『植物図鑑』 有川浩
2009年、89冊目。有川浩『植物図鑑』
有川浩らしい、軽いラブストーリー。
というよりも、タイトルのとおり「植物(雑草)図鑑」か。
1.ヘクソカズラ
冬終わりかけの休日前夜。河野さやかはマンションのポーチの植込みに転がる男を発見する。
無一文で腹を空かせた男は「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」そう言った。
樹(いつき)と名乗る男は一宿一飯の礼に翌朝の朝食を作るが、それを見てさやかは大胆にも家事をすることを条件にイツキを家に置くことにした。
2.フキノトウ/フキ そしてツクシ
イツキが同居人になって1カ月ほどの3月中旬。
イツキに誘われて散歩に出たさやかは、イツキとともに河原のフキノトウ、フキ、ツクシを摘む。
3.ノビル/セイヨウカラシナ
3月の終わり。前回の狩りで味をしめたさやかはイツキとともに河原へ繰り出した。
河原へ降りず、土手で採取したのはセイヨウカラシナ。土手の途中で掘り出した小さなタマネギ状の球根はノビル。
4.春の野花-タンポポ、イヌガラシ、スカシタゴボウ
散歩の途上、さやかは秘かに購入した植物図鑑のにわか勉強の知識を得々とイツキに語る。
今回は花を楽しむことに決めたイツキはさやかに花冠の作り方を教える。
5.ワラビ/イタドリ
自転車を購入したさやかはイツキとともに山菜採りに繰り出した。
山を越える途中でワラビとイタドリを採取する。
6.ユキノシタ/クレソン
川を遡り、川岸で見つけたのはユキノシタとクレソン。
川に落ちたさやかを拭ったブランドもののハンカチはイツキがバイト先でもらったものだった。
ただでさえ素性を語らないイツキのバイト先での行動が気になったさやかはこっそりと覗きにいくのだが・・・。
7.ノイチゴ
喧嘩の翌日、気まずく家に帰りにくいさやかは久しぶりに呑み会に参加するが、さやかを想う営業部の竹沢がさやかを家まで送ろうとする。
追い返そうとするさやかだったが強引に、さやかの最寄駅までついてくるが、そこに待ち構えていたのはイツキ。
これをきっかけに互いの気持ちを確認した二人。
週末、ノイチゴを摘みに出かける。
8.イヌビユ/スベリヒユ そしてアップルミント
梅雨のさなかなかなか外出できない二人だったが、小雨の中、傘をさして家を出る。
家を出てすぐの街路樹の根元で見つけたのはイヌビユ。その後、近くで見つけ、摘んだ雑草はスベリヒユ、アップルミント。
アップルミントはマンションの庭に移植した。
9.アカザ・シロザ/ヨモギ そしてハナミズキ
梅雨が明け、もうそろそろ狩りの季節も終わり。
川を遡る途中で見かけるビニールハウスそばに生えるヨモギを摘む。
8月15日のさやかの誕生日を経て、季節は秋へ。
誕生日が近づいたら教えるというイツキの約束は果たされなかった。
会社から帰ったさやかは、『ごめん。またいつか。』という一筆箋が一枚入った封筒を発見する。
10.巡る季節
イツキがいなくなった後も、イツキとの暮らしで得た生活、味覚をなくしたくないさやかはイツキがいたころと変わらない暮らしのペースを続けた。
季節は巡り、さやかは竹沢から交際を申し込まれるが、これを断り、イツキを待つ。
春が来て、夏が来て、ある日、書留が届いた。
『ごめん。待たなくていいです。』
それでも待ち続けるさやかに、秋が来て、冬が来る。
冬終わりかけの週末、さやかに届いた書籍封筒には差出人に日下部樹の名。中に入っていたのはイツキが写真を提供した『日本の野草・春編』。
これを手掛かりにイツキを探し出すと意気込むさやかの前にイツキは姿を現わす。
「もう新しい犬、拾っちゃった?」
カーテンコール ゴゴサンジ
さやかはイツキが間違えて教えた花の名前を思い出した。
イツキに教えられた梅仁丹状の草。
イツキはハゼランの正式名称とともに、「午後三時ごろに咲くからゴゴサンジ」と教えるが・・・。
カーテンコール 午後三時
杏奈は柴犬のサクラとともに散歩するうちに一人のお兄さんに出会う。
植物にちなんだサクラや杏奈の名を褒め、雑草の名にも造詣の深いお兄さんに杏奈は魅了されていく。
その青年は地元の名士日下部家の長男だった。
幼稚園からの幼なじみ阿部太一とよそよそしくなっているサクラをみて、お兄さんは呟く。
「もったいないことするね。せっかく会えるのに」
声にわずか、ほんのわずか、責めるような-妬むような色が混じった。
植物の移り変わりで、四季、季節の流れを感じさせる作品。
軽いラブストーリーという主筋はあるものの、むしろ道端に生える雑草(?)の紹介作品といったイメージ、印象が強く残る。
道を歩いて、この草がコレか、とか、食べられるのかな、とか、そういった好奇心をくすぐるタイプの作品かもしれません。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★★☆☆
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