『史上最強の内閣』 室積光

Shijosaikyo2012年、42冊目。室積光『史上最強の内閣』

窮地になった日本を救うため『影の内閣』が登板し、緊張を増す北朝鮮との問題を解決するという物語。

 

自由民権党総裁であり、首相浅尾一郎は北朝鮮の核実験とミサイル発射実験に振り回された挙句、日本の舵取りを京都の御前、二条知麿に丸投げすることにする。

平穏なときであれば二世、三世議員でも運営できる日本だが、混沌とする国際情勢のなか、従来の二軍に代わって登板できるように京都御所に用意されてきたのが本物の内閣「ザ・キャビネット」だった。

二条をはじめとする無名の閣僚の登場に、世は騒然とするが、現状の政治に嫌気がさしていた国民からは総じて支持を受ける。

また、二条内閣は、朝地新聞社の記者半田三生と東亜テレビの小松修司を記録者として選び、運営の全てをオープンにする。

勿論、記録を公開するのは、期間限定の内閣が降板してからだが、各大臣はオープンに二人に接するとともに、喫緊の課題である北朝鮮対策についても、その作戦と進捗状況を開示するのだった。

最重要課題である北朝鮮の調査は、内閣官房内閣情報調査室服部万蔵によって進められた。

服部は、謎の残置諜者『太郎』からもたらされた労働党と軍部の対日強硬派リストを提出し、軍部の有力者ソ・キホ大将のもとミサイル燃料の注入が進んでいることを内閣に伝えた。

この情報があっても日本から先制攻撃をしかけることはできない。

山本軍治防衛大臣は若狭湾に武器・弾薬を搭載した小艦艇を終結させて放置すると、右翼らに情報を流して扇動する。右翼や暴走族らが勝手に艦艇を操縦して、北朝鮮に行動を起こそうとも、政府・自衛隊はあずかり知らぬというのだ。

とはいえ、素人のやること。北朝鮮に向かった小艦艇はあっさり北朝鮮軍に拿捕され、乗船した右翼らは捕虜となってしまう。

一方、千葉のネズミーランドで不法入国していた北朝鮮の指導者シン・チョンイルの長男シン・ジャンナムが拘束される。

当初こ本人であることを否定したジャンナムだったが、間もなく本人であることを認める。

右翼らの行動を非難し、併せてジャンナムの解放を求める北朝鮮だったが、政府は完全に黙殺する。

政府はマスコミに働きかけると、ジャンナムをマスコミに露出させる。ジャンナムは芸能人のように扱われ満更でもない。テレビに映るジャンナムの低俗さは日本人には受けたが、北朝鮮としては体面上も放置できない。

北朝鮮はジャンナム救出のために工作員を送り込むが、既に『太郎』からの情報を得ていた日本では、東亜テレビが工作員の日本上陸から秘かに工作員の動向を録画していた。

東亜テレビが放映したジャンナム奪還作戦は反響を呼ぶが、工作員と合流したあともジャンナムにはすぐに帰国するつもりがなかった。

ジャンナムは4人の工作員を連れ、引き続きマスコミに出たり、遊興を続ける。

ようやく北朝鮮への帰国を決めたジャンナムだったが、工作員4人を日本に残すことを小松らに相談した。日本で顔の知られてしまった4人は帰国すれば処分されてしまう可能性が高いからだ。残る4人に日本を知ってもらうためにも、ジャンナムは4人を連れまわしていたのだ。

ジャンナムの帰国後、ユン、チョン、カン、ハンの工作員4人は『エージェント・フォー』のグループ名で芸能界デビューする。

工作員が日本でアイドルとしてもてはやされることで、日本の平和主義は世界的にも認められる。また、日本人ばかりでなく、在日、アジア各国でも人気の上がる『エージェント・フォー』だった。

しかし、あるとき、平和を訴える発言をしたことをきっかけに、北朝鮮から裏切り者呼ばわりされ、カンは自殺をはかる。

アイドルであるエージェント・フォーへの同情もあり、日本の世論は反北朝鮮に傾き、同様に対日姿勢を硬化させた北朝鮮との間で一触即発の状態。

服部の調べで、対日強硬派が日本本土に向けて核ミサイル発射を進言し、シン・チョンイルがこれを裁可したことで、日本では国民の避難等の対応を迫られる。

PAC-3が配備され、日本海海上に自衛隊のイージス艦が出動するなど、厳戒態勢が敷かれるなか、米軍の早期警戒衛星が掴んだ発射情報が在日米軍司令部を経由してもたらされた。

しかし、いつまでたってもミサイル着弾も迎撃の報も入らない。

北朝鮮のミサイルは糸魚川市の海岸に乗り上げていた。

志願した決死隊三人により調べられたミサイルには信管がついていなかった。

無償で原爆保有国になったことを喜ぶ防衛大臣だったが、二条は北朝鮮に原爆を引き渡すのに合わせ、謝罪と賠償を求めることを決する。

平壌に向かった二条は韓国のリン・ミャンバク大統領と中国の毛沢山首相と合流し、シン・チョンイルに対面すると・・・。

 

B級のエンターテインメント作品。

洗練されているわけではないけれど、単純明快でマンガのような面白さといった感じだ。

2010年11月発行でありながら、この作品に出てくるミサイル発射の件は、先日の人工衛星騒ぎを髣髴とさせる。

お奨め度:★★☆☆☆

再読推奨:★★☆☆☆

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『猫背の虎 動乱始末』 真保裕一

Nekozenotora2012年、41冊目。真保裕一『猫背の虎 動乱始末』

江戸末期の人情ものというか、軽いミステリ。

 

第一章 大江戸動乱

安政の大地震で江戸は混乱を極める。

南町奉行所の同心大田虎之助は慌てて奉行所へ駆け付ける。

地震で崩れた籾蔵を巡って暴動が起こることを懸念した虎之助は町衆を安んずるため町へ飛び出すと炊き出しを呼びかけて回る。

町会所を守り、炊き出しを無事やり遂げた虎之助に命が下る。

本所深川方臨時の市中見廻り役を命ぜられたのだ。

臨時とはいえ憧れの役職だ。

仏の大龍の異名をとった父龍之助を継ぐ役職に身も引き締まる思いの虎之助のもとに、かつて龍之助のもとで働いた”咬みつき犬”こと松五郎が駆け付ける。

もともと虎之助に従っていた新八とともに松五郎を引き連れ、深川へ向かった虎之助は途中、行き倒れている男、佐吉を拾う。

5年前に弟の失火で妻子を失くした佐吉は失意のあと何とか再起し、あらためて店を開いたは良かったが、またしても地震で店を失くしてしまっていた。最早、生きる望みを失った佐吉は死を願うようになり、虎之助の好意が届くはずもない。

しかし、虎之助に連れてこられたお救い小屋で、妻子の仇である弟清次に似た男を発見した佐吉は、その後を追った。

一方、虎之助は通報を受けて、籠に入れられた亡骸を前に思案にくれていた。

暴動の危機を知った虎之助は、忍藩らの屋敷に注意を呼び掛けるとともに、町衆で騒然とする現場に駆けつけ、制止を呼びかける。そんな雑踏のなかで、虎之助は、佐吉が一人の男を刺して茫然としているところに出くわす。

清次と確信して、包丁を刺した佐吉だったが、人違いだったのだ。

 

第二章 神隠し

鶴屋の千香は地震後も夫伝次郎が戻らないことに気を揉んでいた。

伝次郎が林町に女を囲っていることを番頭の利平から聞いていた千香は林町を訪ねる。

そこに伝次郎はいなかった。

地震で崩れた家から女と赤ん坊を救い出した千香は、女の隙をついて赤ん坊を連れ出してしまう。

その頃、虎之助はお救い小屋で働くようになった佐吉から籾蔵の米が帳面よりも多いことを告げられる。

そんな虎之助のもとに、赤ん坊が神隠しにあったとの報が入る。

筵小屋で死亡していた母親とともにいたはずの赤ん坊がいなくなったのだと父親が訴えてきたのだ。

 

第三章 風聞始末

手習い所が立ち行かず、代書屋に落ちぶれた与一郎だったが、読売で世間の不幸話を大袈裟に書き綴ることで、評判が出てくる。

そんな最中に発生した大地震は与一郎にとっては不幸話に事欠かない絶好のチャンスだ。

そのため、与一郎を見限って実父勘兵衛のもとに身を寄せる妻志津や息子仙太郎のところを訪ねたのは地震から2日も経ってからだった。

与一郎の行動や考えなど勘兵衛にはお見通しだ。勘兵衛は与一郎を突っ放す。

勘兵衛らのことを信用し、与一郎のことを十分に信頼することのない仙太郎のためにも、与一郎は更に稼がなければならなかった。

虎之助は亡骸の入った籠を作った籠職人を突き止め、亡骸が神田多町の結城屋に働く益蔵のものであることを確認する。

一方、奉行所では幕府を批判する不穏当な読売の流通に目をやると、その調べに乗り出していた。

 

第四章 返り花

新吉原のかえでは地震で人々が混乱するなか、堀を越え、江戸市中に逃げてしまう。

6つのときに新吉原に売られてきたかえでには江戸のことは何もわからない。

客の一人を頼ることを決めたかえでは亀島橋を目指した。そこで見つけた廻り髪結いに同心加藤六郎衛門への手紙を託す。

一方、虎之助は偽の妻を演じて亡骸を盗んでいった事件について、調べを進めていた。

いくつかの推測を巡らす虎之助だったが、益蔵の妻の発言はそんな虎之助の推理を潰していくばかりだった。

本所元町の名主から出された検使の願いを受けて、虎之助は赴く。

材木置場で発見された死体は彦次。

出かけたまま戻らない父親を案じた娘おつねの相談を受けて探したところ見つかったのだという。

彦次とおつねが木挽町で焼け出されたにもかかわらず、本所元町でなぜか部屋を見つけていたことに不審を感じた虎之助は、彦次とおつねの素性を洗うことにする。

 

第五章 冬の虹

山吹屋の見代は懊悩を抱えていた。

資金繰りに窮している山吹屋は龍之助の生前から虎之助との縁談を目されていたが、龍之助の死で頓挫。

そのため、山吹屋の窮地を救うべく、大店葵屋に姉佳代が嫁ぐが、小心者の夫孝造の暴力に耐えかね、山吹屋へ戻ってきてしまう。

そこで、かつての縁を頼りに見代と虎之助の縁談が持ち上がるが、口煩い虎之助の母真木や姉初音、若菜に山吹屋の足下を見られたことで、縁談は破談となってしまう。

優しそうな風貌の虎之助のことを憎からず感じていた見代だったが、決まったことは致し方がない。しかし、その後も虎之助は、山吹屋の前を仕事のついでと称して徘徊するのだが、その目は見代を追っているのではなかった。

縁談を断りに行った佳代を見初めてしまったのだ。

 

佐吉により告げられた籾蔵の数量の合わない米を調べるうち、この一件に亡くなった父龍之助が絡んでいることを知った虎之助は、疑いたくもない父の不正を調べるがごとく、過去の経緯を調べるが・・・。

また、亀戸の田圃で見つかった焼死体について軽視していた虎之助だったが、その一件を聞いた真木は目の色を変えて、虎之助に益蔵との類似を調べさせるとともに、結城屋を奉行所に引っ立てるように指示するのだった。

 

 

一言でいって、どうもぱっとしない作品。

結局のところ、何が主題がよくわからなかった。

籠の中の死体をもって、ミステリとも言えるかもしれないが、かなり我田引水的な推理、結果オーライ的なまとめというのは、ちょっと何だかなぁ、といった印象です。あれだけ引っ張って、これかいという突っ込みを入れたくなる感じ。

そもそも主人公の虎之助自体にあまり魅力がないので、ストーリーがどうも魅力に欠けてしまいます。その煽りもあるんでしょうか、山吹屋の佳代や見代を巡るストーリーなど、特に必要のないエピソードになってしまっています。

虎之助のキャラクタが薄い分、真木とか初音、若菜とか、きつい母、姉というキャラクタでメリハリをつけようとしたのかもしれませんが、どうも上滑りしています。

虎之助らを除けば、各話ごとに中心となるキャラクタが出てきますが、どうも薄味で、かつ物語としても、ストーリー展開のきっかけになるような当該人物の元々の葛藤は解決されないままに放り出されて終りというものが多く、どうもフラストレーションがたまります。

読んでいて、読み難いとか、引っかかるという感じはないのだけれど、引き込まれることもない、そんな薄味作品だったような気がします。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★☆☆☆☆

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『破壊者たち 小説・新銀行崩壊』 高杉良

Hakaisyatachi2012年、40冊目。高杉良『破壊者たち 小説・新銀行崩壊』

日本振興銀行をモデルとした新日産興銀行の設立から破綻までの物語。

 

新日産興銀行[日本振興銀行]設立の予備免許申請を受けて、設立準備委員長の越智信治[落合伸治]が平田斉之助[平将明]と村木豪[木村剛]を左右に従えて会見する。

大泉純太郎[小泉純一郎]政権下、竹井平之助[竹中平蔵]経済財政・金融担当相に村木が振り付けをした金融再生プログラムで明記された銀行業への新規参入促進の第一歩だ。

ノンバンク、オラガ社長越智が取引のある平田(東京青年会議所・理事長)を介して、村木と接触し、村木のコンサルティングを受けながらの案件だが、関係者の思惑が全て一致しているわけではなかった。

コンサルの立場を示す村木だが、下心が見え隠れするなかで、不穏の種は育っていくばかりだ。

金融庁の検査官でありながら、中小企業の破綻を促す金融検査マニュアルに従いきれないノンキャリア検査官大塚徹は金融庁顧問村木に直談判するが、意見は入れられない。

しかし、大塚の気骨のある態度は村木の目に止まり、金融庁の検査方針と大塚が衝突した際に、Mファイナンス[KPMGフィナンシャルサービスコンサルティング]執行役員企画部長として迎えられることとなった。

そういった経緯もあり、大塚は必ずしも村木を盲信するわけでなく、新日産興銀行の件でも、村木の考えを忖度しつつも、危うさを感じていた。

一方、ワンマンで誇り高い越智だったが、不満をかかえつつも直接、村木には器の違いもあり、対抗すべくもない。自然、高校時代のクラスメートで越智の右腕とも言われる取締役倉田克己に不満がぶつけられるのだった。

二人のトップの軋轢を代理して交渉するのが、大塚と倉田の役回りだ。互いにトップの危うさを認識しながら、新銀行設立に向けて協議を進めていた。

金融庁監督局長後藤正史が新銀行の初代社長に越智を推すことを嫌悪していることを村木は匂わせる。

オラガからの出向でありながら村木に抱き込まれてしまった宮本勇から越智が脛に傷もつ身であることを知らされた村木は、元ACBで越智の最大の後見人である尾花康雄を担ぎ出すことを決める。

尾花は渋るが、金融庁の態度や越智への強制捜査を機に、初代社長に就くことを決断する。

一方、資金集めは難航し、開業のための20億円が集まらない。

東京青年会議所の理事長としての平田の力量は乏しく、わずか集められたのは70百万円にとどまる。これにオレガが30百万円を出して、東京青年会議所として1億という形だけはつけてみせた。

オレガの越智についても調達力には乏しい。結局のところ、10億がやっとなのだ。

仕方なく、コンサルである村木に資金調達まで頼らざるを得なくなってしまう。

次期社長の因果を含めて、尾花社長でスタートした新日産興銀行だが、営業がうまくいかない。

営業本部長に就いた越智のもと営業拡大路線をひた走ったが、これが悉く失敗する。

越智を支援する藤山商店[藤田商店]の藤山康[藤田田]が亡くなったこともあり、尾花は越智を営業本部長から解任し、産興ファイナンス社長に据えることを決定する。

尾花や村木への怒りを露わにする越智は週刊誌に新日産興銀行設立にあたっての村木の不正を暴露するが世の反響は小さく、逆に懲戒解雇されてしまう。

疲れた尾花は社長を辞任し、後継社長に村木を指名する。

既に村木は取締役会議長を務めるなど実質的に銀行を牛耳ってもいた。

しかし、それから7ヵ月後、村木は社長をヤマト銀行[りそな銀行]出身の下田正司[上村昌史]に社長を譲ると会長に就いた。

村木の茶坊主宮本が執行役員企画部門担当に就く一方、大塚は審査担当に移された。

審査担当になった大塚は空虚なスコアリングモデルという定量モデルに基づく審査を否定するが、村木がそれを聞くことはなかった。

尾花社長時代に村木が取締役として送り込んだ元ACBのライター江田潔[江上剛](本名:大畑嘉之[小畠晴喜])も大塚の弁に賛同するが、村木が反論すれば阿諛追従してしまう体たらく。

そんななか、金融庁長官となった後藤から入検の通知が入る。

大塚の指導のもと、準備をして待ち構えた新日産興銀行の検査の焦点は村木の個人会社Mファイナンスとビレッジウッドへの情実融資に絞られてくる。

モノマニアとも言うべき検査官平山竜一は厳しく大塚を責めたてるが、認めるわけにはいかない。村木は後藤に圧力をかけ、主任検査官大山和夫と大塚の間で妥協点を見つけるのだった。

景気回復に伴い、大手銀行の中小企業金融が再開するなかで、新日産興銀行のビジネスモデルが揺らぐなか、新たな収益源を見つける必要性に迫られる。

そこで手掛けられたのが商工ローンだ。

2006年1月の最高裁判決により否定されたグレーゾーン金利のために、既存の高利貸し業者が追い込まれるなかで、そういった会社が有する優良資産を取得しようというのだ。

大塚は商工ローン大手、大日商工ファンド[SFCG 商工ファンド]に接触すると、話を持ちかける。

大日商工ファンドの悪名高いオーナー社長大嶋顕治[大島健伸]はこの申し出に乗る。

3年目にして、辛うじて当期損益を黒字にまでしたものの、内実は寒かった。

商工ローンからの債権買取により水膨れした財務諸表の一方で、村木は拡大路線も進める。

そんな中、またしても金融庁検査が行われるが、新日産興銀行では対話を録音するなど検査官に対する対決姿勢を明確に示す。

村木の強引な施策に叛旗を翻した融資担当役北川靖[]らは執行役会で動議を提出するが、傍聴者にすぎない村木に恫喝されるなかで退職を余儀なくされてしまう。

この件にも検査中の金融庁は口をはさむが、結局のところ、お咎めなしで第二回の検査も終了する。

大日商工ファンドに買い取るべき優良債権がなくなってくるなかで、次の一手として考えられたのは、実質的に大日商工ファンドが有する不動産ローンを担保とした大日商工ファンドへの融資ともいった「連帯保証」スキーム。

しかし、間もなく大日商工ファンドは民事再生手続きを申請し、加えて、新日産興銀行が担保に押さえていたはずの担保が二重譲渡されていたことが発覚する。

 

一部を除けば、ほとんど全ての登場人物がエグ味を持っていて、とにかく読み難い。

一連の事件を再度振り返るという好奇心でもなければ、全くついていけない。

加えて、おそらく客観性を超えて、作者の主観で人物像が構成されている色彩が強く、いつものように、竹中平蔵や木村剛なんかは、どこまで嫌っているんだと食傷気味になるくらい「悪者」として描かれます。

加えて、この作品では今や同業者でもあろう江上剛を中途半端な小人物として貶めています。

そういう意味で、作者の負の感情を多分にぶち込まれた、この作品が重く、読み難いことは言うまでもありません。

全体の流れから少し離れて挿話的に描かれた新東都銀行[新銀行東京]の話のほうが、モデルとしてはずっと面白かったような気もします。

お奨め度:★★☆☆☆

再読推奨:★☆☆☆☆

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『三匹のおっさん ふたたび』 有川浩

Sanbiki22012年、39冊目。有川浩『三匹のおっさん ふたたび』

タイトルのとおり『三匹のおっさん』の続編+α。

 

第一話

清田貴子がパートを始めた。きっかけは年末にマルチ販売にひっかかり、清一に説教されたことだった。

友人の親戚がやっていた永田精肉店に雇ってもらったはいいものの、初めてのパートは順調ではなかった。

手際が悪く、周囲を見ていられない貴子はパート仲間からも浮いた存在になっていた。居づらい状況は延々と続くが、家族らに見くびられたくない貴子は意地の一念でパートを続けていた。

苦戦する貴子は客としてやってきた早苗の前でミスをしてしまうが、早苗の気配りに救われる。別の場所で早苗と再会した貴子は思わず、早苗からの温かい声を受けて、泣いてしまう。

祐希のアドバイスで少しずつ職場に馴染んできた貴子に声をかけてきた小島育代は少しずつ小銭を貴子に借りた挙句、5万円の借金を申し込む。

手元の5万円を育代に貸した貴子だったが、返済の約束の日に育代は永田精肉店を辞めてしまう。

泣き寝入りはしないと決めた貴子は・・・。

 

第二話

商店街の本屋「ブックスいわき」で万引きの現場に出くわした重雄は犯人の中学生を追おうとするが店主の井脇に止められる。

犯人や重雄が怪我をするおそれがあるからだ。

春休みに入り、万引きが増えることを知った重雄は清一らとともに、店内のパトロールを井脇に申し出るのだった。

則夫の分析により万引き防止の設備を再配置し、待ち構えたが、先日重雄が追った中学生は重雄を見るなり逃げ出してしまう。

しかし、敢えて犯人を捕まえることが目的ではなく、抑止効果を狙うことを本筋とする井脇の言葉に感銘を受けた三匹だったが、そうも言っていられない現状に直面する。

万引き少女を捕まえた三匹だったが、その背景には母親ば万引きを唆したという事情があった。あまりのことに絶句する三匹だったが、そういった現状に一石を投じるべく、井脇は敢えて万引き中学生を捕まえることを三匹に依頼するのだった。

 

第三話

妹の幹代が則夫に再婚話を持ち込む。

夜の巡回中に強盗を取り押さえた則夫に興味を持った満佐子が、その相手だ。

高校三年生になり、受験を控える早苗にとって、則夫の世話が負担になること、また早苗の将来にとって則夫が負担になることを則夫に幹代は説くのだった。

一方で、幹代は早苗にも、大人として則夫の幸せを願うことを求めるのだった。

積極的な満佐子に圧倒されつつも、則夫も特に悪い気はしない。また、この再婚話に早苗も賛成しているということ、早苗の重荷にはなりたくないという思いから、則夫と満佐子の交際は順調に進んでいるとも見えた。

しかし、早苗にはまだ心の整理はできなかった。則夫との二人の生活に誰かが入ってくるというのを納得できなかったのだ。

ついつい祐希との仲もぎくしゃくし、喧嘩にまで発展してしまう。

則夫のことを考えて決めた志望大学も地元の商科大学から、県外に変更することまで仄めかす始末だ。祐希もうまく治めることができないまま、則夫から早苗が帰ってこないとの一報が・・・。

 

第四話

清一の働く『エレクトリック・ゾーン』にゴミの不法投棄。

巡回の途中、喫煙する中学生を見かけた清一は注意するが、中学生らは清一に窘められたウサ晴らしのようにゴミを駐車場の出入口に投げ捨てて逃走する。

4日後に出勤すると、店からは生ゴミの臭いが。家庭用ゴミが放棄される事件が続いているのだという。最初の事件が3日前だということを聞いた清一は中学生らの意趣返しを疑う。

中学生の仕業と断定する清一を重雄や則夫は諌めるつつも、3人での巡回が始まった。

 

第五話

清田清一の息子健児と偶然出会った立花康生はその会話のなかで、背広姿の清一に憧れ、自身の父親重雄を見下していた子ども時代を苦く思い出していた。

ある日、娘の奈々と散歩に出た康生は皐神社でブルーシートをかけられた神輿を目にする。

商店街の寄り合いで活性化策が話し合われるなか、先日見かけた神輿を思い出した康生は皐神社の豊穣祭の復活を提案する。

 

第六話

予備校帰りに早苗の部屋を見上げていた祐希は突然懐中電灯を向けられ、初老の三人の男に不審尋問される。

そこへ居合わせた清一により救われた祐希だったが、祐希が憤懣やるかたないのは勿論、清一も三人のやり方に疑問を感じていた。

翌日の朝刊で、巡回していた三人が放火を発見し、消防に通報したことが取り上げられていた。その記事を見た芳江は、その中の一人が高校時代の部活の先輩であることを告げるとともに、そういった活動を勧めたのが自分であると語った。

最初こそ三人のことを軽視していた三匹だったが、警察に表彰されて増長した三人は三匹にまで絡んでくる始末だ。

放火犯の現場を発見した清一が一人犯人に向かっていくと・・・。

 

好きだよと言えずに初恋は
父の転勤で転校することになった富永潤子に対して、クラスメートは別れを惜しむポーズを見せる。

銀行員である父の転勤で転校することに慣れている潤子は寒々しい別れを嫌い、それまでも周囲には入れ込み過ぎないスタンスを維持してきた。

しかし、中学生を前にした小学6年の転校は様子が違った。

潤子の転校を知った一人の少年は、潤子を教室の外に連れ出すといくつかの植物を指さし、植物についての話をするのだった。

その少年との会話は潤子を楽しくさせたが、女の子に人気のあるその少年をめぐって、潤子は周囲から少しずつ浮き上がってしまう。

 

何がどうというわけでもないものの、うまく読まされてしまったような感じ。

内容的には滑稽なものもあれば、それなりに考えさせられるものもあり、狭い範囲ではあるものの比較的バラエティに富んでいる。

人間的にどうかということまでは言えないまでも、こんな嫌な人るよな、といった小人物としての悪人(?)もちゃんと登場していてメリハリも効いています。(登場人物がみんな良い人だと、やはり嘘っぽくなりますし・・・。)

今回は祐希と早苗が大学に合格するまでということで、一つの区切りではあるものの、日常に発生するささやかな事件を題材にとっているので、いくつでも話は続けられそうな作品。

今後も更に『みたび』『よたび』へ続いていくんでしょうか。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『ナミヤ雑貨店の奇蹟』 東野圭吾

Namiyazakkaten2012年、38冊目。東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

悩み相談を受け付ける『ナミヤ雑貨店』の過去と未来を結ぶホットラインを介してつながったいくつかの物語。

 

第一章 回答は牛乳箱に

強盗を働き、逃走する翔太、敦也、幸平の三人は翔太が見つけてきたあばらやに身を隠す。

「なみや雑貨店」という店舗は古びて放棄されて久しいことがうかがわれる。

三人が身を潜める店舗の郵便口から一通の封筒が投げ込まれる。

差出人は『月のウサギ』。

開封した手紙には、病に倒れた恋人の看病とオリンピックを目指すための練習に揺れる『月のウサギ』の悩みが綴られていた。

不審がる三人だったが、ここなみや雑貨店は悩み相談も扱うことで有名な店だったのだ。

「なみや」と「悩み」のごろ合わせで店主浪矢雄治が子どもたちの相談に答えたのが始まりだ。

既に放棄された店への相談ごとの依頼に不審は消えないが、翔太と幸平は『月のウサギ』への返事を記すことを決めた。敦也は反対するが、二人は返事を認め、約束となっている店舗裏の牛乳箱に入れる。

指紋を残してしまったことに気付いた三人は手紙を取り出そうとするが、そこに手紙はなく、逆に郵便口の下には、三人の出した返事に対する更なる『月のウサギ』の相談が届いていた・・・。

 

第二章 夜更けにハーモニカを

中学時代にギターに出会った松岡克郎は音楽の道を進むべく、大学を中退した後も、東京に残った。

家業の魚屋を継ぐものと思っていた息子があやふやな道を取ろうとしていることを知って両親は怒り、嘆いたが、松岡の耳にはその声も届かない。

しかし、松岡にも自身に才能がないことは薄々わかってきた頃、祖母の葬式のために実家に戻った松岡は、大学中退を非難する親戚に反論する父健夫の姿を見て、あらためて申し訳ない気持ちになる。

心揺れる松岡は偶然、ナミヤ雑貨店に封筒を投げ込む女性を見て、自身もその悩みを綴ると、郵便口に投げ入れるのだった。

 

第三章 シビックで朝まで

浪矢貴之は父親雄治が始めた悩み相談を馬鹿にしていた。

子どもたちの冗談ごとに付き合う父親の神経を疑っていた。

それよりも赤字続きで、かつ老齢の父の健康を思えば、店を閉じ、雄治を引き取ることが息子としての務めだと考えていた。

しかし、悩みに真剣に取り組み、それを生きがいにしている雄治は貴之の申し出を受け付けない。

そんな雄治が店を閉じていることを知った貴之が駆け付けると、雄治は貴之の申し出を受けることを告げた。末期癌が見つかった雄治は、貴之に不思議な願いを申し出る。

一つには、店に戻り、一晩だけ一人にして欲しいこと。

もう一つは、雄治の三十三回忌に「悩み相談」を復活させる旨を世に告知し、悩み相談が役に立ったのかどうかという回答を受け付けて欲しいというもの。

 

第四章 黙禱はビートルズで

悩み相談復活の告知を見た和久浩介は40年ぶりに町に帰ってきた。

和久の人生に大きな影響を与えることになったナミヤ雑貨店のある町に。

ビートルズ来日に熱狂した従兄の死で譲り受けたビートルズのレコードに感化された和久は少しずつビートルズにはまっていく。

裕福な家庭に育った和久は欲しいものは何でも買い与えられ、ビートルズを聴くための音響装置も最新のもの。そんな和久を友人らは羨んだ。

しかし、万博を迎えるころには、父親の事業が傾き、少しずつ家庭内もギスギスしたものになっていく。

ついには、両親は夜逃げを決意し、和久にも秘かに準備をするように告げる。

夜逃げを嫌った和久は、夜逃げの計画が頓挫することを願って、ナミヤ雑貨店に夜逃げ計画を相談事として投げ入れたのだが・・・。

 

第五章 空の上から祈りを

翔太、敦也、幸平はこれまでの手紙のやりとりを反芻し、驚いていた。

ネットで検索した彼らは、彼らが籠ったその日こそが、悩み相談窓口復活の日であることを知り、過去と現在が結ばれる特別な一日を彼らが邪魔しているのではないかと気づく。

店を出ていくことを決めた三人だったが、またしても相談ごとが舞い込んだ。

これを最後と、悩みに答え始めた三人は、短絡的にホステスの仕事に重きを置こうとする『迷える子犬』に呆れ果てるが、『悩める子犬』武藤晴美にも事情があったのだ。

晴美の事情を知った三人が晴美に示したのは、未来の出来事を教えること。

そして、三人の教えに従った晴美は・・・。

 

 

何だか下世話な言い方になるけれど、映画化を狙ったような作品。

展開(相談事の結果)自体が比較的はっきりしていて、わかりやすいので、映像化に向いていそうな感じ。

ただ、(もともと話自体が荒唐無稽ではあるものの、ますます)現実離れしていって、「おはなし」感が強くなります。エンターテインメント作品としては面白いのかもしれないけれど、読んだ感想は感動というと臭くなりますが、深みといったものにつながっていないような気がしてなりません。

その意味では一言で言えば、「面白かったけれど、残念な作品」というような感じでしょうか。

特に、物語に引き込むテクニックはやはり素晴らしいだけに、読後に「うまい構成だったな」と客観的に評価するだけで、心に何も残らないのは残念で仕方ありません。

 

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『週末は家族』 桂望実

Syumatsuwakazoku2012年、37冊目。桂望実『週末は家族』

週末里親制度を利用した子役派遣業を企図した主人公らが不思議な親子関係を結んでいく話。

 

シェイクスピアに心酔する小劇団主宰者の本田大輔と無性愛者の妻瑞穂は、特殊な人材派遣業を営んでいた。

客の求めに応じて、妻役であれば妻の役割を演ずるのだ。

そんな人材派遣業において子役が求められることが多くなったことで、大輔は児童養護施設の週末里親制度に目をつけた。

児童養護施設のクリスマス会での演技で見つけた加島ひなたの才能に、大輔は瑞穂の反対にもめげず、週末里親に申し込んでしまう。

ひなたの演技力は瑞穂も舌を巻くほどで逆に将来が空恐ろしくなってしまう。

施設で暮らす中で、そういった仮の人格を演ずることに慣れていることに加え、施設では目にすることのない日常生活の物珍しさも手伝って、ひなたは大輔の言葉に応えられるよう努力する。

しかし、素顔のひなたは極めて無愛想だった。特に瑞穂に対しては。

若くして出産した母親が育児放棄の末、施設に預けられたひなたは周囲に対して不信感を抱き続けていた。また、愛情などない母親との生活が最善であるかのように語る施設職員にひなたは辟易していた。

定期的に訪れるとしながらも、何らかの理由をつけてやってこない母親にも、それを残念そうに語る職員にもうんざりなのだ。

母娘が共に暮らせない不幸という価値観の目で見つめる瑞穂は、ひなたの言動に戸惑い、そしてひなたもまた施設職員と同様の大人として瑞穂の言葉を不信感を持って聞いていた。

一方、シェークスピアに話を持っていけば全て機嫌がよくなる大輔など、非常にちょろいものだった。少しずつ、大輔との距離を縮めていくひなたは、大輔の言葉に従って、思ったことを言葉で表現するようになっていく。

また、ひなたの演技力を見込んだ大輔はひなたを小劇団の舞台に上げ、演じさせるのだった。

そんなひなたの演技を見に来た施設職員佐藤洋は、またしても、ひなたの母親が身に来れなかった言い訳を重ね、更に、母親がひなたを引き取る可能性があることに言及する。

達成感に充足していたひなただったが、その言葉を受けて態度を硬化させる。

大輔の言葉を守って、思いを吐きだすのだった。曰く、母親と暮らすのは嫌だと。

目から鱗が落ちたような瑞穂は親友谷口渚に相談し、ようやくひなたの心に近づいていく。

一方、かつての恋人の言葉などに衝撃を受けた大輔はシェークスピアの悪い意味での焼き直しでしかない自身の作品に疑問を感じ、暗中模索に陥る。

そんな大輔にひなたが求めたのは施設で行う舞台「マッチ売りの少女」の脚本だった。

しかし、原作に忠実な大輔の脚本が気に入らないひなたは、瑞穂の後押しもあって原作から大きく逸脱した形で自身で書き直してしまう。

これをきっかけに大輔も立ち直り、少しずつ新たな三人の形が出来上がっていく。

そんななか、正式にひなたの母親がひなたを引き取る話が浮上し、ひなたとの週末里親も終了されることが告げられる。

ショックを受ける瑞穂たちだったが、だからといって養育里親や養子縁組をする覚悟もない。

ひなたの心がわかるだけに悩んだ末に瑞穂は、ひなたの母親のもとを訪ねるのだった。

 

 

意外に(?)面白かった。

ちょっとひなたのキャラクタがこまっしゃくれていて可愛げはありませんが、それでも、それは大人からみた「子どもはこうあるべし」という価値観から見た印象なんでしょうね。

また、逆に言えば、「施設に預けられる、親のない子は可哀そう」という既成概念をまず壊してしまうための描写なのかもしれません。

そういえば、いつも思うんですが、桂望実作品って、なんだか余計な設定や、余計な登場人物、唐突な場面なんかがあるんですよね。今作でもやはり余分とも思えるような設定等もありましたが、基本的には筋がしっかりしていて読みやすくなっています。

ラストは若干意外感はありますが、その意外感もまた「こうあるのが一番いいんじゃないか」という価値観から来るものなのかもしれません。そういう意味では、こういうラストもありなんでしょう。読後感も悪くありません。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★☆☆☆

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『月は怒らない』 垣根涼介

Tsukiwaokoranai2012年、36冊目。垣根涼介『月は怒らない』

市役所に勤める一人の女と、なぜか、その女に魅かれる立場の違う三人の男たちとの物語。

 

水商売の母のもと母子家庭で育った梶原彰は早々に家を飛び出すと、闇金や暴力団構成員との付き合いもある裏稼業で生計を立てるようになっていた。

戸籍売買の仕事のため訪れた市役所の戸籍課で三谷恭子を見た梶原は恭子になぜか興味を持ってしまう。

恭子の退庁を待ち伏せした梶原に拒否感を示し、警察へ訴えることを示す恭子だったが、全てに従順な梶原の言葉にファミレスだけには付き合うこととする。

強引ではあったが恭子に興味を示す梶原の人間性に興味を持った恭子は梶原と付き合うでもなく、定期的に会うようになる。しかし、その後も二人の関係はお互いを束縛しない淡々としたものだった。

 

大学生の小倉弘樹はとあるバーで市役所職員の忘年会と学生のもめ事に遭遇する。

倒れた恭子に対する見栄もあって、合気道の心得もある弘樹は職員のグループに助太刀して怪我をする。

病院に運ばれた弘樹を見舞った恭子に興味を持った弘樹は恭子に付き合うことを求めるが、恭子は付き合うつもりがないことを告げる。しかし、恭子のことを詮索しないことを条件に弘樹と会うことだけは認める。

淡々とした関係ではあるが、セックスもある関係に、弘樹は付き合っている気分ではあったが、恭子にそんなつもりはなかった。

市役所の向かいにある交番の交番長である和田は、交番の前を颯爽と自転車で通り過ぎる恭子をいつも目で追っていた。

ある日、交通事故に遭遇した恭子と接点を持った和田は、独りで警邏中に恭子を見かけ、再度声をかけてしまう。なぜか恭子を前に涙してしまう和田を醒めた目で見つめる恭子だったが、和田の思いを受け入れる。

しかし、和田が既婚者であることを見透かした恭子は、あくまで友達としての付き合いであり、恭子と会っている間は離婚しないことを条件とする。

恭子の男性関係を詮索しないことを条件とした三人の男たちは、恭子の背景を知らないままに並行的に恭子と奇妙な関係を続ける。

短期記憶障害のため、記憶が残らない老人に、毎週日曜日に恭子はいつも初対面のように話しかけていた。老人もまた恭子を記憶に残せないまま、初対面として恭子に向き合う。

ある日、恭子の部屋に見慣れないナイフを発見した弘樹は、恭子が付き合う別の男の持ち物だと判断し、自身とその男の軽重を測るかのように、恭子からナイフを借り受ける。

一方、恭子の部屋にやってきた梶原はナイフがないことに気付き、それを恭子に問う。恭子は、正直に弘樹に答えるとともに、梶原のほかに、二人の男との関係を告げるのだった。

初めて知った恭子の姿だったが、そんな二人に関係なく、恭子と付き合うことを宣言する梶原に恭子は目を見張る。

日記を確認して、恭子とは初対面でないことを知った公園の老人は恭子に理由を問う。

恭子は三人の男との付き合いについて相談し、老人から示唆を得る。

梶原の言葉に感銘を受けた恭子は梶原を選択すると、弘樹と和田には別れを告げる。

しかし、偶然、明らかに裏稼業の人間と思われる梶原の風体を見かけてしまった弘樹と和田は・・・。

 

なんだか奇妙な話。

とはいえ、ストーリー自体は極めてシンプルで、それぞれの心の動きや考え方を楽しむ作品なのかもしれません。

比較的ストーリーだけを追えば、非常に単調で飽きてしまいそうですが、恭子の存在が非常に効果的です。これだけ男たちを引っ張る存在なので、最後には何かが待ち受けているという期待感を抱かせて、物語を引っ張ります。

ずっと恭子視点での描写がないので、謎の存在のままが続きます。

結局のところ、過去に何等かのトラウマがあることは仄めかされますが、具体的なことは最後まで明かされません。ちょっと裏切られたような印象はありますが、まぁ、そこまで魅かれるキャラクタでもないので、まぁいいか、といった感じです。

ただ、「月は怒らない」というタイトルは、ラストで明らかにされる恭子のキャラクタを性格づけるものですが、やや唐突でしたね。また、男女の仲は当人しかわからないとはいえ、なんだか三人が魅かれた要因のような解釈もちょっと・・・。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★☆☆☆☆

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『震える牛』 相場英雄

Furueruushi2012年、35冊目。相場英雄『震える牛』

2年前に発生し、迷宮入りした事件の再捜査から浮かび上がってきた大手SCとBSE感染牛の関係を追う話。

 

警視庁捜査一課継続捜査班に属する田川信一(警部補)は捜査一課長宮田次郎から、2年前に発生した『中野駅前 居酒屋強盗殺人事件』の継続捜査を命じられる。

不良外国人による強盗殺人と推定された事件だったが、犯人は捕まらなかったのだ。

あらためて現場を訪ね、事件の関係者から話を聴いた田川が捜査が極めて杜撰であり、不良外国人による犯行という筋読みが極めて危ういものであることに気付く。

殺害された被害者獣医師赤間祐也(31)と産廃処理業者西野守(45)に接点はなく、偶然殺害されただけと見られていたが、二人がほぼ同時刻に別々に店に呼び出されていた事情から、二人の殺害を目的とした事件ではないかと疑う。

二人の接点を探ろうとする田川だったが、事件当時の管理官であり、現在は特命操作対策室の理事官に就いている矢島達夫の妨害を受ける。矢島から田川を庇い、隔離した矢島は田川の応援に後輩の池本功治を応援につける。

田川と池本は西野の故郷新潟、赤間の故郷仙台を訪ね、殺される前の事情を調べるのだった。

また、事件当時、犯人を追いかけた目撃者の証言から、犯人が女の運転するベンツで逃走したことが判明し、ベンツの持ち主を洗い出す。

六本木の高級クラブの村上冴子(本名安部早苗)。しかし、既に車は廃車となった後だった。明らかに疑惑を呼ぶ冴子の行動だったが、犯行と結びつく決め手はない。

 

インターネットメディア、ビズ・トゥデイの鶴田真純は大規模SCを全国に展開するオックスマート追求の手を緩めない。

安売りを展開するオックスマートの絡繰りを調べ上げ、SC出店に関するマージン率を原因として有力店舗が逃げ出している現状を報道する。

この報道に反応したのは、オックスマートに食材を納入する会社ミートステーションの元工場生産管理課長小松隆。

マジックブレンダーと称する機械でクズ肉、血液、脱脂大豆等の代用肉、そして大量の薬品、添加物で惣菜を組成する行程を語る小松の言葉を鶴田は驚愕のなかで聞いていた。

 

冴子の愛人として浮かび上がったのはオックスマートの総帥柏木友久CEO兼会長の息子取締役スーパー事業本部長柏木信友。

事情聴取に訪れた田川らを軽くあしらう信友だったが、これを知った友久の懐刀でもある取締役経営企画室長滝沢文平はこれを看過できなかった。

そんな滝沢に接触してきたミートステーション社長八田は、田川が調べる事件の裏側を仄めかすと、自社製品のオックスマートへの納入を迫る。

いくつかのヒントを得ながら事件の全貌を見いだせない田川だったが、獣医師赤間が生前に調べていた畜産家や東京、そして西尾をつなぐ存在を発見する。

牛だった。

更に、赤間が追っていた牛はBSEに感染していたことが疑われ・・・。

 

なかなか面白かった。

タイトルからしてBSEを扱っていますよ、というのは明白ながら、なかなかその姿は見えてこない。捜査自体を地道に行って、そこから積み上げていく描写であるために、着地点がBSEであろうと目算がついている読者からすれば、なかなかにじれったい。

初めから「牛」絡みとわかっていれば、どれだけスピーディーな展開になったことか、という感じだ。まぁ、相方がないことではあるのだけれど・・・。

その意味では、タイトルで興味を惹くということで成功しているんだろうけれど、その分、内容の盛り上げ方で損をしているという感じが強い。着地点がわからなければ、少しずつ見えてくる構図に随分引き込まれたんだろうに、という印象だ。

また、構造として、どうもうまく活用できていないような印象を受けるのは、鶴田の扱い。BSEの話を本筋とすると、鶴田の関わる話はまた別の話で、本筋とはあまり接点がない。

本筋のストーリーのことだけ考えれば、あれだけの紙幅を割いてまで盛り込むような話ではない。

むしろ、作者が現在の格安食材を巡る危険性について警鐘を鳴らしたいと感じたために、無理やりに入れたという話なのか。穿った見方をすれば、こちらの話こそが、本筋で主人公の追った殺人事件のほうが、単なるエンターテインメント性を付け加えられた調味料なのかもしれない。

いずれにせよ、面白かったし、興味深かった。

話自体を鵜呑みにするわけではないが、スーパーに出回る格安のハンバーグや惣菜はちょっと怖いな、と思ってしまった。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『人生に七味あり』 江上剛

Jinseini2012年、34冊目。江上剛『人生に七味あり』

銀行統合に伴って左遷された主人公が転職先の飲食店グループの抱える課題に対決する物語。

 

菱光銀行に実質吸収合併されたWBJ銀行では少しずつ人材が流出していく。

宮内亮もその一人。その送別会で、宮内は東大経済学部卒でエリート街道を歩いてきた樫村に絡む。友人だと思っていた宮内の抱える屈託に戸惑うとともに失望する樫村だった。

そんな樫村にもWBJ菱光カードへの出向辞令。明らかな左遷人事に樫村は退職を決意する。

証券部時代にともに仕事をしたことのある投資ファンド「ジャパン・リバイバル・ファンド(JRF)」社長山本知也の誘いを受け、樫村が選んだ転職先はDFSという飲食フランチャイズ会社のCFOだ。

山本によれば、DFSに投資をしたはいいものの、含み損失を抱えている模様なのだ。前社長の結城伸治は持ち株を売り払って、経営から身を引いてしまっていた。

現社長はフランチャイズコンサルティングを行っているリンケージ社から送り込まれた大友勝次。大友は菱光銀行の出身だった。

DFSに乗り込んだ樫村だったが、大友には経営に対する見識も改善意欲も見られず、ただ、かつての菱光銀行との関係を重視するだけの小人物。

加えて、樫村の部下にあたるはずの財務部長岸野聡は、前社長結城への忠義を示す一方で、財務を蝕む問題点についての調査に協力することはない。

樫村は若手社員の柏木隆一の力を借りて調査を進めるのだが、不採算店舗についての情報が入手できる程度で、なかなか問題の本質が見えてこない。

ある日、DFSの経営する「北京秋天」で柏木を慰労していた樫村の前に大友が姿を現し、同席していた相手を紹介する。

紹介されたのは、大手商社伊坂商事常務取締役小沢幸太郎と、電子部品メーカーのナンバー2となっていた宮内。

宮内はここでも樫村に絡み、樫村に酌を強要する。大友もそれに便乗する。

小沢だけが樫村の窮状を汲むのだった。

樫村はランニング仲間の塩田から紹介された十和子フーズの岡田十和子と会ったことで、会社の抱える問題に思い至る。

フランチャイズ権の売却に絡繰りがあることを疑った樫村は岸野を問い詰めるが、岸野は返答しない。辞意を示す岸野を大友が庇ったことで、岸野は辞めることはなかったが、協力は得られない。

柏木を使って調査を進めた樫村は岸野を呼び出す。

事ここに至って、岸野は初めて真実を話しはじめた。

買戻しを条件としたようなフランチャイズ権や単なる金融取引でしかないフランチャイズ権売却が多数あるのだという。

資金繰りに窮した結城からの相談を受けたリンケージ社が持ち込んだ、この手法により含み損は多額に膨らんでいる。岸野の推測では返還に向けて約100億円への引き当てを積まなければならないというのだ。明らかな債務超過で上場維持さえ不可能だ。

愕然とする岸村は大友に報告するが、大友も驚くばかりで対策など立てられない。あろうことか、責任を放棄するかのようにいきなり辞意を表明する。

報告を受けたJRFの山本は、あまりの巨額負債に直面し、驚く以上に、報告を上げた樫村を非難するとともに、隠蔽を指示する。しかし、隠蔽できる物事ではない以上、樫村がそれを受けることはない。

山本は大友の後の社長に樫村を据えることで、問題の解決を図らせることを決める。

社長に就任した樫村は、フランチャイズのオーナーの元に足を運び、換金を待つよう説得して回る。一部には樫村の説得に応ずるオーナーもあったが、必ずしも色よい返事ばかりではない。

また、メインバンクのWBJ菱光銀行もまた融資の減額を要請してくるなど、資金繰りに窮し始めてくるDFSで、樫村は柏木や協力姿勢を示すようになった岸野とともに、事態の解決に奔走する。

そんな樫村を岸野が案内したのは前社長結城の事務所。

結城は自身の不手際を謝罪するとともに、持ち株会社の設立を樫村に提案する。

従業員を支援したいのだという結城の言葉は樫村に響かなかった。またしても、結城が自身だけ利益を得ようとしているように見えたからだ。

そんな樫村にアプローチしてきたのは、宮内と、宮内の会社の子会社である金融会社社長に就いた大友である。

二人は、DFSを持ち株会社化したうえで、主力会社への伊坂商事の出資を仰ぐ手伝いをしたいというのだ。そこには、アドバイザリーフィーで儲けようという嫌らしい魂胆が見え隠れしていた。

もう一方で、樫村に接近した岡田十和子もまた山本の保有する株を安価に引き取り、55%の株主となる提案を持ちかける。あくまで社長は樫村として。

資金繰りの問題など事態が切迫していくなかで、従業員たちのために最善の方策を模索する樫村だったが、なかなか事態が好転する材料は現れない。

煮え切らない樫村の態度に業を煮やした宮内の発言から、十和子と結城の関係を知った樫村は十和子を問い詰めたことで、隠されていた事実に至る。

また、大友の制止の言葉を無視し、伊坂商事の小沢にアプローチした樫村は、大友の提案が根も葉もないことを知る一方、改めて小沢にDFSへの出資を求めるのだった。

十和子、小沢という見方を得た樫村は・・・。

 

こういったビジネスものって、確かにライバルや敵となる人物はアクが強い、嫌な奴と相場が決まっているものの、今作の宮内はそのなかでもかなり醜悪な部類ですね。

大友は単なる小物でしかありませんが。

WBJ菱光銀行の杉山や斎藤も嫌な人物として描かれますが、結局のところ単なるサラリーマンでしかありません。裁量権が多少あったとしても100億もの含み損を抱えた会社と付き合っていくという判断は普通ありえない。

そういった当たり前の判断をしている二人をして「小僧」呼ばわりをして、最後に意趣返しをする樫村こそ、極めて小物だと言えるでしょう。なんだか、主人公の器量を最後に大きく貶めてしまったような態度を最後に見せられてしまいました。

また、妻明子の発言も不愉快なものが多いですね。社会、会社といったものをそれほど介さないままに傍観者的な発言をしてみたり、あるいは、夫を非難するような発言をしたり、とか。よくあれで、離婚の原因にならないものだと、その意味では主人公の器量の大きさを感じます。

ラストは、樫村の行く末が語られることなく(無計画なままに社長を退任するように)終わっており、なんとなく中途半端ですね。

お奨め度:★★★☆☆

再読推奨:★★★☆☆

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『ルーズヴェルト・ゲーム』 池井戸潤

Roosevelt2012年、33冊目。池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』

業績不振に喘ぐ青島製作所とその野球部の奮闘記。

競合するミツワ電器に対する会社と野球部の反撃が痛快な一冊。

 

業績不振にあえぐ青島製作所は、成績の低迷する野球部の廃部を検討することになる。

折悪しく、社長細川充との口論の果て、野球部監督村野三郎は会社を去り、ライバル企業であるミツワ電器に移ってしまう。

また、村野は青島製作所の主力であるエースの飯島健太と四番バッターの新田達彦もミツワ電器に引き抜いてしまう。

経理を担当する専務笹井小太郎は事あるごとに1年間に3億円もの費用を要する野球部の廃部を訴えるが、創業者で前社長でもある青島毅が野球部を創設した経緯もあり、細川はなかなか廃部に踏み切れない。

総務部長でもある野球部部長三上文夫は会社の事情に理解を示しつつも、野球部存続に向けて奔走する。

一方で、社内ではリストラ計画が厳命され、三上も総務部長として退職勧奨を余儀なくされる。

また、ライバル企業ミツワ電器の営業攻勢により、更に青島製作所の前途に暗雲が立ち込める。

主力の東洋カメラへのイメージセンサーの納入時期が早められ、間に合いそうにないのだ。代わって、東洋カメラにはミツワ電器が納入することになったという。

他の取引先にもミツワ電器の攻勢が続く中、細川は総合電機の雄ジャパニクス社長の諸田清文に声をかけられ、ジャパニクスの生産調整による発注減とミツワ電器との統合を打診される。

ミツワ電器社長坂東昌彦と諸田は旧知の仲。坂東の思惑に諸田が乗った形だ。

追い詰められた細川は考えあぐねる。研究開発主体の青島製作所と営業主体のミツワ電器では、そもそも企業の体質から異なり、企業規模の大きいミツワ電器と統合すれば、会社はミツワ電器に呑みこまれ、社員は開発部門など一部を残して切り捨てられることは必至だからだ。

一方、三上の奔走もあって廃部にまで至らない野球部だったが、監督と主力が抜けたことで戦力ダウンは免れない。

新たに監督に就いた大道はレギュラーメンバーを大きく入れ替え、新チームを発足させてチーム力をアップさせていく。

社内のチームとの親善試合で逸材を発見した大道は、その男沖原和也をスカウトする。

高校時代に受けたいじめを原因とした暴力事件を契機に野球から離れていた沖原は大道の言葉に耳を貸さない。

暴力事件の被害者であり、沖原をいじめていた首謀者でもある如月一磨は現在、ミツワ電器のエースピッチャー。

事情を知った野球部の面々らの声を受け、野球で如月への借りを返すため沖原は野球部に合流する。

これを知った如月やミツワ電器監督村野の画策で、沖原の暴力事件がマスコミで蒸し返され、沖原は退職を余儀なくされるが、三上は自身の部下として再度沖原を迎え入れる。

こうしてミツワ電器への対抗心とともにチームの一体感も増していく。

 

迷った挙句ではあったが、野球部の応援等を通じて、会社の一体感、逆転への強い思いを感じた細川は坂東、諸田の申し出を断ることを決意する。

諸田からの打診になかなか回答しない細川の態度に焦れた坂東は次の一手を繰り出す。

青島製作所の株主への攻勢だ。坂東は業績不振で配当も少ない大口株主を煽り、統合を促すべく、臨時株主総会の開催を働きかける。

細川は青島とともに不動産会社社長でもある城戸志眞にも働きかけるが、必ずしも色よい返事は得られない。

また、坂東は社外のコンサル会社からの途中入社である細川に社長を攫われてしまった番頭、笹井に、統合後の新会社社長の座を提示することで、統合計画を推進するよう働きかけるのだった。

臨時株主総会では・・・。

細川の思いは開発部門にも伝わっていた。

東洋カメラの求めるイメージセンサーの開発前倒しに不眠不休で応えたメンバーは遂に開発を成功させ、東洋カメラに持ち込む。

そして、都市対抗野球の二次予選の2回戦。沖原の完全復調で強豪東洋石油を破った青島製作所は決勝戦へと進む。相手はミツワ電器。

 

既視感はあるものの、非常に良い読後感でした。

ただし、(うまく融合させようという気分はわかるものの)会社としての反転と、野球部の話が必ずしもうまく混じりあっておらず、一種、別々の話になってしまっている。

敢えて、二兎を追わなくても、といった印象です。

若干(逆転劇が)出来すぎ感はあるものの、エンターテインメント作品としては王道の展開かもしれません。

登場人物として、細川の立ち位置がどうも微妙ですが、意外と笹井のキャラクターが目立たないながらも効いていますね。逆に、せっかく強めのインパクトを持たせようとしながら、城戸志眞の存在感がどうも薄い。

無理に2作品を一つにしてしまったようで、キャラクターがとっちらかってしまった感も強いものの、とはいえ、なかなか楽しい作品でした。

お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★★★☆

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