『反乱する管理職』 高杉良
2009年、29冊目。高杉良『反乱する管理職』
破綻した千代田生命の話です。
なんだか主人公が嫌な奴です。どう読んでも、英語ができることや、ハーバードでMBAをとったことをひけらかしているとしか思えない、鼻につく嫌味な性格。
こんなのが正義漢ぶってもなぁといった感じです。
1983年、東都生命入社2年目の友部陽平と宮坂雄造は職員の福利厚生施設である成城のグラウンドがなくなるという話を聞きつける。
断固これを阻止すべく組合執行部(委員長:高木康夫、副委員長:山際厚志、書記長:三好明)に掛け合うが、御用組合である執行部は取り合おうとしない。それどころか「聞かなかったことにする」との回答だ。
業を煮やした友部と宮坂は社長安東太郎(モデル:神崎安太郎)の自宅に押しかけ、再考するよう直訴する。そんな言葉を安東が聞くはずもない。
翌日、人事部に呼び出された友部と宮坂は、それぞれ松江支社と札幌支社への異動が命ぜられる。
松江支社長河上規夫のもと営業に励む友部だったが、この営業の過程で、東都生命の弱点でもある政治力のなさを解決する大物政治家とのツテを得ることになる。
営業活動の途中、パチプロに絡まれている青年島田光男を救ったことが縁で、島田の実家である玉造温泉でも一、二を争う老舗旅館陽光園に入り込むのだった。
友部は島根県会議員の青野乾治を介して、社長安東太郎を現職の大蔵大臣竹山正登(モデル:竹下登)に結びつけたのだ。
1986年4月、友部は東京本社の法人営業部に転勤になると、2年後の88年9月にはハーバード大学に社費留学する。90年8月に、MBAを取得して帰国すると、関連事業部に課長代理で配属された。
ここで成城のグラウンドが売却された先、株式会社ミヤコスポーツセンターが無事開業し、高収益を維持していることを知り、友部はホッとする。
96年7月、安東太郎は社長を松永亨(モデル:米山令士)に譲り、代表権を持った会長に就任したが、人事権者は安東で、東都生命の権力構造に変化はなかった。
友部は人事課長を経て99年7月に企画部副参事となっていた。
安東太郎は社長就任直後こそトップセールスに励むなど率先垂範の姿勢で職員を鼓舞し、東都生命を引っ張ったが、その後は超ワンマンになり、乱脈融資等を繰り返すバブル派の部下で周りを固めていった。その結果として、バブルの崩壊によって大きな痛手を蒙った東都生命は経営の危機に瀕していた。
この東都生命の経営危機に乗じて風評営業を繰り返す大日生命(モデル:日本生命)の社長鈴木(モデル:宇野郁夫)に抗議する安東だったが、鈴木は聞く耳を持たない。
友部は、安東の引責辞任と引き替えに、東都生命と親密な東亜銀行(モデル:東海銀行)に支援を求めるべきだと進言するが、安東は激怒する。安東は東亜銀行の北田頭取(モデル:小笠原日出男)に直接支援を依頼するが、経営危機の元凶である安東が依頼したところで逆効果だ。
同時に、東都生命は外資との提携も進めていた。アドバイザーとなったDB(ダイヤモンド・ブラザーズ)ジャパンはAIC(モデル:AIG)とプレジデンシャル(モデル:プルデンシャル)のうち、なぜかAICを推す。
友部がDBジャパンの内部の知人に確認すると、担当のパートナージェローム・P・ケニーはAICに近く、AICの代理人とも言える存在。背信行為ともとれるケニーの行動を知った東都生命では、DBジャパンを介さず、直接AICとプレジデンシャルと交渉を始めるのだった。
一方、松永社長が東亜銀行の北田頭取に会い、”支援”のアナウンスを引き出すことに成功する。支援の観測記事のおかげで一時的に資金流出に歯止めがかかったが、抜本的な解決にはいたらない。
99年12月、とうとう安東は会長から退任した。しかし、時は既に遅かった。JFG銀行(モデル:UFJ銀行)に統合予定の東亜銀行では北田が協立銀行(モデル:三和銀行)の阿川頭取(モデル:室町鐘緒)に釘をさされていたのだ。
2000年、9月中旬以降、東都生命の解約ラッシュが再び本格化し始めた。有力経済誌D誌が”東亜銀行の支援打ち切り”観測記事を載せたためだ。
10月、東都生命は更生特例法の適用を申請する。
東京地裁は同日、保全管理人に大野正史弁護士(49)を選任。大野は管理人代理として、気心の知れた藤井泰世(45)、遠山晴彦(37)両弁護士を決めた。
大野は本社全職員の前に立ち、「契約者保護、東都生命の最大限の評価、経営責任の追及」を基本理念として掲げ、職員らの胸をうつ。
更生開始決定がなされ、管財人となった大野は加えて、管財人室長に友部を指名するが、友部はこれを固辞する。しかし、宮坂から翻意を促された友部はこれを受けた。
若輩の友部をトップとする組織に社内の風当たりは厳しいが、なんとかこれをこなす友部だった。
そんな中、一つの疑惑が浮かび上がってくる。
元成城のグラウンドであったミヤコスポーツセンターの処分に絡み、政治家が暗躍しているというのだ。ミヤコスポーツセンターが路線価の三分の一という破格の値段で、マメゾン(モデル:セボン)といういわくあるデベロッパーに売却されていた。
マメゾンは現職の国土交通大臣淡野景子(モデル:扇千景)が広告塔を務める中堅デベロッパー。規制のある土地でも強引に住宅を建ててしまうという「まともではない会社」だった。
部下中西茂に調べさせた結果もそれを裏付けた。
この一件に暗躍するのは誰か。
友部は事業管財人として入っているAICの岡本を飛び越え、AIC本社のカーク・ウィルソンに確認するが、AICはミヤコスポーツセンターに関与しているようには見えない。
友部は関連会社を担当する川邊一郎弁護士に面会するとミヤコスポーツセンターの処分について問い質すが、内容を開示することはなかった。
その直後、友部は大野・藤井・川邊に呼び出される。友部を説得しようとする大野らだったが、友部は折れることなく、異論を重ねる。
最高執行部に逆らって、最早会社に残ることもできない。AICのウィルソンは友部を慰留するが、友部は辞表を提出し、大野はこれを受理した。
2001年4月、ミヤコスポーツセンターは3カ月後の閉鎖を発表。存続運動も起こるが、間もなく挫折してしまう。
千代田生命の破綻ストーリーなので、勿論、支援していた東海銀行をモデルにした東亜銀行の北田頭取や、その背後の協立銀行の阿川頭取だとか『金融腐蝕列島』シリーズの登場人物も顔を出しますし、『腐蝕生保』の鈴木社長も出てきます。
また、紙幅の問題なのか、最後には余ったページで『青年社長』のワタミを登場させて自作を紹介しています。
いつものことですが、小泉-竹中(作中では大泉-竹井)路線の誤りを指摘することも忘れちゃいません。若干、鼻についてきましたが・・・。
別に、竹中平蔵の政策が良かったというつもりはありませんが、なんとなく、どうも狭い了見で、というか、作者の狭い見識だけで、物事の表層しかみていないようで、ちょっと疲れます。何となく、雰囲気だけで経済や金融を語るっていうのは、いかがなものでしょうか。居酒屋で管を巻くおっさんじゃあるまいし・・・。
生保でも株式会社化を進めている第一生命(作中では「第三生命」)を褒め、日本生命を批判する姿勢は変わらずです。なぜ、第一生命が良くて、日本生命はダメなんでしょう。株式会社化が全て素晴らしいという考え方は、何でもかんでも弱肉強食の外資を導入しようとした竹中平蔵の考え方といかほど違うんだろうなぁ、と思ってしまいます。
それはとにかく、今回の作品は、まぁ、いつもに比べると、どうも主人公に魅力が乏しい分だけ小粒な作品になってしまっています。
また、もうちょっと、作者の思い込みが少ないような客観的なテーマの方が良かったのではないでしょうか。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★★☆☆
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