『消失 金融腐蝕列島【完結編】第2巻』 高杉良
2008年、88冊目。高杉良の『消失 金融腐蝕列島【完結編】第2巻』
いつもながらの作品で、可もなく不可もなくといった感じでしょうか。ただし、このシリーズの主人公竹中治夫はアクが少ない淡白な印象を受けますし、善人ぶりも中途半端で、地位に汲々とする小市民的なところもあって、主人公らしくさがあまりないですね。登場するキャラクターがどれも性格が悪そうという印象を与え、銀行に含むところがあるんだろうなと思わずにはいられません。
JFG銀行中之島支店長竹中治夫は懸案のS案件こと大阪の中堅ゼネコンスズキ工務店の問題を解決する。
スズキ工務店社長の鈴木徹太郎を説得し、民事再生法含みでの解決を匂わせることで、五井住之江銀行船場支店長工藤(明)に圧力をかけ、短プラの折り返しを承諾させたのだ。
竹中は副支店長大森(幸太郎)とともに上京し、審査部らに報告する。併せて、竹中は妻知恵子にも会い、こちらも懸案であった離婚届への署名捺印を求める。
山崎頭取になって、同期の杉本勝彦は常務執行役員として頭取に次ぐナンバーツーのように振る舞っていた。そんな杉本が指示したのは、苦戦している梅田支店長川瀬俊彦の相談にのることだった。過去からの確執等、杉本に思うところのある竹中は相手にしないが、かつての上司でもある専務取締役・人事部長相原洋介から同様の依頼を受けて川瀬を呼び出す。9月の金融庁検査を控え、心身症ともいえるほど疲労困憊している川瀬に竹中は自然体で臨むよう指示する。
9月から始まった金融庁検査では中之島支店の案件に二人の検査官が対応した。金融庁検査局 総務課金融証券検査官渡辺健一郎と高橋征雄である。二人は当然、スズキ工務店の案件から検査をスタートするが、はじめから要注意先認定、引当金計上ありきで応対するのに対して、竹中は正面から立ち向かう。受注明細を前提としながらも収益の2割減でも赤字にはならないことを強弁した竹中は、最終的に正常先区分を勝ち取る。
金融庁検査も乗りきった竹中は杉本から呼び出される。杉本は10月に専務執行役員に昇格し、名古屋本部担当となり、”グリーン化作戦”を推進するという。いわゆる”グリーン化作戦”が旧東亜銀行の行員のやる気を削いでおり、優秀な人材が流出していることも懸念していた竹中は杉本に反対するが、既に専務ともなることが決まっている杉本には正面きって反抗することもできない。
4月、竹中は人事・総務担当として常務執行役員に昇格して東京へ戻る。山崎頭取に挨拶する竹中は”グリーン化作戦”について苦言を呈するが、結局は厭な顔をする山崎に反抗することはできなかった。山崎の狙いは直言を憚らない竹中にかつて天皇とも呼ばれた鈴木一郎最高顧問をJFG銀行から放擲させることだった。
だんだん大詰めになってきましたね。間もなく潰れてしまう(吸収合併されています)はずのJFG銀行、どうなるんでしょうね。
いつもの通り、杉本の嫌なヤツ・悪役ぶりには磨きがかかっており、共感できる部分はありますが、ただちょっと極端になって現実離れしてきた感は否めないかもしれないですね。
なんだかんだいいながら、竹中もサラリーマンらしく日和ってしまうところは、作中とはいえ(リアリティがでる以上に)ちょっと期待ハズレです。加えて、杉本のことをとやかく言うわりには自身がとにかくエラそう。「・・・したらいいな」という指示は、ちょっと鼻持ちならないですね。お前の価値観が全てじゃないよといいたくなってしまいます。作中では周りが皆竹中を慕っている、尊敬しているような書きぶりですが、こんな上司には我慢ならないという部下は沢山いそうですけどね。
お奨め度:★★★☆☆ (シリーズを通しで読まないときっとストーリーは理解できないでしょう。)
再読推奨:★☆☆☆☆
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『無理』 奥田英朗(2009.12.25)
- 『小太郎の左腕』 和田竜(2009.12.24)
- 『人格転移の殺人』 西澤保彦(2009.12.23)
- 『複製症候群』 西澤保彦(2009.12.22)
- 『完全無欠の名探偵』 西澤保彦(2009.12.21)
「著者別(た)高杉良」カテゴリの記事
- 『反乱する管理職』 高杉良(2009.02.26)
- 『消失 金融腐蝕列島【完結編】第4巻』 高杉良(2008.10.26)
- 『消失 金融腐蝕列島【完結編】第3巻』 高杉良(2008.06.17)
- 『消失 金融腐蝕列島【完結編】第2巻』 高杉良(2008.05.11)
「読書感想(お奨め★★★☆☆)」カテゴリの記事
- 『無理』 奥田英朗(2009.12.25)
- 『小太郎の左腕』 和田竜(2009.12.24)
- 『人格転移の殺人』 西澤保彦(2009.12.23)
- 『複製症候群』 西澤保彦(2009.12.22)
- 『完全無欠の名探偵』 西澤保彦(2009.12.21)

コメント
こんにちは~
今頃のコメントですみません。
このシリーズはみんな読んでいるのですが、「消失」は文庫になってからでいいや・・と・・でも、UFJ銀もこのシリーズで最後だから、その過程はやはり気になる・・ので、ハードカバーで高いから立ち読み、ええ、本屋さん申し訳ありません。
主人公の竹中は、モテ男なんですよね~
でもバツ一になると・・そうなったら、あの人と再婚しちゃうんだろうなぁ、とストーリーと関係ない所で妄想していたのでした。
3巻出ましたね!
投稿: チェス | 2008年6月 6日 (金) 16時27分
チェスさん、コメントありがとうございます。
確かに、なぜか竹中、モテるんですよね。
仕事ができるというよりも、運・巡り合わせだけで出世してきているような彼がなぜモテてしまうのかちょっと不思議です。
清水麻紀との関係もそろそろ決着がつくんでしょうが、JFG銀行吸収合併のなかでどういった展開を見せるんでしょうか。
さて、そろそろ第3巻も読まなきゃとは思ってはいるんですが、まだ目先10冊程度読もうと思ってストックしている作品があるので、第3巻の読了は再来週くらいでしょうか。
投稿: 帝王(ティオ) | 2008年6月 6日 (金) 22時42分