『ビールボーイズ』 竹内真
予想通り、良い作品でした。勿論、タイトルから期待されるように、ビール(エール)が飲みたくなる作品です。順に「第1回ビール祭」から「第10回ビール祭」まで各章に分かれますが、各ビール祭の都度一杯(一本)ずつビールを味わいたいという気持ちにさせます。なぜ、手元にビールを用意していなかったのか、と悔やまれる読後です。
また、単にビールにまつわる青春群像というだけでなく、作者竹内真のビールに対する想いが非常に伝わる作品です。各章の間に挟まれる「ビールコラム」は薀蓄が語られるとともに、日本のお寒いビール事情を訴えかけられます。
第一回ビール祭 十二歳・秘密基地
北海道南部の新山市。小学6年の金山正吉、津々見広治郎、田中勇は金山家の納屋である秘密基地に宗方薫を誘った。新山市から月星ビールが撤退するのとともに、彼らの憧れでもあった千秋茜が転校することになったのだ。
「茜に引っ越しなんかさせる奴らに、復讐してやろうぜ」彼らは缶ビールを飲み干した。
第二回ビール祭 十五歳・布団部屋
修学旅行先の仙台で、教師の目を盗んで缶ビールを仕込んだ広治郎。布団部屋で女子を誘って飲み始める正吉、広治郎、勇だったが、教師に見つかってしまう。
罰として正座をさせられる中、広治郎は「俺、夏に転校することになった」と告げる。
津々見家が管理するペンションも撤退を決めたのだ。
第三回ビール祭 十七歳・ペンション跡
正吉がペンション・パック跡へ勇と薫に召集をかける。缶ビールを飲みながら正吉の失恋話を皮切りに花火をするが、これが林に引火してしまう。
電気も水もないペンションでは火を消し止める術もなく、3人は消防署へ通報したあと、逃げるように家に帰るが、勇が火事場でつかまってしまう。しかし、男気のある倉持署長は事件を内々に処理する。
第四回ビール祭 十八歳・映画館
薫が東京の私大に合格し、勇がこれを祝って映画に誘う。
第五回ビール祭 十九歳・海の家
地元に残って酒屋の店員を務める正吉は勇と薫を海の家に誘う。
連絡のつかない薫の家を訪ねた勇に、薫は「男になりたかったこと」「東京で男として生活していること」をカミングアウトする。
一方、正吉は酒作りの勉強のため専門学校を目指そうとしていた。
第六回ビール祭 二十歳・居酒屋
勇のアルバイトする新宿の居酒屋に正吉と薫が集まる。薫は消防署の倉持署長が新山市長選挙に出馬するのを手伝うことを正吉に呼びかける。
第七回ビール祭 二十ニ歳・成田空港
新山でビールを作り出すべくオーストラリアへ修行に向かう正吉を見送りに勇と薫がかけつける。
正吉は理想とするビールに出会うが、なかなか働くことは許されない。
第八回ビール祭 二十五歳・秘密基地
「広治郎が新山に来てる」市役所に勤める薫から連絡を受けた正吉は広治郎を探す。
広治郎は広治郎のペンション撤退を決めた東帝不動産の後継会社東帝総業に就職し、ペンション跡地の再開発を検討していた。
資金面で壁にぶちあたっていた正吉は広治郎に協力を求めるが、考え方の食い違いから喧嘩になってしまう。これをとりもったのが、電話参加の勇だった。
第九回ビール祭 二十八歳・地下倉庫
1999年、ペンション跡地の再開発「くらふと新山」は官民一体の共同事業として結実した。そこに出店したのが正吉の「新山ビール」である。
体験醸造のテストとして、正吉は広治郎、勇、薫を迎えてアンバーエールを作る。
第十回ビール祭 三十歳・新山ビーチ
新山ビーチの海水浴場の海開きにあわせ、新山ビール主催の自ビールフェスティバルが開かれる。
感極まる勇にマイクを向けたのは千秋茜だった。
面白く、かつ中身も濃いため、十分読みごたえのある作品でした。
最後がちょっと予定調和的で若干陳腐な感じも否めないところはありますが、この作品の流れの中では丁度いいのかもしれませんね。
お奨め度:★★★★☆
再読推奨:★★★★☆
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