『シンメトリー』 誉田哲也
2009年、42冊目。誉田哲也『シンメトリー』
姫川玲子シリーズの3作目。今回は短編集。
小粒な内容が多いものの、逆に(イロモノ的キャラクターの)姫川玲子でストーリーを作るには、これくらいのほうが合っているかもと思わせる内容。
悪くない。
東京
姫川玲子(25)がまだ品川署の強行班捜査係で巡査部長昇任試験に四苦八苦していた頃。
大先輩の部長刑事木暮利充と組んで向かった現場は品川東高等学校。屋上にあるプールから生徒が飛び降りたのだという。
落ちるところを見かけた者はなかったが、自殺にしては手すりに残された指紋は不自然だった。
同じ水泳部員は口を濁すが、水泳部内にはイジメがあったようだ。
過ぎた正義
東京都監察医務院の国奥定之助が姫川玲子に話したのは、不自然な連続事故死だった。心神喪失や少年ということで、凶悪犯でありながら罪を逃れた吾妻照夫、大場武志が交通事故死や薬物死という形で次々と死んだのだ。
法が裁ききれなかった犯罪者を誰かが罰したのでは?自身を省みて可能性を探る玲子。
連続事故死した二人に共通する人物の一人として浮かび上がってきたのは、かつて捜査一課にもいたことのある倉田修二警部補の名だった。倉田は玲子が捜査一課入りする前に、息子の殺人事件を契機に退職していた。
玲子は倉田の息子が服役する川越少年刑務所前で倉田修二を待ち構えた。
右では殴らない
新種の違法薬物によって引き起こされる劇症肝炎での死亡事例が連続して発見される。
二人の被害者の携帯電話のメモリーから浮かび上がった容疑者は女子高生。
下坂美樹、17歳。
問い詰める玲子に美樹は援助交際をしていることを悪びれもせずに語る。
シンメトリー
駅員徳山和孝は脱線事故に遭遇する。
徳山の勤務する駅を発した電車が、酔って踏切内に進入した車によって、脱線したのだ。徳山が駆けつけた時には、既に車両は脱線したうえ、傾いてしまっていた。
徳山は車両内に閉じ込められた顔見知りの女子高生小川実春を助けるべく、精一杯傾く車両に手を伸ばすが、甲斐なく車両は遂に横転し、徳山は右肘から先を失うこととなった。
死者102名、負傷者は重軽傷合わせて425人という大事故だったにも係わらず、泥酔して事故を引き起こした米田靖史に下された罰は懲役5年に過ぎなかった。
JRを退職した徳山は5年して出所した米田を呼び出すと、心臓を出刃包丁で一突きし、遺体を事故現場の上り線内側線路に縦にセットした。
左から見た場合
吉原秀一殺害事件は高島平署管内で起こった。
部屋で刺された吉原は携帯電話で電話をする途中だった。「045666」という入力途中の電話番号は横浜市中区のナンバーを指し示すが、吉原の携帯電話のメモリに該当の番号はない。
交友関係の少ない吉原の知人にあたりをつけるべく、携帯電話の電話帳をもとに捜査は開始されたが、姫川玲子は電話帳の最後にある「渡辺繁」の名前が気になって仕方がない。
捜査が進むにつれ、吉原の過去に浮かび上がったのは、石膏ボード盗難事件。この犯人に目された会社ワタナベ工務店の社長こそ、渡辺繁だった。
悪しき実
「男が死んでいるので見にきてほしい」との通報で、駆けつけた赤羽署の警官は現場で目にしたのは窒息死した男。しかし、そこに通報者の姿はなかった。
部屋の賃借人である春川美津代を偶然発見した姫川玲子に、美津代は自分が殺したのだと告げる。
手紙
姫川玲子のもとに手紙が届く。かつて玲子が捜査一課に抜擢される契機ともなった今泉春男と出会った事件の犯人からである。
玲子は部下たちに、当時の武勇伝を語り始めた。
玲子は入庁4年目。2度目の挑戦で巡査部長昇任試験に合格し、品川署から碑文谷署に異動、交通課規制係の主任を拝命していた。
そして半年。玲子は、目黒署に立った殺人事件の帳場に応援で駆りだされた。
公園で殺害された女性杉本香苗の会社の事情聴取を目黒署の高野真弓巡査部長と組んで行う玲子だったが、真弓に主導権を握られてしまう。
本庁にとりたててもらうまたとないチャンスにあって、真弓に主導権を握られたままでは目立つ手柄を立てられないと焦る玲子は、放置されたままのパソコンの調査を今泉に直接申し出たのだった。
姫川玲子シリーズとはいえ、短編で、かつ犯人等の描写も深めようとすると、自ずと玲子の出番は少なくなります。加えて、いつも以上に、なんとなく解決(?)するような構造で、ミステリとしてはちょっと・・・。
「東京」なんかはシリーズの作品っぽいものの、表題作の「シンメトリー」では玲子は単なる添え物の扱いでしかないですね。
「右では殴らない」は姫川玲子の辛辣な部分が出ていて、これはこれで面白かった。
「左から見た場合」。うーん、こんなの作品にしてしまうんだ、という恐れ気のなさに驚きを隠せません。今更、携帯電話の変換ネタってどうよという感じですね。
短編ということもあって、本筋とは関係のない外伝的なネタばかりでした。軽くて、悪くはないんですが、のめりこめるほどの深みはない。
時間があれば、読んでもいいかというレベルか。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★☆☆☆
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