『ヒートアイランド』 垣根涼介
2009年、17冊目。垣根涼介『ヒートアイランド』
しまった、読む順番を間違えた。
『ギャングスター・レッスン』の前作がこの作品なんですね。
なるほど『ギャングスター・レッスン』が中途半端なはずです。あくまで、あれはこの作品の後日譚というか、付けたしでしかなかったわけですから。
その分、この作品の内容は濃いですね。
三つ巴というか、四つ巴(4だと巴じゃないですが・・・)といったように、立場の違う勢力の騙しあい、化かしあい。時間との戦いの中で、情勢が次々と変わっていくスピード感。非常に面白い作品です。
父親の勤めるメーカーの倒産などを通じて、世のシステムを無常を感じたアキは、システムに乗るための方策である高校を中退した。
しかし、新たな価値観を見つけることもできず、渋谷でくすぶり続ける日々のなか、アキはカオルと出会う。
カオル(渋澤薫)は裕福な大蔵官僚の家に生まれたが、子どもに関心を持たない冷たい家庭に育った。社会のなかでの自分の立ち位置を模索するカオルもまた、社会制度に依存する自身の未来を忌避し、自立の道を探っていた。
高校にいかず大検にパスして一人暮らしを始めたカオルは、渋谷のセンター街でストリートギャング同士の喧嘩に遭遇し、一つのビジネスを思いつく。
素人参加のケンカをショーとして見せるのだ。
しかし、柔弱に見えるカオルが主催することは困難。カオルは共にビジネスを行う相棒を渋谷の街で探し始めたが、うまくはいかない。殴られたり、金をせびられる有様だ。
こうして殴られているカオルを助けたのがアキだった。
カオルを助けた理由を”お人よし”のせいだというアキに、カオルは話を持ちかけた。
二人は更に仲間を集めた。
渋谷のストリートギャングのヘッドを呼び出すと、アキが完膚なきまでに叩き潰したうえ、ビジネスの話をもちかけたのだ。
こうして、アキ、カオルと4人のヘッド(タケシ、サトル、ユーイチ、ナオ)という6人の『雅』が結成された。
こうして始められた”ファイトパーティ”は回を重ねるにつれ、口コミで広がっていった。
この評判の”ファイトパーティ”に、遊ぶ金欲しさに参加したのは中堅暴力団「麻川組」の若頭黒木(政則)が仕切る「光栄商事」のリュウイチ(小倉隆一)。リュウイチは圧倒的な強さで優勝するが、その容赦のないケンカにアキは眉を顰める。
表に出ない、裏金専門の3人の強盗団(柿沢、桃井、折田)は、大阪・ミナミに本拠をおく広域暴力団「松谷組」が経営する非合法のカジノ・バー(六本木6丁目)を襲撃した。
催眠ガスを換気用ダクトから流し込み、閉店間際の店の客ごと眠らせた上で、金を奪ったのだ。強奪した金は計8936万円。
金を山分けしたあと、折田が切り出したのは”引退”の相談だった。引き止める桃井だったが、柿沢は冷静に同意する。それぞれ餞別として300万円ずつを折田に渡すのだった。
最後の仕事を終え、家に帰る途中、折田がふと立ち寄った<<Bar Sinister>>で事件は起こった。
店の女性客に絡む金髪の男(タケシ)とスキンヘッドの男(サトル)を折田はつい制止してしまう。殴りかかるタケシだったが、鍛え続けてきた折田の敵ではなかった。
折田が店を出るところを待ち伏せしていたタケシは折田の後頭部を鉄パイプで殴打するなど半殺しの目に合わせたうえ去る。金の詰まったボストンバッグを抱えて・・・。
ボストンバッグに入っていたのは、3210万円。
あまりの高額の金に途方に暮れたタケシたちはアキとカオルに相談する。
アキたちもまた、正体不明の金に困惑するが、程なくして、金の正体は判明する。
単に金を返せばいいというものでもなく、裏世界のプロフェッショナルとの対決を余儀なくされたアキたちは良い方策を探るのだった。まずは、”雅”に迫る敵の正体を探るべく、配下に指示を出すとともに、『雅』を探す者たちを通報した者に報奨金を出すと告知したのである。
一方、病院に担ぎ込まれた折田から事情を聞いた柿沢と桃井は、折田から金を奪還する仕事を請け負う。手掛かりは「金髪とスキンヘッド」「アキ」「三日月形のペンダント」だ。
勿論、金を奪われた松谷組も黙ってはいない。幹部の久間(武)はカジノの支配人井草(保明)らに指示を出し、手掛かりを探させるのだった。そして、偶然から「Bar Sinister」を見つけた久間と井草は、渋谷を根城とするストリートギャングである「金髪とスキンヘッド」、「三日月形のペンダント」の手掛かりを得たのだ。
リュウイチは自分を見下すアキの態度が許せなかった。光栄商事を仕切る麻川組若頭の黒木にアキの”ファイトパーティ”から資金を吸い上げる手口を建策する。
渋谷を治める黒木に「金髪とスキンヘッド」を探すよう依頼する松谷組の久間だったが、表面的に協力するように見せながらも黒木には久間に金を渡すつもりはなかった。
勿論、久間もそんなことはお見通しだ。手掛かりに反応したリュウイチの反応を見て、井草らに光栄商事を見張らせるのだった。
久間の持ってきた手掛かりから、松谷組が探しているのが『雅』だと確信したリュウイチは黒木にそれを告げる。
黒木は”ファイトパーティ”からの収奪とともに、松谷組の金をアキから奪う算段を始める。
渋谷で聞き込みを続ける途中、(報奨金目当てに)追跡する男たちに気付いた柿沢と桃井は逆に男たちを叩きのめすと、アキたちの正体と根城とする店<<Cafe Bar,Red Cross>>をつきとめた。
アキも程なく柿沢らに”Red Cross”の場所が知られたことを知る。
タイムリミットは翌日の開店まで。
時間に追われるアキとカオルに声をかけたのはリュウイチと黒木である。
”ファイトパーティ”のガード料を要求するとともに、それとなく松谷組の金のことを探る黒木の言葉は更にアキを追い詰めていった。
片方だけの顔をたてることはできなくなったアキは一つの方策を思いついた。
両方を共倒れさせるのだ。
翌日<<Red Cross>>の開店を前にして黒木を呼び出したアキは、遠くから見張る柿沢らに見せつけるように、折田のボストンバッグを抱えたまま、黒木とともに光栄商事に向かった。
柿沢は素知らぬ顔で、光栄商事に籠もる人数を確認すると、桃井とともに光栄商事へベレッタ(M8045・クーガーF)を携えて乗り込んだのである。
ここまではアキのシナリオ通り。しかし、ここでアキが想定していなかったもう一つの陣営が乱入する。
光栄商事を見張っていた井草は久間を呼び出していた。黒木とともにアキが光栄商事に入り、加えてカジノ襲撃の犯人たちまでもが入っていったのだと。
柿沢・桃井対黒木、松谷組対麻川組、柿沢・桃井対麻川組といった次から次への対決。そして事務所に閉じ込められた緊迫感と、最後は非常に盛り上がりを見せます。
それにしても、まぁ、最後は派手に死人が出てしまいました。
黒木やリュウイチも意外とあっさりでしたが、本当のところはそうなのかもしれませんね。どんなにアクが強かろうが、腕っ節が強かろうが、関係はないんでしょう。
最後のこの盛り上がりが、おそらくこの作品の全てで、それまではちょっとご都合主義的なところも少なくありませんし、キャラクター自体がステレオタイプであったりする部分も見受けられます。
そんな中ではやはり正体不明の柿沢と桃井の明るさが光ります。どちらかといえば、アキとカオルが主である作品ではありますが、やはり柿沢・桃井の方にキャラクターとしては分がありそうです。
次作の『ギャングスター・レッスン』は今ひとつという感じでしたが、その後の作品はどうなっているんでしょうか。また、読んでみたいものです。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★★★★
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