

法学部の同じゼミで出会った竹内加代子との馴れ初めと、卒業後の良化特務機関への配属。

検閲のときには心のスイッチを切れるようになった2年目。デートのときに加代子が示したのは発売前の一冊の雑誌。大学時代からの加代子の夢である小説が賞をとり、掲載が決まったのだ。

しかし、その雑誌は2日後の発売日に検閲対象となっている雑誌だった。

ニ、「昔の話を聞かせて」

に多大なる憧れを抱く新隊員安達萌絵一士、担当した吉田達也一士らを前に、いっぱしの口を聞くようになったの姿に堂上は吹き出さずにはいられない。

帰宅した堂上堂上小牧らの新米時代の話をせがむ。

三、「背中合わせの二人」(1)

二人部屋を一人で使う柴崎は寮監から一階級下の士長との同室を頼まれる。同室となった水島久美子柴崎と同期だったが、階級差を意識してか敬語を使うなど非常に社交性に欠け、柴崎は溜息をつく。「今、私生活で手間ァ取られてる場合じゃないんだけどなぁ・・・

柴崎は図書館に通いつめる奥村玲司という利用者のストーカー行為に悩まされ、業務部全体でも懸案となっていた。ストーカーに慣れていることもあり、柴崎は業務部として特殊部隊に頼まない以上、個人的に堂上らに頼むのも控え、自ずとリスクを高めていた。

閲覧室を出たところを奥村に捕まった柴崎は壁際に追い詰められ両脇に腕をつかれて逃げられない。利用者の立場を強調して柴崎を追い詰める奥村を遮ったのは館内警備中の手塚だった。事情を知った手塚はその後、個人的に柴崎をガードするようになったが、手塚に苦手意識を持つ奥村は次の手をうった。

図書の返却を拒み、柴崎の自宅への訪問を求めたのだ。巧妙な手口に法的な手段も難しく、柴崎は(手塚を車内に残し)単身奥村の自宅を訪ねる。

四、「背中合わせの二人」(2)

のもとに安達一士が持ち込んだのは柴崎を裸にしたコラージュ写真だった。これが男子下士官の間で無差別に回っているとのこと。激怒するを中心に堂上班は玄田にも報告のうえ、調査を始める。警視庁の平賀にも被害届を出し、警察での捜査も始まった。

まず怪しいのは奥村玲司だが、平賀の調べでは奥村の線はなく、別の線が考えられる。

出会い系サイトにも写真が登録されるなど、柴崎は徐々に追い込まれ、ストレスを抱えていく。そんな柴崎を励ますべく、柴崎を官舎へ招く。

その頃、堂上小牧らは内部犯行の可能性を見出していた。犯人は後方支援部の隊員である可能性が高い。

そこへから連絡が入る。官舎から寮への100mのあいだに柴崎が攫われたのだ。

五、「背中合わせの二人」(3)

飛び出した手塚は車で柴崎を追う。柴崎に渡したお守りにはGPS発信器がついているのだ。

車に飛び乗ってきたのは柴崎と同室の水島。「お話し、聞きました!私も連れて行ってください、柴崎さんが心配なので!

水島柴崎が攫われた理由として、柴崎への恨みの可能性を挙げる。柴崎を貶め続ける水島の言に手塚は苛立ちを抑えられない。

一方、堂上らは犯人として後方支援部の坂上洋一(29歳)を特定するが、GPSの指す位置は坂上の住所ではない。

私、入隊した頃からずっと手塚さんのこと好きだったんです水島の言葉に手塚はキレた。水島をコンビニで降ろすと、一路GPSの示す柴崎のもとを目指す。

その頃、たちははコラージュ写真に付記されたスリーサイズの表示から女性の共犯者の存在を探り出す。ほとんど直感で会議室を飛び出したは、柴崎の部屋に駆け込んでいった。

手塚がたどりついたのは古ぼけた安アパートだった。そして、手塚は大きく息を吸い込み、-叫んだ。「柴崎、どこだ-------ッ



そして披露宴・・・。



図書館戦争を舞台にした恋愛小説(ラブコメ)というスピンオフ本のコンセプトの通り、今回も手塚柴崎をメインに据えた作品です。でも、披露宴までいってしまうとは思いもしませんでした。メインの堂上ですらなかったのに・・・。まぁ、今回は、それとのバランスか、堂上の披露宴でのエピソードも紹介されていますが。

しかし、手塚柴崎メインで1冊は難しいですね。やっぱり、堂上あってこその「図書館戦争」という印象をあらためて受けます。今回は脇役(ニ、「昔の話を聞かせて」は除く)に徹しているようですが、わずかな登場でもインパクトは大きい。の自爆だけでも十分に面白いんですが、堂上とのやりとりが更に楽しい。

なんだか、これで終わってしまうと思うと寂しいような気もします。

といいながら、まだ、小牧毬江っていうのもあるので、Ⅲもないとは言えないのかもしれません。

特に、今回は安達萌絵という新たにと絡めるキャラクターが登場してきたので、これで終わりというのはやはり惜しい。

安達萌絵吉田達也あたりを主人公にして第二期シリーズとかっていうのでもいいですね。でも、が出てくるだけで主役を食ってしまうんで、難しいかもしれませんが・・・。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『別冊図書館戦争Ⅰ』 有川浩

Bestutosyo1 2008年、76冊目。有川浩『別冊図書館戦争Ⅰ』

図書館戦争シリーズのスピンアウト本(外伝)ということらしいです。

シリーズ最終巻『図書館革命』のエピローグがあんな風に終わっていましたので、そこに到るまでの物語といった内容となっています。基本的には笠原郁堂上篤の関係の1年以上にわたる漸進を綴るものですが、当然に脇を固めるキャラクターもしっかり登場しています。良化委員会との抗争に絡む本論とは離れつつも、図書館で起こるエピソードを通じて、物語が進行するというストーリー展開はシリーズ全体となんら変わりません。

むしろ、こうやって本論を離れた別冊を読んでみれば、作者有川浩の文字狩りに対する思いとは離れて、図書館シリーズの本質が、堂上の物語であったことを再認識します。

一、「明日はときどき血の雨が降るでしょう」

「何か、あたしの方が絶対好きだなーって。だって、あたしは好きっていったけど堂上教官に言われたことないんだもん」

気持ちの量は比べるものではないかもしれないが、郁としては少し面白くなかった。

図書館のゴミ箱に、研究書籍のバーコードが切り取られ捨てられているのを毬江が発見する。窃盗事件の犯人を張り込む堂上班の前に犯人が。

逃げる犯人を取り押さえ、満面の笑みを浮かべて振り返ったに顔をしかめる堂上手塚。こうしてに新たな異名が付け加えられた「ブラッディ笠原」


ニ、「一番欲しいものは何ですか」

堂上が復帰してから、郁にはとても人に言えない悩みができた。

・・・・・・キスとかできる機会が減ったなー。

年始の休みは元旦から3日間。元旦を寮で過ごすの携帯電話が鳴る「あんた笠原?ねぇ、あんた誰に断って篤と付き合って・・・」

堂上に呼び出されたは国分寺にある堂上の実家へ向かう。そして、堂上の両親、妹静佳と対面する。


三、「触りたい・触られたい二月」

「一般的にはもうすることしてておかしくないくらいの期間だけど・・・・・・」柴崎はそこで一旦首を傾げ、「もうした?」

「キ、キスはしてるよ」

「してなかったらびっくりするわ、そんなもん!あたしが話してんのは高校生か!」

怯えるに、少し距離を置こうとする堂上

図書館ロビーの宅配物から催涙ガスが発生する。各階から利用者を非難させるが、社会科見学中の小学生が逃げ遅れる。

堂上は科学防護服を準備しようとするが、タオルで顔を覆ったは制止も聞かず館内に飛び込んでいった。


四、「こらえる声」

声出したくないなら何か噛んどけ。

逃げようとした理由まで読まれて、郁は目の前にあるものに思い切り歯を立てた。

「堂上ニ正、肩はいつ痛められたんですか?」と手塚。

吉祥寺の武蔵野第二図書館で薬物中毒者が包丁を手に女性を人質に籠城する。

は囮。空気の読めない女子大生が制止を振り切って中へ入ってしまうという設定だ。


五、「シアワセになりましょう」

「二人で近くに部屋とか借りたいなーって。あたしも三正になったからお給料上がるし」

「却下。バカバカしい」

「もういいっ!バカバカしいごっこ遊びで悪うございましたっ。もう言いません、昇任祝いも堂上教官からは何にも要りませんっ」

喧嘩で気まずい二人。

館内でゴミを蹴って遊ぶ中学生に注意をすると「うるせえ公僕!」

良化委員会推奨語のみを使って極度に差別的な表現をする作家、木島ジン。反社会的でありながら、造反語を使わない木島ジンの作品を良化委員会は取り締まれない。

深夜、教育委員会とPTA団体の依頼に基づき、良化特務機関が武蔵野第一図書館を襲う。



シリーズ通り、柴崎は毒舌で、小牧も妙に大人の対応。これにガキのままの堂上がからかわれ、これに天然の手塚が絡むといういつものパターンで、安心して読めます。

内容が内容だけに読んでいて、気恥ずかしい部分も多々ありますが、柴崎らの茶化しがあって、客観の部分でなんとか(恥ずかしすぎて)投げ出すことなくとどまっていられるのでしょう。

まぁ、のような「26歳純粋培養乙女・茨城県産」といったタイプは実際いないでしょうから、”お話”として読んでいればいいはずなのですが、妙に気恥ずかしくなるのは何故でしょう。

次巻では他の登場人物ということですが、柴崎手塚とか、小牧毬江で話が持つんでしょうか。ベタ甘でなくとも、読んでられなくならないか、ちょっと心配です。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

『図書館戦争』公式サイト

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『阪急電車』 有川浩

Hankyu 2008年22冊目。図書館戦争』シリーズの有川浩『阪急電車』

これまでの「陸・海・空」の自衛隊シリーズや『図書館戦争』シリーズといった作品からはかなり離れた作品でしたが、予想外に良かったです。

作品は阪急今津線の各駅(?)、電車内を舞台とした短編集ですが、各話の主人公たちが次の話の主人公たちと絡むというリレー形式の作品となっています。

<西宮北口方面行>

宝塚駅:(主人公)征志。図書館の帰り、読書傾向が同じで秘かにライバルと目していたユキ(この話では氏名不詳)と電車で出合う。武庫川中洲の「生」の字をきっかけに話は始まります。

宝塚南口駅:(主人公)翔子。結婚間際に友人に新郎を寝取られ、その結婚式へ白いドレスで討ち入ります。[※車内で征志ユキの会話を耳にする]

逆瀬川駅:(主人公)時江。孫娘とドッグガーデンへ行った帰りの車内で、白いドレスの翔子に出合い、話しかけます。[※征志ユキを誘うのを目撃。翔子に助言。ミサカツヤ翔子のことをコメント。]

小林駅:(主人公)翔子時江の助言に応じて下車した小林の町で心が和んでいきます。

仁川駅:(主人公)ミサカツヤの常識のなさを嗜めたことから喧嘩になります。[※時江からの助言。]

甲東園駅:(主人公)ミサ時江の助言をきっかけに別れようと決めたものの、未練が残るミサだったが、車内の女子高生えっちゃん(悦子)たちの雑談を聞きながら決意を新たにします。

門戸厄神駅:(主人公)圭一。混雑する車内で同じ大学(関西学院大学?)の一般教養を受ける(権田原)美帆との出合います。

西宮北口駅:オヤジにぶつかられ、引出物を壊した翔子(※転んだ翔子を助ける悦子)は引出物を捨てて帰ります。カツヤと別れる決心をしたミサは再度えっちゃん(悦子)をみかけます。圭一は、「別にトモダチじゃなくてもいいけど。むしろトモダチじゃないならそのほうが」と美帆に交際を申し出ます。

<宝塚方面行>(前半から約半年後)

西宮北口駅:(主人公)ミサ。車内に座ったミサの傍にはおばさん集団。女性(翔子)が座ろうというところへブランド物の鞄を投げ、席取りをする姿にミサは憤慨し、座ったおばさん(伊藤康江)に「信じられへん。おばさんってサイテー」と吐き捨てます。

門戸厄神駅:(主人公)康江ミサに非難されるとともに、おばさん集団に加わることのストレスからくる胃痛で門戸厄神駅で下車します。付き添ったミサの介抱を受けます。

甲東園駅:(主人公)悦子。受験を前にしながら学校・塾の都合が優先され、自身の思いが尊重されていないことへ苛立ち、自暴自棄に陥った過去を振り返ります。[※甲東園で圭一たちとすれ違います。]

仁川駅:(主人公)圭一。沿線のワラビが採りたいという美帆にダメを出す圭一。

小林駅:(主人公)翔子。小林駅に引っ越した翔子は下車した駅で小学生のいじめに遭遇します。健気に振舞う少女(ショウコ)を励まします。[※社内の圭一たちの会話を耳にする。小林駅でミサと出合いお茶に誘う。]

逆瀬川駅:(主人公)時江。騒がしいおばさん集団に孫娘が絡まれるや、おばさん退治に向かいます。[※征志ユキがおばさん退治に加勢する]

宝塚南口駅:(主人公)征志ユキと出合ってからを振り返ります。

宝塚駅:(主人公)征志ユキに同棲することを申し出ます。

全編「微笑ましい」の一言につきます。各話がいい味を出しているのでどう巧く表現したらいいのかわかりませんが、各キャラクターはそれぞれ異なった性格(時江翔子は似ていそうです)でありながら、各々が非常に魅力的です。まぁ、男性キャラクターはちょっと気恥ずかしい感じがしないではないですが・・・。個人的には時江の話が一番小気味良くて良かったですね。

有川浩のこういった気恥ずかしいストーリーは『図書館戦争』笠原郁あたりからチラホラ見え隠れしていましたが、こうやってまとめてみるとちょっとしたものですね。

こういったら失礼ですが有川浩の作品は所詮「娯楽読み物」といったカテゴリーでしたので、今回の作品については印象が異なり、「アレッ」という感じでしたが、いい意味で予想を裏切られた感じです。今後は幅広くどんな作品が出てくるのか楽しみに待てそうです。

舞台となる阪急今津線は一回しか乗ったことがありませんので、あんまり印象に残っていません。確か車中では本を読んでいて車窓は眺めなかったんでしょうね。ちょっと残念です。次回は時間があれば小林駅に降り立ってみたいものです。

お奨め度:★★★★

再読推奨:★★★★


『図書館戦争』公式サイト

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