『胡蝶の失くし物』 仁木英之
2009年、58冊目。仁木英之『胡蝶の失くし物』
僕僕先生シリーズ第3弾です。
新キャラクター劉欣が登場しますね。途中から旅の道連れになるのは劉欣だけではありません。蚕嬢という蚕も蒼梧から同行することになります。
出だしが、いきなり皇子の暗殺からですから、ちょっと殺伐としていますが、全体のトーンは僕僕先生と王弁の関係のような緩い感じとなっています。
職業兇徒(闇に囚われた者)
御史台察院で暗殺を請け負う胡蝶房に属する劉欣が皇子李敏暗殺のあと命じられたのは、「光州仙居県黄土山から失踪した仙人の始末」である。
淮南の寿州に捨てられた孤児であった劉欣は、申州郊外に住む富農、子のない劉徳夫妻に拾われ、育てられた。
劉欣は桂州の始安まで南下していた僕僕先生に迫る。
始安に入った僕僕先生らは街中の人びとが下痢で苦しんでいるのを知ると、早速治療に取り掛かり、大変な評判となっていた。
そんな僕僕先生らを吹き矢で狙った劉欣は、突然母から貰った護符にヒビが入ったことで胸騒ぎを覚える。暗殺を一旦とりやめた劉欣は、両親のもとへ戻るが、母は始安で流行っているのと同じ下痢に苦しみ、虫の息だった。
劉欣は再度始安にとって返すと、僕僕先生に薬を求めるが、暗殺の企てに気づいていた僕僕先生は劉欣に簡単に薬は渡すことはなかった。
「この薬には術がかけてある。私たちが死ねば効力を失い、薬を服用した者も死ぬ。」
相思双流(せっかちな女神)
桂州城内を南に流れる漓江沿いに南下を続けた僕僕先生たち。
相思水という川の分岐点を示す石碑の上に腰かけ、恋しい賈震のことを考えていた薄妃の腰の下から声がする。
「とっととそのおっきなお尻をどけるのじゃ。じゃないと天罰を加えるぞよっ」
石碑から顔を現わした少女は相思水の女神劫鰓と名乗った。
劫鰓は薄妃の素性を見抜くと、僕僕先生に代わって薄妃に気を吹き入れることを提案する。僕僕先生が、なぜか”きっちりした”気を吹き入れていないから、毎日気を入れなおさなければならなくなるのだと劫鰓は言うのだ。
劫鰓に気を入れられた薄妃は醴陵に向かって飛ぶが、醴陵の直前で眩暈を覚えて墜落してしまう。
帰ってきた薄妃に驚きもせず、劫鰓は再度気を吹き入れる。しかし、またしても同じ場所で眩暈から墜落する薄妃だった。
同じく墜落したのはとある寺院。そこは扁額も掲げない退魔の寺だった。
寺で保護する李双に妄執を持つ妖魔を退治すべく待ち構えた僧は、薄妃を焼き尽くそうとする。
僕僕先生に助けられた薄妃は李双と劫鰓の因縁を聞く。
主従顚倒(夢に笑えば)
賀州の臨賀城に入った僕僕先生一行だったが、路銀が尽きてきた。そんなことは気にしない僕僕先生だったが、普通の旅がしたいと願う王弁は働き場所を探していた。
そんなとき出会ったのは、かつて衡山で出会った薬種屋兄妹の弟蔣実。なぜか旅商人の用心棒をしている蔣実は記憶をなくし、李武と名乗っていた。
旅商人李馬太は李武の知人ということで、王弁を臨賀城内の薬種屋周典に紹介する。
周典は王弁が”通真先生”であることを知ると、自身の病を治して欲しいと訴えた。
眠ると夢のなかで使用人として働かされるのだという。
僕僕先生の用意した薬で、周典の夢に入り込んだ王弁だったが、そこは周典の店の使用人趙呂が主人となり、周典が使用人となっている世界だった。
天蚕教主(惑う殺し屋)
臨賀を離れ、更に南下を続ける僕僕先生たちの前に現れたのは、数人の官吏と20人ほどの兵士。
彼らは僕僕先生たちを丁重にもてなしながら、梧州蒼梧に案内する。
城内での酒席で妖艶な女性の姿になった僕僕先生に視線が集中するのが王弁には面白くない。席を抜け出した王弁の前に姿を現わしたのは長沙で出会った面縛の道士。
彼は王弁に長沙でのことを謝罪するとともに、僕僕先生と王弁の関係を劇的に変化させる道を示すであろう存在を示唆した。
蒼梧で神と崇められる存在が蚕室にいるというのだ。
一方、胡蝶房の裏切者として追われる劉欣だったが、依然僕僕先生の後を追っていた。今回劉欣に迫ったのは劉欣が養成した使い手元綜。両親を人質にとられた劉欣は僕僕先生らを始末するしか手がなかった。
蚕室に向かう王弁を追った劉欣は王弁が巨大な蚕と言葉を交わすのを目撃するが、頓着せずに吹き矢で巴蛇の毒を放つ。
しかし、そこに現れ、吹き矢を払ったのは薄妃だった。
薄妃から逃げようとする劉欣を捕まえた僕僕は、どさくさに紛れて蚕を持ち出そうとする面縛の道士を撃つよう劉欣に命じる。
回来走去(誰かのために流す涙)
蚕嬢と名付けられた蒼梧の蚕が吐き、薄妃が紡いだ糸を僕僕先生が織り上げた布で、薄妃の衣が出来上がった。
既に食事をし、体を維持することのできるようになった薄妃はこの衣で、醴陵に帰るのだ。
寂しく見送る王弁だったが、僕僕先生は(蒼梧から旅の道連れとなった)劉欣に薄妃のあとをつけさせるのだった。
意気揚々と醴陵に戻った薄妃を待ち受けていたのは、賈震の結婚という事実だった。
消沈し、路傍の柏の枝に引っかかって揺れる薄妃を見つけた劉欣に、薄妃は賈震と妻、そして自身を殺すことを依頼する。
恩讐必報(失くし物、見つけた物)
広州に辿り着いた一行は苗族の商人に扮すると、苗の商館に向かった。そこで出会ったのは衡陽の市場で黒卵に殺されそうになっていた苗族の二人の兄妹だった。
引飛虎、推飛虎と名乗る兄弟は僕僕先生たちを歓待する。商館に泊まった僕僕先生たちだったが、その夜、元綜が演出した騒ぎか、苗族が二つに分かれて争う騒ぎが起こる。
激しくなる騒乱を収めたのは薄妃だった。
実際には僕僕先生が薄妃の体に蚕嬢の人格をおさめて、解決させたのだ。
翌日、僕僕先生らを訪ねてきた引飛虎は神姫との面会を求めた。
神姫とは、六合峰の頂にある社で12年おきに行われる信託で選ばれる巫女のこと。神の妻とも呼ばれる神姫は峰の麓の苗族をまとめていたが、ある日姿を消したことを契機に麓の苗族も峰西と峰東に別れて争うようになっていたのだ。
しかし、僕僕先生は、自分勝手なことを数え上げる引飛虎らに蚕嬢(神姫)を渡すつもりはなかった。
そんななか、商館を正規の軍隊が取り囲んでいた。
これを指揮する元綜を目指した劉欣だったが、これは罠だった。誘い込まれた劉欣は元綜に弄ばれ、いたぶられる。愛する者を殺すことに喜びを感じる元綜は喜々として劉欣を追い込み、劉欣の命も風前の灯。しかし、仙骨の力を無意識のうち発動させた劉欣は元綜を撃退することに成功した。
一方、僕僕先生もまた敵方の術師の力もあり、多くの者を守ることは難しかった。蚕嬢の助言もあり、秘密の地下通路から引飛虎ら苗族を逃がしたものの、僕僕先生たちにはこの難局を打開する方法がなかった。
薄妃の話は今回で決着してしまいましたね。でも、このまま道連れのままというのは、これから薄妃の素性探しもあるということなのでしょうか。まぁ、その前に、蚕嬢の神姫への回帰など苗族の話でゴタゴタしそうですが。
ちょっと、このシリーズの中では異色のキャラクター劉欣ですが、仙骨があり、その使い方も知ったわけですから、今後は仙人への道を歩んでいくんでしょう。
また、登場しました面縛の道士。これ一体なんなんでしょう?王方平の弟子なのか、そうでないのか、よくわからない存在ですね。この正体が明らかになるエピソードもあるんでしょうね。
こう考えると、まだまだお話は続いていきそうです。
でも、王弁は最後的にはどうなるんでしょうか。
今回は明らかに次巻へ続くという感じが色濃く出ていますので、次巻を楽しみに待ちましょう。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★★★☆
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コメント
こんばんは。
トラックバックさせていただきました。
表示されないようなので、URLを置かせていただきますね。
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投稿: 藍色 | 2009年5月 8日 (金) 03時11分