『史上最強の内閣』 室積光
2012年、42冊目。室積光『史上最強の内閣』
窮地になった日本を救うため『影の内閣』が登板し、緊張を増す北朝鮮との問題を解決するという物語。
自由民権党総裁であり、首相浅尾一郎は北朝鮮の核実験とミサイル発射実験に振り回された挙句、日本の舵取りを京都の御前、二条知麿に丸投げすることにする。
平穏なときであれば二世、三世議員でも運営できる日本だが、混沌とする国際情勢のなか、従来の二軍に代わって登板できるように京都御所に用意されてきたのが本物の内閣「ザ・キャビネット」だった。
二条をはじめとする無名の閣僚の登場に、世は騒然とするが、現状の政治に嫌気がさしていた国民からは総じて支持を受ける。
また、二条内閣は、朝地新聞社の記者半田三生と東亜テレビの小松修司を記録者として選び、運営の全てをオープンにする。
勿論、記録を公開するのは、期間限定の内閣が降板してからだが、各大臣はオープンに二人に接するとともに、喫緊の課題である北朝鮮対策についても、その作戦と進捗状況を開示するのだった。
最重要課題である北朝鮮の調査は、内閣官房内閣情報調査室服部万蔵によって進められた。
服部は、謎の残置諜者『太郎』からもたらされた労働党と軍部の対日強硬派リストを提出し、軍部の有力者ソ・キホ大将のもとミサイル燃料の注入が進んでいることを内閣に伝えた。
この情報があっても日本から先制攻撃をしかけることはできない。
山本軍治防衛大臣は若狭湾に武器・弾薬を搭載した小艦艇を終結させて放置すると、右翼らに情報を流して扇動する。右翼や暴走族らが勝手に艦艇を操縦して、北朝鮮に行動を起こそうとも、政府・自衛隊はあずかり知らぬというのだ。
とはいえ、素人のやること。北朝鮮に向かった小艦艇はあっさり北朝鮮軍に拿捕され、乗船した右翼らは捕虜となってしまう。
一方、千葉のネズミーランドで不法入国していた北朝鮮の指導者シン・チョンイルの長男シン・ジャンナムが拘束される。
当初こ本人であることを否定したジャンナムだったが、間もなく本人であることを認める。
右翼らの行動を非難し、併せてジャンナムの解放を求める北朝鮮だったが、政府は完全に黙殺する。
政府はマスコミに働きかけると、ジャンナムをマスコミに露出させる。ジャンナムは芸能人のように扱われ満更でもない。テレビに映るジャンナムの低俗さは日本人には受けたが、北朝鮮としては体面上も放置できない。
北朝鮮はジャンナム救出のために工作員を送り込むが、既に『太郎』からの情報を得ていた日本では、東亜テレビが工作員の日本上陸から秘かに工作員の動向を録画していた。
東亜テレビが放映したジャンナム奪還作戦は反響を呼ぶが、工作員と合流したあともジャンナムにはすぐに帰国するつもりがなかった。
ジャンナムは4人の工作員を連れ、引き続きマスコミに出たり、遊興を続ける。
ようやく北朝鮮への帰国を決めたジャンナムだったが、工作員4人を日本に残すことを小松らに相談した。日本で顔の知られてしまった4人は帰国すれば処分されてしまう可能性が高いからだ。残る4人に日本を知ってもらうためにも、ジャンナムは4人を連れまわしていたのだ。
ジャンナムの帰国後、ユン、チョン、カン、ハンの工作員4人は『エージェント・フォー』のグループ名で芸能界デビューする。
工作員が日本でアイドルとしてもてはやされることで、日本の平和主義は世界的にも認められる。また、日本人ばかりでなく、在日、アジア各国でも人気の上がる『エージェント・フォー』だった。
しかし、あるとき、平和を訴える発言をしたことをきっかけに、北朝鮮から裏切り者呼ばわりされ、カンは自殺をはかる。
アイドルであるエージェント・フォーへの同情もあり、日本の世論は反北朝鮮に傾き、同様に対日姿勢を硬化させた北朝鮮との間で一触即発の状態。
服部の調べで、対日強硬派が日本本土に向けて核ミサイル発射を進言し、シン・チョンイルがこれを裁可したことで、日本では国民の避難等の対応を迫られる。
PAC-3が配備され、日本海海上に自衛隊のイージス艦が出動するなど、厳戒態勢が敷かれるなか、米軍の早期警戒衛星が掴んだ発射情報が在日米軍司令部を経由してもたらされた。
しかし、いつまでたってもミサイル着弾も迎撃の報も入らない。
北朝鮮のミサイルは糸魚川市の海岸に乗り上げていた。
志願した決死隊三人により調べられたミサイルには信管がついていなかった。
無償で原爆保有国になったことを喜ぶ防衛大臣だったが、二条は北朝鮮に原爆を引き渡すのに合わせ、謝罪と賠償を求めることを決する。
平壌に向かった二条は韓国のリン・ミャンバク大統領と中国の毛沢山首相と合流し、シン・チョンイルに対面すると・・・。
B級のエンターテインメント作品。
洗練されているわけではないけれど、単純明快でマンガのような面白さといった感じだ。
2010年11月発行でありながら、この作品に出てくるミサイル発射の件は、先日の人工衛星騒ぎを髣髴とさせる。
お奨め度:★★☆☆☆
再読推奨:★★☆☆☆
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