『レッド・ゾーン (上・下)』 真山仁

2009年、81冊目、82冊目。真山仁『レッド・ゾーン (上・下)』
『ハゲタカ』シリーズの第3弾です。
これまた映画の原作のようですが、どうも雰囲気は違いそうですね。
少なくとも、芝野は今回はチョイ役というか、全体のストーリーの中で存在感が殆どありません。
マカオで鷲津政彦に声をかけたのはCIC(中国投資有限責任公司)の王烈。
中国で立ち上げるSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)のスカウトだ。しかし、鷲津には興味はなく、すげなく断るのだった。
その頃、世界を代表する自動車メーカー、アカマ自動車に買収をほのめかす男が現れた。”中国の買収王子”、”上海の買収王”、上海投資公司の賀一華である。
この赤いハゲタカへの防衛を考えるため、アカマ自動車の社長古屋貴史と社長室室長大内成行は鷲津政彦と面会すると、防衛策について相談する。
鷲津は賀一華の後ろにCICが控えていると睨んでいた。賀一華に対するアカマ自動車の防衛策を見極めてから、CICが出てきて買収するのだ。
それを裏付けるように王烈からは再度、鷲津にアプローチがあった。その中で王烈はアラン・ウォードの死の真相を仄めかす。
賀一華もまた鷲津に接触すると、アラン・ウォードの恋人であった美麗(翁藍香)を鷲津に引き合わせた。
賀一華の年下の叔母だという美麗は記憶を失い、口もきけなくなっていた。
鷲津はアカマ買収に参加することに決め、その準備に取り掛かった。CICに対抗する人物として白羽の矢を立てたのは、香港随一の財閥、将集団の総帥将陽龍だった。
アカマ自動車でも防衛策の検討が進められた。外為法による防衛を「国防関連企業だけ」とし、アカマ自動車の防衛を期待できない政府の弱腰に、アカマ自動車では禁断の分野となっている防衛産業分野への進出を検討する。しかし、アカマ自動車の象徴たる最高顧問赤間周平翁はこれを認めない。
加えて、周平の甥である副社長赤間太一郎は、賀一華の買収提案を経営陣の不祥事と捉え、クーデターを画策していた。
そんなとき、密告があった。アカマ・アメリカの業績が太一郎が社長時代に改竄されていたのだ。この不祥事に震撼する大内だったが、社長室次長保坂時臣はこれを太一郎排除の好機と捉えていた。創業家を排除することの是非を問う難問に、周平への相談を考えた大内だったが、そこに入ってきたのは周平の事故死の知らせだった。
動揺するアカマ自動車に追い討ちをかけるように賀一華はTOBを仕掛けてくる。
芝野健夫は曙電機でのCROを辞し、かつて世話になった”なにわのエジソン”藤村登喜男に恩返しすべく、登喜男の死後経営の行き詰ったマジテック社に移っていた。
登喜男亡き後、職人桶本の職人技だけに頼るだけに弱体化した会社の将来を作り上げるのが、芝野の仕事だった。営業を買ってでた芝野は、放蕩息子であった次男望を育成していった。
そんなとき、アカマ自動車のFAを務めていたアイアン・オックス・キャピタルの加地俊和は芝野に古屋たちの相談に乗るように求めてきた。
賀一華から送りつけられた、政界工作(贈賄)を行う東京支社長佐伯鶴男らの数々の不祥事の情報、醜聞は古屋を打ちのめし、古屋は大内に辞任を仄めかす。秘かに賀一華と通じた太一郎もクーデターの準備を進めていた。
そんな中、古屋らに会った芝野は違法を認めず、佐伯の告訴を勧めるとともに、創業家を過度に慮らず、太一郎を切るよう進言する。会社は誰のものかを改めて語ったのだ。
古屋らは鷲津の言葉にも耳を傾け、太一郎を放逐し、佐伯を告発するとともに、防衛対策委員会を設置して、その委員長にニッポン・ルネッサンス機構の総裁飯島を就けた。鷲津もまた”白馬の騎士(ホワイト・ナイト)”に名乗りを上げた。
しかし、ここで買収に参加してきたのはCICではなく、鷲津の古巣であるKKLだった。総帥アルバート・クラリスが乗り出してきたのだ。
サブプライムローンの影響で経営不安となった自動車ビッグ・スリー(ユニオン・オート、プリマス、フォックス自動車)支援のための資金をCICが拠出するというのだ。アジア嫌い、共産主義嫌いのクラリスだったが、アメリカ政府に頼まれ、愛国心から仕方なく乗り出したのが実態だった。
クラリスの本心を斟酌した鷲津はクラリスが妥協できる対案を出すことで、この危地を脱しようとしていた。
漸く、アラン・ウォードの件が解決しましたが、あんまり釈然とはしない死に様ですね。
今回はCICの脅威を背景にして書かれており、なかなか興味深い設定ではあるのですが、漠然とした不安感・脅威が中心で、どうも踏み込み不足といった感じでしょうか。
このシリーズ、いつもそうですが、長くするために、不要なキャラクターや不要なエピソードを盛り込みすぎかもしれません。
キャラクターでは、今回も存在感の乏しい(なぜ、登場する必要があったの?別に出てこなくても話には大きな影響はないのに?といったような)登場人物が多数ありました。
少なくとも今回のストーリーで芝野の登場する必要は全くなかったといっていいでしょう。殆どアカマ自動車と接点を持たないのですから・・・。
謝慶齢についてもそうですね。別にわざわざ、あそこまで行数を割いてまで描写する必要があったんでしょうか。結局、(本人が意識しないままに)アラン・ウォードの謎の鍵となっていたというだけで、本人に何ほどの意味もないのですから。
一方で掘り出し物だったキャラクターは大内成行でしょうか。非常に人間味があり、苦悩する一介のサラリーマンという感じで、芝野よりもいい味を出しているようにも感じます。
今回だけの登場というのはちょっと惜しいキャラクターといえるでしょう。
次回はもうちょっとスッキリすることを望みたいですね。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★☆☆☆
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