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2009年6月

『パラドックス13』 東野圭吾

Paradox13 2009年、79冊目。東野圭吾『パラドックス13』

東野圭吾にしては珍しくSFですか。

ストーリーはまずまずなんですが、どうも根拠・設定が薄弱で最後まで違和感を持ってしまいました。

やっぱり、不思議な設定はどこかで腑に落ちないと作品の質を損なってしまいますね。

 

JAXA(宇宙航空研究開発機構)から首相に寄せられた情報は「P-13現象」と呼ばれる不可解な現象についてだった。

宇宙全体で3月13日13時13分13秒に時間が13秒だけ跳躍するというのだ。数学的に証明されるものの、何が起こるかわからないという現象を前に、パニックを防ぐという目的から緘口令が敷かれた。

ただし、この時間に(死亡)事件・事故を発生させた場合の不連続性を懸念した政府は警察などに、理由は伏せて同時間帯の警戒を呼びかけた。

警視庁捜査一課管理官久我誠哉は強盗殺人グループ検挙の指揮をとっていたが、そこへ同時間帯の捜査活動の自粛の要請連絡が入る。

しかし、先走った所轄の刑事でもある弟冬樹が逃げようとする犯人の車に飛びついた。慌てた誠哉は犯人確保の指示を出すが、狼狽した犯人の銃撃を受ける。

犯人の銃撃を受けて血を流す兄誠哉の姿を見て犯人ににじり寄る冬樹もまた銃撃を受けてしまう。

冬樹が気がつくと辺りには誰もおらず、事故った車やバイクが転々とするばかり。

誰も見当たらない街に不安を感じる冬樹はやがて一組の親子白木栄美子ミオに出会う。しかし、二人も冬樹と同様に事情が全くわからなかった。

銀座で巡りあったのは寿司屋で寿司を貪り食う太った男新藤太一

ラジオの呼びかけで他に生存者がいることを知った冬樹は三人を寿司屋に残すと、様子を探りに、呼びかけのあった「東京駅八重洲地下中央口」に向かった。

そこには兄誠哉のほか、大手建設会社のサラリーマン小峰義之、同専務戸田正勝。女子高生中原明日香、老夫婦山西繁雄春子。看護師富田菜々美の7人がいた。

ここに銀座の3人が合流し、合計11人となった。

誠哉をリーダーとして進む一行は赤ん坊の泣き声を聞く。マンションの一室に一人残された赤ん坊は勇人という名付けられていた。

相次ぐ地震により建物は倒壊し、道路は裂け、一行を取り巻く環境は刻一刻と厳しくなっていった。時間の経過とともに生鮮食料品は腐り、食べ物の補給もままならなくなっていく。

学校の体育館に避難する一行を残し、探索に出た誠哉は首相官邸で「P-13現象」の真実に辿り着いたが、これを他の人びとに伝えることはできなかった。

相対的に安全な首相官邸へ避難する途中、山西春子が転倒し、意識不明に陥る。病院もなく回復も見込めない春子の姿に、繁雄は全体利益のために春子の安楽死を選択する。

誠哉もまた新たな社会のルールの策定の必要を感じるのだった。

官邸に向かう途中で避難したホテルで、インフルエンザに苦しむヤクザ河瀬を見つけた一行は、仲間に加えるかどうかで議論になる。

加えて、河瀬のインフルエンザは山西繁雄にも感染していった。

山西を助けるべく、タミフルを求めて病院に向かった冬樹明日香だったが、途中で明日香もまた発症してしまう。明日香を抱えて立ち往生となった冬樹を助けたのは河瀬だった。

山西の死後、出発した一行は浸水した東京の街を津波を避けながら彷徨う。

総理官邸を目前に太一が地面の陥没に吸い込まれ、結局、官邸に辿り着いたのは13人中10人になっていた。

官邸について、初めて誠哉は一行に「P-13現象」について説明する。

13時13分13秒に死亡した動物は連続性が絶たれたために、このパラドックス解消の世界に残ったのだ。

元の世界に戻れるかもしれないと考えていた者たちにとって、ショックは非常に大きかった。自暴自棄に陥る人びとを前に、誠哉はこの世界で新たな社会を築くことを語るが、同調するものはなかなか現れなかった。

「P-13現象」の資料から36日後(4月18日13時13分13秒)に再度、「P-13現象」が起こることを知った小峰河瀬は、その時刻に再度死ぬことによって、元の世界に戻ることを夢見る。

正確な時間を知るために、電波時計を集める彼らだったが、どれも微妙にずれており、河瀬はその平均値を採用しようと提案する。

一方で、東京の浸水は進み、首相官邸も安全ではなくなってくる。誠哉は新たな土地を目指して出発しようと呼びかけるが、結局同調したのは白木栄美子ミオ富田菜々美勇人の4人だった。

約束の時間まで、あと2日。

誠哉たちが後にした官邸を強烈な地震が襲う。轟音とともに倒壊した官邸に閉じ込められた冬樹明日香は、瓦礫の中でそのときを待った。

しかし、地震による地盤沈下で上がった水が二人を沈めるのはそれよりも早い・・・。

 

東野圭吾によるSFという意外感だけで何とか読み終えましたが、やはり最後まで、どうも釈然としないままに終わってしまいました。

そもそもの設定自体が説明不足で、たった13人なのか、13人も、というべきなのか、「P-13現象」の起こった、その瞬間(この瞬間っていうのも、どうも微妙ですが・・・)に同時に亡くなったというのは、どうも納得感に乏しい。

突き詰めれば、10の何乗分の1かもわからない天文学的な極少の確率に合致するケースがそうそうあるわけでなし、東京の千代田区、中央区といった狭い範囲にそんな偶然が重なるとも思いにくい。

誠哉冬樹が同時にというのも何だし、同乗していたといえ小峰戸田ですら、死亡するタイミングは必ずしも同じとはいえないでしょう。

そう考え出すと、どうも基盤が脆弱で、ストーリー自体の面白さも半減です。

結末もよくわからなかったですね。

元の世界に戻ったのか、誠哉が語ったようにパラレルワールドへの復帰となったのか、これまた釈然としません。

ただ、そもそも今回の現象で取り上げられているような、極めて刹那的な意味で同時に死亡するという可能性は殆どないことを考えれば、この結末もお粗末ということになるのでしょうか。

ちょっと失敗作かもしれませんね。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★☆☆☆

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『神去なあなあ日常』 三浦しをん

Naa2 2009年、78冊目。三浦しをん『神去なあなあ日常』

三重県の田舎での、林業のある生活。

自然と、神と、人が近い生活。

横浜の実家から追い出された主人公の、そんな生活が綴られます。

 

高校卒業後、フリーターのつもりの平野勇気だったが、卒業式の日、担任の熊谷、そして母親から就職が決まったと告げられる。

国が助成金を出している『緑の雇用』制度で三重県の神去村への派遣が決まったのだ。

そのまま追い出されるように、新横浜駅から神去村へ着いた勇気を山間の駅で迎えたのはヨキ飯田予喜)という男。

森林組合の事務所で20日間の研修を受けた勇気は、ヨキに村の最奥部の「神去」地区にある中村林業株式会社に連れていかれ、”おやかた”中村清一の率いる班に組み入れられた。

メンバーは、清一ヨキ、50代の田辺巌、74歳だという矍鑠たる老人小山三郎勇気を加えて5人。

勇気ヨキの家で生活することになる。ヨキは妻みきと祖母繁ばあちゃんとの三人暮らしだった。

何もない生活と、厳しい林業の実態に逃げ出そうとする勇気だったが、慣れるにつれて、その生活が大事なものになってくる。

清一のもとへ時折訪れる妻祐子の妹直紀に憧れる勇気だったが、直紀にその気はなかった。直紀もまた清一に憧れていたのだ。

清一の息子山太の神隠し事件、花粉症発症、神去桜の花見、夏祭り、直紀への告白、と山の自然、山の神々との触れ合いのなかで、いくつかの経験を経て、秋。

”オオヤマヅミさん”の祭りを迎える。

由緒正しい祭りに際して、余所者の勇気を参加させないという雰囲気もあった。しかし、山火事に立ち向かう勇気の姿は村人をして勇気の参加を認めさせた。

祭りの当日。深夜2時にホラ貝の音が村中に響き渡った。

 

おそらくモデルとなっている村は三重県の一志郡美杉村(現在は津市に編入)。

松阪から名松線に乗った終点にある奈良県との県境の村です。

ただし、物語を面白くするためか、かなり大げさに書かれている部分はありますね。方言もどうなんでしょう。ちょっと不自然な気がしないではありません。あのあたりでも、こんな方言はなさそうな・・・。

しかし、こういっちゃなんですが、珍しい土地をモデルにしていますね。何か地縁でもあるんでしょうか。

話自体は、特に何があるというわけではありませんが、現在に残された奥深い村の生活、林業の実態を疑似体験するような話で、ほのぼのとした雰囲気を味わいつつ、知的好奇心を満足させるものになっています。

(横浜で育った少年が、そんなにすぐに田舎の生活に馴染んでしまうものか、という違和感がないではないものの、)主人公も変に優等生でなく、等身大に描かれており、非常に楽しく読めるものになっています。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『ガール・ミーツ・ガール』 誉田哲也

Girlmeets 2009年、77冊目。誉田哲也『ガール・ミーツ・ガール』

『疾風ガール』の続編。

面白かったですね。前作と比べると、ミステリ的な要素は全くありませんが、純粋に青春小説となっています。

 

宮原祐司の誘いを受け、フェイス・プロモーションに属することとなった柏木夏美は早速デビュー作『Thanks!』の録音を急がされる。専務である梶尾恒晴のツテでテレビCM出演が決まったのだ。

旭ビバレッジの『アミノスウェット』のCMに夏美が出演し、そのバックに『Thanks!』が流れる予定。

しかし、フェイスプロの音楽製作全般を担当することとなった専属プロデューサー石野克己の意見は夏美とは相容れなかった。険悪になる二人を取り持つように、梶尾の機転で有名なスタジオ系ドラマー池上”ゴンタ”淳一を参加させることで、無事録音は終了したが、夏美はソロとしての売り出しに違和感を覚え、バンドを作ることを宣言した。

そんなとき、フェイスプロにやってきたのは、映画監督の島崎潤一、妻の女優香川よう子、娘島崎ルイである。

所属事務所『アスカ企画』取締役でもある恋人秋吉ケンジとの破局から、事務所のバックアップを失ったルイの苦境を見かねた両親は、かつて香川よう子が属していたフェイスプロに相談に来たのだった。ルイも『アミノスウェット』のCMを見て夏美が気に入り、自身のバックバンドのギタリストに夏美を指名してきたのだ。

ルイのことは昔から気に入らない夏美だったが、梶尾に400万円の借金と引き換えに、この申し出を受けることとした。

夏美のもとに6年前に失踪した父親春彦から電話があったのだ。街金から借金し、生活に困窮する父親を見かねた夏美は、ルイとの共演の条件として、梶尾に借金を申し込んだのだ。

メンバーには夏美に希望があった。広告代理店白広堂の藤巻に連れられていった『ブラック・ヴェルヴェット』で偶然聴いた井場”GAKU”岳彦の演奏だった。

10年前にデビューした後、すぐに引退してしまったガクをピアノ(キーボード)に迎えたいと考えた夏美は、ルイとともに早速、御茶ノ水の『井場楽器』を訪ねる。

しかし、ガクは二人の要請に取り合わないばかりか、二人の音楽を非難する。非難の言葉に納得のいかない二人は『井場楽器』でバイトを始める。

ルイ夏美という全く異なる個性は食い違うことも多々あったが、バイトを続ける中で少しずつ馴染んでいった。また、ガクの仕事を手伝い、楽器のレンタルを通じて多くの人々に接する中で多くのことを学んでいった。

一方、祐司夏美に任せられたバンドのメンバー集めが遅々として進まない。

『アスカ企画』と契約を結ぶ『エクセル・レコード』の妨害工作で、池上”ゴンタ”淳一も渋るのだった。

大晦日に急遽、初のTV生出演が決定したルイだったが、結局ガクの協力を得ることもできず、夏美と二人で臨む。

 

前作では名前だけだった島崎ルイが登場しますが、祐司の感想から想像していた姿と対比するとちょっと期待はずれかもしれません。

勿論、夏美は相変わらずで非常に魅力的ですが。

その他、夏美の父親が登場するのですが、どうも全くのダメ親父っぷりで、なかなか感想が持ちにくいキャラクターです。今回のラストも単に恵まれただけという感じで、今後も夏美の周囲を引っ掻き回す予感はたっぷりです。

最後のコンサートではキーボード(ガク)、ベース(ジン)、ドラム(ゴンタ)も揃って、漸く夏美の念願のバンドも出来上がり。

是非、更なる続編を期待したいところです。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★★

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『用もないのに』 奥田英朗

Youmo 2009年、76冊目。奥田英朗『用もないのに』

奥田英朗のエッセイ。

アテネ五輪のときの野球観戦記『泳いで帰れ』に続く、主として野球や音楽をテーマ(?)にしたエッセイ集です。

毒舌というか、とにかく思ったことを忌憚なく、かつ皮肉もこめながら綴られる内容は、思わずニヤリとします。

北京オリンピックの野球観戦記はまぁ最近の話(とは言え、WBCが終わった後だと、もはや陳腐化してしまっているかもしれません)ですが、古いものだと2004年のエッセイもあり、ちょっと時代の流れを感じさせます。

 

【野球篇】

再び、泳いで帰れ(「スポーツ・グラフィック ナンバー」2008年9月18日号、2008年10月号)

 北京オリンピックにおける野球”星野ジャパン”観戦記 & 北京の街の活写

アット・ニューヨーク~または小説家は如何にして心配するのをやめて野球とジャズを愛するようになったか(「野生時代」2004年1月号)

 気分転換(?)にと誘われた初めてのニューヨークでヤンキースの試合を観戦。

松坂にも勝っちゃいました~楽天イーグルス地元開幕戦寒中観戦記(「オール讀物」2005年5月号)

 楽天イーグルス地元開幕戦における地元の熱気を感じつつ、寒中で観戦を続けたが・・・。

【遠足篇】

おやじフジロックに行く。しかも雨・・・・・・。(「小説すばる」2005年10月号)

 思い腰をあげ、念願だったフジロックフェスティバル(第9回)に参戦

灼熱の「愛知万博」 駆け込み行列ルポ(「週刊文春」2005年9月8日号)

 長蛇の列に、何か楽しいことがあるんじゃないかと、猜疑心から向かった先は長久手。

世界一ジェットコースター「ええじゃないか」絶叫体験記(「週刊文春」2006年10月19日号)

 年をとるごとに不可能となるであろうジェットコースター体験に、富士急ハイランドの回転数世界一の「ええじゃないか」を選んだが・・・。

四国お遍路 歩き旅(「オール讀物」2009年1月号)

 讃岐うどんの食べ歩きをエサに誘い出されたが・・・。

 

気取らず、歯に衣着せぬというか、思い切った発言で非常に心地良い。

また、年相応というか、年代が近いこともあって、”わかる”部分もあり、非常に楽しめました。

「ええじゃないか」は喜劇のような展開で、純粋に楽しめます。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『シャングリ・ラ』 池上永一

Shangrila 2009年、75冊目。池上永一『シャングリ・ラ』

とにかく、このボリュームに脱帽。

非常に読み応えのある作品。情報量が多すぎて、遅々としてページが進まない。

ただ、前半の進展のなさに挫折してしまいそうになるが、そこで止めたら勿体無い。最後のスピード感を体験するためにも、是非、最初は辛抱強く読みすすめるべき。

 

環境悪化が進む中、世界経済は従来の資本主義から炭素経済へ移行していた。国連監視のもと、炭素排出の多い国には炭素税と称する関税が付され、国家経済の死命を制するようになっていた。

50年前。炭素経済への移行の中、東京都は山手線の中心部に人工地盤を重ねた空中積層都市アトラスの構築を始め、地上の森林化計画を進めた。

しかし、東京住民の全てがアトラスへ移住できたわけではなかった。アトラスへ移転するためには高額のアトラス国債を購入するか、アトラスくじと呼ばれる宝くじに当選するしかなかった。

多くの住民は住む土地を追われ、森林の中で自身たちのコロニーを作り、アトラスに対抗する反政府ゲリラ「メタル・エイジ」を構成し、炭素排出を繰り返すなど、政府への対抗姿勢を示していた。

メタル・エイジを率いる老婆北条凪子の跡を継ぎ、本拠のコロニー”ドゥオモ”で総統の職に就いたのは凪子の養子北条國子。2年前、政府の牽制に会い、通う名門高校で逮捕され、少年院暮らしを続けてきた少女だった。

國子を実質的に育ててきたのは、かつて六本木でニューハーフパブ『熱帯魚』を営んでいたニューハーフ、モモコ

國子の出所を祝うモモコモモコのニューハーフ仲間ミーコだったが、再会も束の間、ミーコがアトラスくじに当選し、別れのときが来る。別れを惜しみつつも、ミーコはアトラスへ移住していった。

アトラス第6層「新迎賓館」の主、美邦はアトラス公社の庇護のもと多くの家臣に傅かれていた。美邦に仕える家臣らには特権が与えられていた。膠原病のため、日光を浴びることのできない美邦を支える女医博士小夜子はアトラスにおける身分”アトラスランク”を自由に上下させる権限をも与えられていた。

美邦は、美邦に嘘をつくものに死を授けるという特殊能力の持ち主であり、特権と引き換えに、その家臣は緊張を強いられる毎日だった。

アトラスへ移住したミーコは偶然、美邦と出会い、その家臣に取り立てられる。嘘をつかないミーコ美邦の信頼を得るようになっていった。

炭素経済は、実際の炭素排出とは別の概念である「経済炭素」の増減が炭素税と直結していたが、その歪みにビジネスチャンスを見た若者らがあった。

飛び級の末、通信教育でハーバードのMBAを取得したアトラスの住人石田香凛はハーバードで知り合った若きカーボニストたちと、香凛の提唱するビジネスモデルの実証に入る。

香凛は海抜ゼロメートル地帯であるタックスヘイブン、マーシャル諸島の一つに『石田ファイナンス』を設立すると、最高水準のコンピュータ(プログラム)『メデューサ』を設置した。

『メデューサ』は各地の炭素税を決定する”炭素指数”を自由に操作することが可能だった。国家の疲弊にあえぐ高炭素債務国は『メデューサ』の前にひれ伏し、香凛らに多額のマネーをもたらすのだった。

しかし、『石田ファイナンス』と同様のビジネスを行う別勢力が現れた。香凛らの仲間の一人であるはずのニューヨーク在住のセルゲイ・タルシャンが、メデューサをコピーしたプログラムを、モルジブに設置したのだ。タルシャンの真意をつかみかねる香凛だったが、これを防戦するよう動く。

また、炭素市場の混乱を警戒した日本政府は、最高性能のコンピュータの出所から、所在地であるモルジブを見つけ出すと、新たに開発された擬態装甲板で作られた空母ペルセウスをモルジブに派遣し、メデューサのコピーを消滅させる。

この人間による対抗策に学んだメデューサは気候を操作し、自身を防衛するためマーシャル諸島に台風を設置すると、攻撃を寄せ付けないようにするのだった。

メデューサの存在を知った日本政府はメデューサへの攻撃を決行するが、台風の前に徹底を余儀なくされる。加えて、英国軍艦に欺瞞していたペルセウスはメデューサの企みにより、当の英国軍艦と遭遇させられ、相打ちの末、沈められてしまう。これに乗り込んでいた乗員が全滅するなかで、乗艦していた軍人草薙国仁だけが、なぜか助けられていた。

アトラス計画とは地上と天空を循環的に繋ぐ計画だった。しかしながら、超高層建築に伴う固有振動により安定しない構造体を鎮めるためには、唯一の”帝”を選定することが不可欠だった。

アトラスの身分制度の実態は、帝への即位へのランク付けであった。現在”帝”候補とされていたアトラスランク”AAA”の3人こそ國子(太陽)、美邦(月)、草薙(大地)のだった。

月よ、天へ昇り、闇夜を照らせ

アトラスを統べるコンピューター”ゼウス”からの声(暗号鍵)を受け取った美邦だったが、既に國子もまた”ゼウス”からの声を受け取っており、即位の決定には至らない。美邦への決定に至らない”ゼウス”に焦れた小夜子は真相を探るべく、”ゼウス”にハッキングをしかけるが、逮捕されてしまう。

美邦の懇請に従って小夜子の救出を請け負ったミーコだったが、小夜子を救い出したものの、自らが捕まってしまう。加えて、アトラスの構造を呪術的に支える仕組みの源でもある巫女水蛭子に憑依され、身体を奪われてしまう。

森に侵食され”ドゥオモ”での将来が危ぶまれる中、國子を総統に戴くメタル・エイジはアトラス第5層の政府施設の制圧を狙った起死回生の攻撃を行う。空からの侵入を試みた國子だったが、アトラスの対空防御は堅く、撤退を余儀なくされる。しかし、そこを突然地上から激しい火線が襲う。

このどさくさで何とか第5層に辿り着いた國子だったが、火線の正体を知り、慄然とする。これまでも散発的に繰り返される政府とゲリラの交戦の中で見られた正体不明の攻撃の源は新種の植物だったのだ。熱源に対して、高速で種を打ち込む植物は構造材グラファイトをも侵食していた。國子は政府との争い以上に、新種植物”ダイダロス”の危険性を感じ、政府に休戦を訴える。

一方、メデューサによって”ゼウス”のハッキングを受けたアトラス公社は大株主セルゲイ・タルシャンの指示のもと、”ゼウス”の初期化を行うが、ゼウスの初期化に伴い、国防力は著しく減退。政府は首相梅宮綾子の指示のもと国防省の幹部を更迭すると、國子との休戦交渉を行う。

国際司法裁判所の仲裁人として選任されたのはタルシャンだった。タルシャンは第5層をメタル・エイジら難民に明け渡すようにとの裁定を下すのだった。

人間同士の抗争の後、メタル・エイジと草薙の指揮する政府軍は協力して、森林を焼き払い、ここに50年にわたるメタル・エイジの念願が成る。

アトラスへの攻撃の最中で養母凪子がアトラス公社の初代総裁であることを知った國子は、その裏切りに憤り、凪子を”ドゥオモ”から追放する。追放された凪子はアトラスのタルシャンと合流する。もともと「アトラス計画」は凪子タルシャンが50年前に計画したものだったのだ。

美邦を”帝”の候補者たる皇太子に擁立するよう奔走する小夜子の前に現れたのは、元総理大臣鳴瀬慶一郎の孫涼子。学生時代から小夜子の前に現れ、小夜子を虐げる涼子は万能の天才だった。涼子小夜子を虐げることに喜びを感じていたのだ。

涼子小夜子の邪魔をする過程で、アトラス計画の真相を知ると、自身が帝となるべく動き始めるのだった。

アトラス計画の真相を知ることになった國子草薙だったが、ともに”帝”への関心は薄かった。しかし、難民を救うべく國子は即位を目指し、アトラス公社へ向かった。

また、美邦のために小夜子が、そして自身が即位するという夢をみて涼子も第四の神器”天の沼矛”の争奪戦が始まる。

一旦は國子の手により破壊されたメデューサだったが、一部残った機能を使って国連にハッキングすると、国連管理となっていた核兵器を東京などの主要都市に照準を合わせた。

一方、帝即位を間近に控え、アトラス計画の完遂を確信した凪子は、ゼウスに宿らせた擬似人格である神武天皇の排除を目論むが、既にそれを見切っていたゼウス(神武天皇)の逆転にあい、タルシャンとともに幽閉されてしまう。

木乃伊を復活させたゼウス(神武天皇)は皇太子として天の沼矛を携えた美邦を排除しようとする。そこへ駆けつけたのは、核兵器の発射を止めるべく、急行した國子だった。

 

スピード感が前半と後半で全く違います。

物語の背景説明に膨大な情報量を費やす前半は、物語の展開も緩やかで、新世界案内といった感じです。

一方で、後半は次から次へとイベントは起こるは、秘密が次々と明かされていくは、で、とにかくめまぐるしい。

キャラクターでいえば、モモコ武彦などのように前半登場のキャラクターはあくまで前半だけのキャラクターで、後半になるとどうも失速してしまうような印象です。

また、長丁場ということもあってか、少しずつキャラクターの描写が変わってきます。特に小夜子がそうですね。前半では全くの敵役というか、悪の権化的な扱いですが、後半は母性の強い女性の印象が極めて強くなっています。これは後半から登場する涼子の毒々しいまでの悪役ぶりとの対比を強調するためなのかもしれませんが・・・。

なぜ神武天皇が女性?とか、いろいろ不思議な点もありましたが、一番不思議に思ったのは美邦の特殊能力。あれって、何なんでしょう。最後まで特に解説もなく、どうもよくわかりませんでした。

もうひとつ、理解できなかったのは、メデューサが行う炭素を減らす仕組み。ちゃんと説明はされているんですが、どうも理解できません。

そうだ。あと、もうひとつ。メデューサが意識していたのは、仮想海面水位であるはずなのに、ラストで堤防の閘門を開けたところが、どうも釈然としませんでした。

どうもこれだけ長いと、いろいろわからないところが出てくるものです。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『少年少女飛行倶楽部』 加納朋子

Syonensyojo 2009年、74冊目。加納朋子『少年少女飛行倶楽部』

うーん、ちょっとタイトル負けの内容。

「飛行クラブ」を巡る青春小説なんですが、どうも中身が薄い。

中学に入学した主人公が親友に誘われるようにして、正体不明の「飛行クラブ」に属することになり、(不平たらたら)無気力な部員らを引っ張りながら、熱気球による飛行を成し遂げるまでの話です。

 

中学1年の佐田海月(くーちゃん)は幼なじみの大森樹絵里(ジュジュ)にひきづられるように、謎のクラブ「飛行クラブ」に入部することになる。

”空を飛ぶことを目的とする”という、不可思議なクラブはまだ部としては認定されていなかった。

なにしろ、部員といえば、とにかく偉そうで何もしない部長斎藤神(カミサマ)と、斎藤の近所の同級生中村海星(野球部と兼部)の二人だけ。

5人揃わないと部にならないため、内申書のため仕方なく海月は部員探しに奔走する。

見つけたのは、入学直前に自殺未遂を起こしたと噂される少女仲居朋(るなるな)。

高所平気症のは変人の”カミサマ”部長にも臆せず、入部に同意する。

また、野球嫌いの野球部1年餅田球児中村は飛行クラブへ誘う。

こうして部員は5人揃ったが、顧問となった立木信長は全くやるきがない。新年度に入ってからの部活動に予算はつかず、海月たちは資金もなしに部活動を始めることとなる。

しかし、金もなく、部活動の方針もたたない中、部長の斎藤は不平をならすだけで、自身では何をするでもない。

見かねた海月は子ども向けに実施されるトランポリン教室に参加させるなど、斎藤にかわって部を引っ張る。

職場体験で派遣された先(スーパー星川)で熱気球を発見した海月は、店主星川に借用を願い出る。何とか借り受けることに成功した海月だったが、飛ばすためには球皮の修繕が必要だった。

アルバイト禁止の彼らは夏休みを利用しての古本回収や小動物の預かり等で、小金を貯めると、気球の修理にあてるのだった。

人のネガティブ情報を好んで探し回り吹聴する問題児戸倉良子(イライザ)も入部するなど、問題山積の飛行部だったが、文化祭でのテイク・オフを目指す海月だった。

しかし、顧問の立木は熱気球の話を聞くと目を剥き、猛反対する。何かあった際に立木の責任問題になるからだ。これに猛烈に反論する海月の剣幕に慄き、良子の囁く脅迫めいた言葉に、一旦は引き下がった立木だったが、星川に中止を要請することは容易に想像できた。

先手を打って星川に談判する海月たちのもとに、立木が現れた。立木の言葉にうなずく星川だったが・・・。

 

「飛行クラブ」という正体不明のクラブ名は『屋上ミサイル』の屋上部を彷彿とさせますが、どうもうまく調理できていない印象です。

屋上部と比較すると、やはり「飛行」ということで(作品中では範疇が定まらないことが連呼されていますが)それなりに活動が限定されてしまいますし、どうも活動へ至る道のりがどうも迂遠です。

キャラクターもどうもぱっとしない。主人公の海月こそ描写は細やかですが、変人の部長は単に極度に内向的な性格にしか見えず、その魅力がどうも伝わりません。極度のシスコンで、どうもひいてしまうような設定です。

友人の樹絵里にしても、(樹絵里はちょっとシリアスな部分もありますが)単なる変人の域を出ておらず、なかなかまとまりがありません。

他のキャラクターについても同様で、どうも薄っぺらい感じは否めません。

ストーリーが秀逸かといえば、必ずしもそうとはいえず、ラストも無理矢理盛り上げようという意図が見え見えで、ちょっと興を削がれてしまいます。だからといって、何も事件もなしに終わるには、ちょっとツライ展開ではありますが・・・。

お奨め度:★★☆☆☆

再読推奨:☆☆☆☆

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『バイアウト (上・下)』 真山仁

Buyout1Buyout2 2009年、72冊目・73冊目。真山仁『バイアウト (上・下)』

『ハゲタカ』の続刊。

今回は鐘紡の買収劇をモデルにした話と、海外有力投資ファンドとの攻防を巡る話の二本立て。

隠蔽されていた三葉銀行、政財界の不正を暴いたことで日本にいられなくなった鷲津が、日本を離れて放浪するところから始まります。

 

1年の海外放浪を追え帰国した鷲津を迎えたのは、鷲津の後任社長であるアラン・ウォードの死の知らせだった。

アランの死には不審な点が多く、自身の身代わりとなって殺されたのではないかと気に病む鷲津だった。

アランの後任としてアメリカから送り込まれたピーター・マイスキーは日本の流儀を無視し、次々と国内の布石を潰していっていた。

その余波は松平貴子のミカドホテルをも襲った。鷲津の仲介で、ミカドホテルの株式の75%を有するふるさとファンドが、ホライズン・キャピタルとの繋がりを無視し、ゴールドバーグ・コールズにミカド株を売却してしまったのだ。

日本へ戻った鷲津アランが手がけていた鈴紡の企業再生案件に乗り出す。

UTB銀行頭取となっていた飯島は、アルコール中毒で入院中の妻亜希子のもとに通う芝野を呼びつけると、鈴紡の名誉顧問岩田春雄に引き合わせると、鈴紡のCRO(最高事業再構築責任者)に就任させるのだった。

不良債権の処理のため、鈴紡の化粧品部門を月華に売却しようと画策するUTBコーポレート銀行だったが、鈴紡の中では意見が錯綜していた。月華への売却を支持するメインバンクUTB出身者らに対し、社長らによるMBOを狙うアイアン・オックス陣営、そして化粧品事業担当役員らによるMBOを狙うホライズン・キャピタル陣営である。

月華買収案が優位となるなかではあったが、組合・販売店会の支援を受けたホライズン勢が盛り返す。鷲津に対してはある種の思いを抱く芝野ではあったが、CROの責務として、UTBの影を排するべく、化粧品事業をホライズンに委ねるとともに、残った部分の民事再生法適用を画策する。

しかし、鈴紡の破綻はUTB破綻の引き金にもなりかねないと考えたUTBは、第2の産業蘇生機構であるニッポン・ルネッサンス機構(NRO)への救済に持ち込んでしまう。

歯噛みをする鷲津芝野だったが、如何ともすることはできなかった。

曙電機は老舗の総合電機メーカーではあったが、業績悪化のなかリストラクチャリングが急務。芝野もまたCROとして招聘され、再生に意欲的な諸星恒平社長のもと、再生作業に向かおうとする矢先、ゴールドバーグ・コールズよりベア・ハッグを仕掛けられる。

GCの背後には政府にもパイプを持つ世界最大の軍産ファンド、プラザ・グループの姿があった。曙電機の持つミリ波の技術を欲したプラザは、曙電機の特機部を買収しようとしたのだ。

悩んだ末、芝野鷲津に相談する。

鷲津芝野とともにNROの総裁に就いていた飯島を脅迫にも似た話法で、NROに特機部門を買い上げさせることに成功する。勿論、こっそりと商業価値の高いミリ波の技術などを他部に移して・・・。

煮え湯を飲まされたプラザ・グループが黙っているはずもない。KKLに圧力をかけると、鷲津をホライズン・キャピタルから解雇する。また、病院から一時自宅に戻っていた芝野の妻亜希子に酒を送りつけ、アルコール中毒の再発へ誘った。

諸星を叱咤激励しつつ、曙電機の再生に向けて取り組む芝野だったが、曙電機のテレビ事業を欲していたシャイン社長滝本誠一郎と組み、再度プラザ・グループは曙電機のTOBを狙う。

一方、曙電機買収失敗の煽りを食らってGCを解雇されたリン・ハットフォード鷲津を慕う人びととともに、鷲津に再戦を促した。鷲津を代表として、新たに組成されたファンド、「サムライ・キャピタル」もまた、曙電機のTOBを狙うのだった。

資金力、政治力に優れたプラザの前に窮地に陥る曙電機を前に、芝野鷲津は手を組み、これに立ち向かうのだった。

 

今回、ホライズン・キャピタル会長という肩書きを捨てることで、「ハゲタカ」と巷間揶揄される強欲外資の枠から外れることで、何となく行動と肩書きが近づいた感のある鷲津です。そのわりには、現在は改題されて『ハゲタカ2』というそうですが・・・。

結局のところラストは鷲津芝野の共闘にも近い形になっており、鷲津がマスコミに触れたように、「日本対アメリカ(外資)」というわかりやすい構造になって、読みやすくなっています。

しかし、あまりにも単純化されてしまって、逆に物語の厚みが薄くなってしまったような気がしてなりません。

キャラクターでは松平貴子がまたしても登場ですが、前作に比して更に印象が薄く、そもそも出て来る意味が不明。結局役に立ったのは、ラストでアランと付き合っていた女性の素性を鷲津に明かしたことくらいでしょうか。

アランの謎の死から始まった物語ですが、結局のところ最後まで真相は謎のまま終わってしまいました。次巻以降に期待です。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『ZOKURANGER』 森博嗣

Zokuranger 2009年、71冊目。森博嗣『ZOKURANGER』

Zシリーズの3巻目。毎回思うんですが、これ何なんでしょう。面白さがよくわからないんですが・・・。

人物名、性格設定は同じなんですが、毎回環境が異なっていて・・・。

前作までは善と悪という二陣営の抗争?とでもいうような外枠があったんですが、今回は戦隊ヒーローものをモデルとした、不可思議な変人サークルといったノリですね。

 

Part1 Yellow disloyality 第1話「黄色の背信」

10年以上勤めた研究所を辞め、大学の准教授となったロミ・品川は研究環境改善委員会の委員に任命される。

委員長木曽川大安の下、揖斐純弥准教授、バーブ・斉藤准教授、ケン・十河助教、永良野乃助教で構成される委員会。初めて参加した品川には、なぜか黄色いヘルメットとユニフォームの配給があった。

何に使うかわからないユニフォームに戸惑う品川だったが・・・。

 

Part2 Pink excitation 第2話「桃色の励起」

男嫌いの永良野乃木曽川の指示のもと、ユニフォームを着せるため品川のもとに向かった。

 

Part3 Blue idleness 第3話「青色の有閑」

RPGがマイブームのケン・十河の頭のなかでは永良野乃がパートナーであることは決定事項。木曽川の指示と称して、ユニフォーム姿の写真をとるよう野乃を誘い出すのだが・・・。

 

Part4 Green persona 第4話「緑色の位格」

バーブ・斉藤は未来を予測することができた。

新しい司書の庄内承子はそれを信じるが、品川は鼻先で嗤う。

 

Part5 Red investigation 第5話「赤色の研究」

選ばれた5人に何か理由があるのではないかと考えた品川揖斐に問い質す。

特殊能力を問われた揖斐は、おもむろにテーブルに手をかざすと、手も触れずにテーブルを持ち上げるのだった。

 

いつか面白さがわかると信じてついてきたシリーズですが、そろそろ限界かもしれません。

各キャラクターの内心の突飛さや非常識さが、面白さの源泉かもしれませんが、ちょっと逝ってしまっているので、なかなかツライですね。

お奨め度:☆☆☆☆

再読推奨:☆☆☆☆☆

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『スイッチを押すとき』 山田悠介

Switch 2009年、70冊目。山田悠介『スイッチを押すとき』

先日読んだ『モニタールーム』に先んじる話です。

またもや、山田悠介らしい、とにかく不思議な設定です。

なぜ、自殺する少年たちの心理を探るために、YSCプロジェクトが実施されるのか、全く説明がなく、納得感に乏しい。

そもそも、世論で多少の批判があるというレベルの話ではなく、こんなプロジェクトが公の場で法案として通過するはずもない。人権無視で国際社会から批判を浴びるのは必至の内容で、とにかく現実感に乏しい。『リアル鬼ごっこ』のように独裁社会であって、はじめて現実味を帯びる設定なんでしょう。

いかに奇想天外な話にしようという場合でも、やはり一定の納得感は不可欠ではないでしょうか。

 

2008年、若年齢層の自殺者増加を受けて、政府は通称YSC(Youth Suicide Control)と呼ばれる青少年自殺抑制プロジェクトを立ち上げた。その内容は、青少年の深層心理解明のため、全国から無作為に選出された子どもを高ストレス環境におき、その精神構造を解明するというもの。無作為抽出された子どもは5歳で心臓に手術を施され、10歳で収容される。子どもらには真ん中に赤いスイッチのついた機械が渡される。スイッチを押せば、それで心臓は停止する・・・。

2030年。監視員南洋平(27)は本部長堺信秀から横浜の施設に異動することを命じられる。

横浜の施設は特殊だった。本来、収容してからわずかの期間に死に絶えてしまうはずの収容者であったが、ここでは既に収容から7年を経過した者が4人残っていた。

高宮真沙美新庄亮太小暮君明池田了の4人。

真沙美を除く3人はそれぞれ、収容前の約束を果たすため、生きる希望を捨てずにやってきた。真沙美もまた他の3人に励まされるように、7年間生き抜いてきた。

車椅子の君明に親身に接するの姿に、徐々に心を許すようになった池田了は自身と同じく平塚センターに収容されている矢田遥への伝言をに言付ける。

4人に同情するは平塚に赴き、の消息を探るとともに、センターの監視員に宛ての手紙を託すのだった。

と同時期に平塚に収容されたもまた生き続けていた。しかし、がそれを知り安心したのも束の間、母親の死を契機にはスイッチを押してしまう。それを知ったもまたスイッチを押す。

自身を責めるは残りの3人を救い出すことを決意する。

警備員らを排除し、3人を連れて逃げ出したを警察らは執拗に追い詰める。

一時、人里を離れて潜伏したものの、一向に捜査の手は緩まない。

約束を果たしたいと考える君明亮太は危険を顧みず、家族のもとへ向かうのだった。

願いは叶ったが・・・。

二人と別れ、身寄りのない真沙美を連れてが向かったのは、真沙美の育った養護施設。

園長から、(真沙美を捨てた)母親の手紙を見せられた真沙美は・・・。

その頃、らはらの足取りを捕捉して部下に尾行させるとともに、真沙美の母笹本真琴に面会し、同道を促していた。

 

登場時間は短いながらも、生き続ける4人の存在感は比較的鮮明であるものの、主人公たる南洋平のインパクトが希薄。

ラストで明かされる真沙美との関係や、素性を秘匿するために、伏せられた部分が多くなっているので、どうも人物像がぼんやりしてしまっています。

また、敵役である堺信秀にしたところで、ラストで執着の理由が明らかにされますが、それでも今ひとつ、その考え方がわかりにくいところがあります。このYSCについて肯定的でなければ、こういったへの仕打ちはないわけですが、そのあたりの説明がないため、単なる”敵役”としての無機質な装置以上の興趣を誘いません。

結局のところ、ストーリーにも無理があり、主人公の描写も曖昧となっており、ちょっとツライ作品といえるでしょう。

お奨め度:☆☆☆☆

再読推奨:☆☆☆☆☆

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『ハゲタカ (上・下)』 真山仁

Hagetaka1Hagetaka2 2009年、68冊目・69冊目。真山仁『ハゲタカ (上・下)』

M&Aに絡む”ハゲタカ”外資の話ではありますが、よくある「外資=悪者」論に組みする話ではありません。

確かに、強欲に利益を収奪するような場面も多く見られますが、むしろバブル崩壊後の日本の危機にリスクマネーを投入した”救い主”的な評価を高くする作品になっています。

タイトルからは、外資の嫌らしさが漂う話かと思いましたが、必ずしもそういう感じではありません。

 

1989年12月、大蔵省で腹をかっさばいた男があった。大阪の大手繊維卸販売「ワープ・ジャパン」社長花井淳平(51)である。

ニューヨークでジャズ・ピアニストを目指す鷲津政彦だったが、生活費を稼ぐためにはじめたハゲタカ・ファンドのビジネスにおいて頭角を現わし、「バイアウトの神様」とも言われるアルバート・クラリスに見込まれ、ピアノから足を洗って、本格的にビジネスに加わることを誘われていた。ピアノの道を諦めきれない鷲津だったが、花井の凄惨な最期を知ると、誘いに応じるのだった。

1997年、アメリカで名を馳せた買収ファンドの雄KKLの日本法人ホライズン・キャピタルの社長となった鷲津は、メガバンク三葉銀行のバルクセールを手がけていた。

三葉銀行でバルクセールを担当するのは総合企画部内に設けられた不良債権処理チーム資産流動化開発室の芝野健夫だった。

三葉のFAを務める米国投資銀行ゴールドバーグ・コールズだったが、日本では利益相反が問われないことに胡坐をかき、担当のリン・ハットフォード鷲津とともに案件を買い叩くのだった。

三葉の経営陣はバルクセールの中に公にできない案件を多数放り込んでおり、鷲津の思うがままに跳梁を許すこととなる。芝野は切歯扼腕するが、如何ともしがたい。

灰色の案件の処分に味を占めた経営は更にバルクセールを行うよう芝野に求める。鷲津リンの横暴を止めようと努める芝野だったが、鷲津らの動きはその上を行った。不本意なバルクセールを鷲津とこなしたあと、上司飯島亮介から告げられた異動を蹴った芝野は友人瀬戸山の誘いに応じて、瀬戸山が社長を務める栃木県のスーパー「えびす屋」再建のために乗り出した。

日光の名門ホテルであるミカドホテルもまた業績悪化に苦しんでいた。顧客、社員を顧みない社長(オーナー)の経営方針に辟易していた娘松平貴子はローザンヌホテル大学で学んだ後もミカドホテルに戻らず、東京のロイヤル・センチュリーホテルで働いていた。父、祖母らの招請にも応じなかった貴子ではあったが、ホテル破綻を目前にするや旧弊を廃するかのように半ばクーデターのように社長ら旧経営陣を一掃して社長に就いた。

2001年。「10年で必ず、日本をバイアウトする」と豪語する鷲津はバルクセールに続いて、東京相愛銀行を買収する。これをテコに次に、鷲津が狙ったのは「ハニーコーン」で有名な菓子メーカー太陽製菓。

乱脈経営を繰り返し、会社を私物化する経営陣の抵抗にあいながらも、鷲津らは太陽製菓獲得に成功する。

2003年。栃木の地銀足助銀行が破綻する。

えびす屋の再建で名を挙げていた芝野は足助銀行の社外取締役に招聘される。一方、地銀の重要性を認識していた鷲津は足助銀行の受け皿に名乗りを挙げる。

貴子の奮闘で再建の目途が見えてきていたミカドホテルだったが、メインバンクである足助銀行の破綻により、危機に陥る。

 

案件(ディール)が複数出てくることで、話がいくつかのパーツに分かれ、小気味よく進みますが、同じようなリズムになってしまうので、ちょっと飽きが来ないでもありません。

鷲津の父花井の死の真相に、飯島芝野が絡むということで、この3人の関係性を高めようという意図はわからないではないのですが、ちょっと蛇足の感があります。もっとシンプルでも良かったんじゃないでしょうか。

また、同様に松平貴子についても、この作品において焦点を置かれるキャラクターではありますが、いなくても十分作品としては成立しますし、ちょっと中途半端な位置づけでした。

主要登場人物である鷲津芝野については、一応は対立関係という構造をとろうとしているのかもしれませんが、必ずしもそんな単純な関係ではありませんし、ましてや飯島においてをや、といった感じでしょうか。

現実の世界と同様に、簡単には割り切れない関係性のなかでストーリーが進むので、単純明快さからは程遠いものの、逆にそれが話を現実感の漂うものにしています。

ただし、東鳩をモデルとしたような各種の案件紹介や人物の環境設定の説明に力点をおくあまり、主要キャラクターについて深みが足りないのが玉に瑕かもしれません。

次巻『バイアウト』で、もうちょっとキャラクターが見えてくることに期待しましょう。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『極北クレイマー』 海堂尊

Kyokuhoku 2009年、67冊目。海堂尊『極北クレイマー』

東城大学から離れていますが、田口・白鳥シリーズと密接につながった作品になっています。

『ジーン・ワルツ』『イノセントゲリラの祝祭』で取り上げられている三枝医師逮捕の話です。

田口白鳥は登場しませんが、”氷姫”姫宮が登場しています。

 

極北大学から極北市民病院に赴任した今中良夫は戸惑う。外科部長とは名ばかりの非常勤扱い。

人口10万の北海道極北市は地場産業に乏しく、そこで狙った観光でのテコ入れにも失敗し、駅前の「ファーノース・ホテル」やスキー場、「北の大地の遊園地」などを抱え、財政は逼迫していた。

赤字を続ける極北市民病院もまた極北市からは冷遇される。院長の室町は病院を節約して運営しようとする一方で、市からの助成も取り付けるとともに、病院の改善を図ろうと躍起になるが、殆ど誰も協力しようとはしない。

市から送り込まれた事務長平松は市役所市民安全課加藤寅雄(課長)とともに、病院での経費支出を絞り込む。

そんな環境下にあっては看護師らの勤労意欲も低い。

一方で、一人病院を支える良心があった。産婦人科の三枝久広である。一人真面目に外来を見続け、市民らの信頼も厚い。これに気の強い看護師並木が従う。

不平は数あれど、何とかできる範囲で仕事を始めた今中だったが、室町院長は今中を「病院環境改善検討委員会委員長」「リスクマネジメント委員会委員長」に任命する。

今中三枝が経験した異常妊娠に伴う事件を室町から知らされる。あくまで不幸な事故でしかなく、遺族からも声はあがってはいなかったが、これを契機とみた組織があった。

警察庁刑事局新領域捜査創生室室長”無声狂犬”斑鳩芳正が指嗾するなか、極北市監察医務院の”土蜘蛛”南雲忠義(院長)から情報を得た医療ジャーナリスト西園寺さやかは、遺族である消防士広崎宏明に声をかけて、医療事故として訴えを起こさせようとする。

そんな不穏な雰囲気の中、極北市民病院に皮膚科の医師として着任したのは姫宮香織である。「天然」の姫宮の挙措に誰もが翻弄されつつも、病院は少しずつ改善される。

しかし、姫宮の使命は病院に「医療事故調査委員会」を立ち上げさせることだった。渋る室町今中だったが、脅しにも似た言動で、姫宮室町に委員会の設置を約束させると、病院を去っていった。しかし、三枝を慮って、事故調査委員会の日程がなかなか決まらない。

一方、病院の改善を図るべく、室町院長は日本医療業務機能評価機構の評価を受けようと言い出す。これで高い格付けが取れれば良し、そうでなくともそれを契機に病院の改善を図ろうと狙ったのだ。

しかし、評価機構から送り込まれたサーベイヤー武田多聞布崎夕奈は傲慢な態度で裁量権を振りかざすだけ。評価に実質的な益は見当たらない。一方、コストだけは莫大に要することは明白で、平松らに泣きつかれた今中は彼らを早々に追い出してしまう。

西園寺さやか広崎に告訴を焚きつけながら、一方で広崎に黙って、広崎の名前で病院と市役所にそれぞれ損害賠償の訴えを起こすことを通知する文書を送りつける。病院は不幸な事故であることを一貫して主張するが、問題を大きくしたくない市役所は秘かにこれを解決しようと動いた。

市役所は病院に無断で、三枝の事件は医療事故であることを認める報告書をでっちあげ、広崎に示談金を握らせようとしたのだ。

西園寺は中央への復権を目指す極北署の木村署長を焚きつけると極北地検の漆間検事正にも働きかけ、三枝の事件を刑事事件として立件させ、三枝逮捕に導く。

三枝と同期の友人、帝華大医学部産婦人科学教室准教授清川吾郎はこの暴挙に憤り、上司の屋敷教授を動かし、日本産婦人科学会の宣言を引き出す。

病院の良心である三枝の逮捕により閑古鳥の鳴くようになった病院に乗り込んできた福山市長は職員を集めると、病院の閉院を告げる。市役所からの出向でありながら、自身の雇用が守られないことを知った平松はこれに福山市長に叛旗を翻す。

市の不正を暴き立てる平松の言葉に激した福山市長は突然の心筋梗塞で倒れ、福山の息子でもある、病院の不良研修医後藤継夫が看取るなか、亡くなってしまう。

福山市長の死後、閉院が有耶無耶となった病院は正常業務に戻ったが、そこを新たに激震が襲う。極北市が財政再建団体に指定されたのだ。

室町院長は一足先に評価機構の武田多聞をたよって病院を去る。今や院長代理となった今中にも極北大から帰還命令が下るが、今中は病院に残ることを決意し、極北救命救急センターのセンター長代理速水と連携をとり、病院の運営を継続した。

そこへ極北市民病院の新院長としてやってきたのは、病院再建の専門家と評される男、世良雅志である。

 

やっぱり西園寺さやかの正体って桜宮小百合ってことでいいんでしょうか。

また、何だか軽くなって登場した世良雅志ですが、あの真面目だった世良がこんなにかわってしまうなんて、何が彼の身の上にあったんでしょうか。花房を奪った速水とも再会するのでしょうし、極北でもまだ一波乱も二波乱もありそうです。本体の東城大学の話よりも、何だか期待したくなってしまいます。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『モニタールーム』 山田悠介

Monitor 2009年、66冊目。山田悠介『モニタールーム』

”らしい”といえば”らしい”んでしょうか、山田悠介らしい、兎に角、救いのない作品です。

『リアル鬼ごっこ』と同様に、時間の制約というもので危機感を煽るという手法をとりますが、結局それだけが興趣を呼ぶ仕掛けなのかもしれません。

”奇想天外”というと聞こえがいいですが、正確にいえば設定自体に説得力がなく、どうも落ち着きが悪いなか、話が進んでいきます。

 

徳井正也(22)は東京都八王子にある高尾刑務所の看守として雇われる。

しかし、徳井の仕事は通常の看守とは異なった特殊なもの(観察員)だった。

モニタールームでモニターを眺め、一人の受刑者への食事の世話等をするだけというもの。

モニタールームに映るのは、ミン(地雷)村と呼ばれる四方を地雷で囲まれた5人だけの村の生活。

アリサダイチヒカルゲンキという4人の少年少女(14)とセイおじさんの5人が暮らす生活は、ヘリコプターで運ばれる物資でなりたっていたが、物心つく前からそこで暮らす4人はこの異常な生活を普通のことと考えていた。

これは徳井が監視する受刑者豊田聖子(44)への実験的な刑罰であった。青少年自殺抑制プロジェクト”YSCプロジェクト”に次いで発案され、秘密裡に行われている刑罰である。

15年前、交際相手をバラバラにして遺棄した豊田を捕捉した政府は、豊田の娘が生まれる前に、この刑罰を制定して地雷村を作り、豊田の娘(アリサ)が生まれるやミン村に送り込んだのだ。刑務所の中で、豊田は地雷に囲まれた危険極まりない村でのの身を案じる日々を強いられていた。

この非人道的な刑に憤りを覚えて看守長秋本を問い質す徳井だったが、秋本は相手にしない。

しかし、豊田の刑期は15年。間もなく刑期は終わる。

刑期満了まで、あとわずかというところで、悪魔的な行動がとられる。

15歳の誕生日を迎えたアリサたちに、セイおじさんが与えたプレゼントは「真実」だった。世界は広く、豊かで、アリサらにも親という存在があることが告げられる。

ミン村での生活に満足していた4人だったが、真実を知ってしまえば、その生活も色褪せて見え、本当の世界に戻ることを熱望する。

そんな4人にセイおじさんは地雷探知機等を与え、地雷を少しずつ除去していけば、5日程で街に辿りつくことを明かした。

セイおじさんを残し、地雷地帯に恐る恐る踏み込む4人だったが、地雷の除去には時間がかかり、精神的にも困憊の度を深めていく。

豊田アリサの行動に身もだえし、徳井もまた4人の行動に危惧を感じ、4人を即刻救うよう秋本に詰め寄るのだが、秋本は一向に相手にしない。

この秋本の態度にも、政府の対応にも、それをモニターするしかない自分にも我慢できない徳井だったが、この仕事は辞められなかった。植物状態となってしまった妹一美の入院費用を賄うため、月給100万円という高待遇を捨てることはできなかったのだ。

徳井以上に、アリサの行動に気を揉んでいたのは豊田である。しかし、豊田にも何もすることはできず、憔悴していくだけだった。

4人は地雷を除去し、着実に歩を進めていったが、食料が足らなくなってくる。北に5日かかると告げたわりには、セイおじさんのもたせてくれた食料はそれを下回るものだったのだ。

食糧不足からセイおじさんへの疑心が高まり、疲労が蓄積する中にあっても励ましあって進む4人だったが、5日たっても街は姿形も見えず、地雷がなくなることもなかった。

そして、犬を追ったヒカルが、疲労から錯乱したゲンキが、地雷を踏んでふっとんでしまう。

最後に残ったアリサダイチだったが、精神的に追い詰められたダイチは精神の平衡を失い、徐々に荒々しくなっていった。

出発して9日目。絶望したダイチアリサに襲いかかるが、その矢先、地雷を踏み、死んでしまう。

その翌日、豊田の刑期が満了した。

アリサのいるというクダウという国へ赴くため、付設のヘリポートに向かった豊田だったが、その豊田を呼びとめた娘があった。

お前が豊田聖子か

お前のせいで私の人生は不幸になったんだ

15~16歳くらいのその娘にナイフで心臓を刺し貫かれた豊田は絶命する。

 

どうも設定自体に説得力がなく、話全体の落ち着きが悪い。

キャラクター自体にも魅力が乏しく、結局のところ「時間との戦い」という仕掛けだけで読ませる(それで読むしかない)作品になってしまっています。

設定に説明力がなくていいなら、何でもありですが、せめて、そこを割り切るのであれば、もうちょっと救いのある話であって欲しかったですね。

ラストのYSC東日本統括本部長堺信秀とか南洋平についても、あまりにも唐突すぎてわからないですね。

『スイッチを押すとき』を読んでいないと、このラストは意味をなしません。結局、『スイッチを押すとき』の事件以降の、監視員のなり手を選抜する仕組みの一つとして、今回の作為があったという了解をすればよいのでしょうか。

お奨め度:☆☆☆☆

再読推奨:☆☆☆☆☆

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