『無理』 奥田英朗
2009年、134冊目。奥田英朗『無理』
なんというか、何人かの「ゆめの市」の住人を主人公とした短編集を同時並行で書きましたというような作品。
本当に小市民ばかりで、大きな材料もなく、身の回りの薄汚れた等身大の生活が綴られます。勿論、トラックに襲われるというのは、大した事件かもしれませんが・・・。
雪に閉ざされた合併都市「ゆめの市」で何人かの市民が日々愚痴を言いながら生きている。
相原友則はゆめの市にある社会福祉事務所に駐在の県職員。生活保護課で、毎日、生活保護受給者(ケース)の面倒を見るが、自立せずに県にたかる市民に嫌気がさす。受給者を抑制するべく、厳しく対応する最中、民生委員からの申し立てで生活保護を申請してきていた西田肇の母親が凍死する。その後、トラックに後ろから煽られ、殺されそうになった友則は西田の仕業とみて、懐柔しようとするが・・・。
久保史恵は高校3年。田舎のゆめのから出て、東京の大学に進学することが目標。予備校の帰り、史恵は突然、男に襲われ、車のトランクに詰め込まれ、拉致される。攫ったのは、引き篭もりの男。暴行はされなかったものの、離れに住む男のことを男の両親は見て見ぬふりをするため、解放の望みはない。泣き疲れた史恵は、男を刺激しないように暮らすうち、解放されてからの生活を怖れるようになっていく。
加藤裕也は老人宅に漏電遮断器を売りつける詐欺グループ「向田電気保安センター」で働く。暴走族OB亀山を社長とする保安センターは暴走族の先輩、後輩で組織されていた。加藤の先輩柴田は亀山の評価を上げるため、喜々として仕事に打ち込む。これに刺激を受けた加藤もまた励み、会社の中で頭角を現わしていく。しかし、亀山の不条理な評価に憤った柴田ははずみで亀山を殺してしまい、加藤に相談を持ちかける。
堀部妙子は「ドリームタウン」で働く保安員(万引き警備)だった。新興宗教「沙修会」に属する妙子は万引き犯の女性三木由香里が競合する宗教団体万心教の信者であることを知ると、万引きを見逃すかわりに沙修会へ引き抜いた。しかし、これに反発した万心教は妙子に罠をしかけ、誤認逮捕の実績を妙子に作らせた挙句、失職に追い込む。失職した妙子だったが、兄のもとに身を寄せる母親への兄嫁の仕打ちに憤り、これを自宅に引き取ってしまう。
市会議員山本順一は市民団体の抗議に頭を痛めていた。飛鳥山の産廃処理施設建設計画に関与していることがばれたのだ。加えて、利権の匂いをかぎつけた元市議藤原は市民団体を利用して、山本に利権の分け前をねだるため圧力をかける。産廃業者薮田敬太の弟幸次は市民団体への嫌がらせの末、とうとう市民団体のリーダー坂上郁子の拉致に及ぶ。事件への係わりを避けようとする順一だったが、逆に幸次を刺激する結果となり、郁子は射殺されてしまう。
雪に閉ざされた街「ゆめの」を象徴するように、話自体は重く、暗い。
とにかく、出てくる人物、出てくる人物が殆ど計画性がない。目先のことだけで精一杯で、それがどんどん悪い方へ悪い方へと転がっていく。結局、この作品のなかで最終的にハッピーになった人っていないんじゃないかな。
しかし、最後の交通事故につながるトラックの犯人が西田だったというのは、逆に驚き。
作品中では、友則が特に根拠なく、印象論だけで西田犯人説を唱えているので、逆に真犯人は別にいるっていうのが普通なんですが・・・。ラストは本当に意表をつかれたって感じでしたね。
読み終わって、何か得られるものがあるわけでなく、気持ちよい後味があるわけでもない。そういう意味では再読はしたくない作品ですね。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:☆☆☆☆☆
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)










最近のコメント